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2019年12月29日のエンタメ研究所の過去記事

12月29日(日) ※12月31日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
完全なる豚です。詳しくは聞かないでください。
さて。
昨日は『ピークエンドの法則』を軸に「サービス設計時の配慮」についてのお話をさせていただきました。
(※まだ昨日の記事読んでない方は、先にそっちを読んでね!)
昨日の話の少し続きっぽくなるのですが、今日は「みんなで乗り越えられる障害には存在理由がある」という話をしたいと思います。
具体例をあげてお話しした方が分かりやすいと思うので、『天才万博』の満足度設計の話をしますね。
これは空間を作る時のストレス設計(https://voicy.jp/channel/941/64756)の話に近い話なのですが、『天才万博』はチビッ子のお客さんも本当に多くて、年々増えています。
僕が絵本作家をやっているのもあるし、お客さんやスタッフや出演者がチビッ子を徹底的に贔屓するので、マンマと、つけこまれています(笑)
大人も子供も分け隔てなく騒いでいる空間は、とってもピースフルで本当に最高なのですが、一方で、「騒いでいる大人のお尻に押し倒されたりしないかなぁ」という心配もありました。
そこで、非常にありがちですが『チビッ子専用フロを作る』という案が僕の中であがります。
天才万博の会場となっている【東京キネマ倶楽部】は、普段は客席フロアに埋まっている『ステージの一部(花道)』が“せり上がる”ようになっているんですね。
(※プロレス興行をする時などは、ここにリングを作ったりします)
その部分を50cmほど“せり上げて”、ステージとして使うのではなく、チビッ子専用フロア客席フロア』として使おうかしら? とギリギリまで考えていたのですが、お客さんの【ある行動】を見て、アイデアを取り下げました。
なんと、激しい曲(ダンスナンバー)がかかった瞬間に、子供の安全を考えたお客さんが一丸となって、子供をステージ上(最も安全な場所)に誘導し始めたのです。
「子供が通りまーす。道を空けてくださーい」といった感じで。
お客さんの中で配慮が生まれ、共同作業が生まれ、『子供のことを考えずに楽しむ奴はダセエ』という文化が生まれたんですね。
この助け合いの文化を生んだのは、「このままだと、いつか子供が悲しい思いをする。なんとかしなくちゃ」という『障害』ですね。
バリアフリーに“しなかった”ことによって、助け合いが生まれ、「助け合えた」という達成感が生まれ、結果、お客さんの満足度があがったわけです。
『配慮』というのは、「なんでもかんでもバリアフリー(ユニバーサルデザイン)にする」ということではありません。 
サービス提供者の目的は『全員の満足度を上げる』というところですから、全員の満足度が上がる引き金となる「みんなで乗り越えられる障害」は残しておくことが真の配慮だと思っています。
BBQは「火をおこさないといけない」という『皆で乗り越えられる障害』があるから満足度が上がるわけで、「サービス提供者は、お客さんがヒーローになるチャンス(=「助ける」というポイントが加算されるチャンス)を、無思考のバリアフリーで取り除いちゃダメだよ」という話です。
そんなこんなで、とっても優しい天才万博のお客様に、この場を借りて、御礼したいことがあります。
昨日(天才万博3日目)、酔っ払いながら客席をウロウロしていたら、とある親御さんから「西野さん。この子、発達障害なんです」と息子さんを紹介されました。
高校生の男の子で、どこか自信が無さそうな顔をしていました。
その彼に「何か、やりたいことがあるの?」と訊いたら、「表現者になりたい」と返ってきたので、「だったら表現者の景色を一回見ておいた方が励みになると思うよ。僕と一緒にステージにあがる?」と言葉を投げてみたところ、「うん」と返ってきたので、彼の手を引いて二人で一緒にステージに上がりました。
場合によっては、トラウマを生んでしまう行動ですが、「天才万博のお客さんなら絶対に彼を肯定してくれる」という信頼があったので、迷いはありませんでした。
ステージ上で彼と一緒に披露したのは、それはもう本当にみっともないダンスだったのですが、天才万博のお客さんは、彼がステージを降りるその瞬間まで盛り上げ続けてくださいました。
ステージを降りる時の彼の表情は自信に満ちていて、昨日、彼は「世界は勇気を出しきった者には優しい」ということを知りました。
今度は、同じ表現者として再会したいです。
昨日は本当にありがとうございました。
天才万博も残り2日。
明日はチケットが手に入らないらしいので、当日券を狙うのは今日しかないです。
是非、缶ハイボールを差し入れしに来てくだ……あ、違った。会場に遊びにいらしてください。
現場からは以上でーす。
 
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