西野亮廣のエンタメsalon

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2020年01月08日のエンタメ研究所の過去記事

おはようございます。
「お正月休みのまま年末まで行ってくれねぇかなぁ?」と考えるぐらいまで腐っているキングコング西野です。
さて。
今日は「世界戦に向けて、僕らは何を大切にすればいいのか?」というお話をしたいと思います。
こんなことを言ったら「生意気だー!」と怒られるのですが、国内戦においては、『アイデア』と『スピード』と『絶望的な量の努力』を押さえておけば、ある程度なんとかなると思っています。
『過程をエンターテイメントにする』的なこともできます。
ところが、一歩、海の外に出てみると「キングコング西野が迫害を受けた物語」なんて知ったこっちゃありませんし、『えんとつ町のプペル』の制作行程のユニークさなどは一秒も話にあがりません。
求められるのは「作品の質」のみ。
そこは、北斗の拳ばりに「腕力勝負」の世界です。
『アイデア』『スピード』『絶望的な量の努力』は最低限のスペックで、世界戦に参加する連中は、基本、全員揃えています。
ここに、アメリカや中国やインドは『国の力』が足されたりするもんですから、なかなか強敵です。が、勝ち目はあります。
「お金」も「人口」も減り続けている日本が、エンターテイメントで世界相手にドンパチする為に必ず押さえておかなくちゃいけないのは、『ポジショニング』です。
「日本ならでは」というものですね。
それは「0→1」の発明的なアクションではなく、去年の10月あたりから僕がやたら口にしている「日本人が織って成してきた文化に“あやかる”」というやつです。
世界を相手どった時に、『ポジショニング』は無視できないので、僕らが目を向けなきゃいけないのは「日本人の軌跡」で、つまるところ、「日本人とは、どういう民俗か?」という問いです。
今年のお正月は、その勉強に時間を割いたのですが、日本の過去を一通り洗った結果、どうやら「浮世絵」が面白いです。
日本発のエンターテイメントで、世界(少なくともヨーロッパ)を席巻した、あの「浮世絵」です。
浮世絵って、どう考えたって変じゃないですか?
顔はグニャリと、ひん曲がっているし、『赤富士』なんてのもあります。
富士山は青色じゃん。夕陽があたったとしても、ギリ青色じゃん。でも、赤く描かれていたりします。
一方、ヨーロッパの絵画は、人も街並みも、まるで写真のように正確です。
なぜ、日本の絵は「ヘンテコ」で、ヨーロッパの絵は「正確」なのでしょうか?
ここには明確な理由がありました。
ヨーロッパ(大陸)は、生まれも育ちも文化も見てきたものも何もかもが違う様々な人がゴチャ混ぜに暮らしているので、絵で情報を伝えるときに「正確」じゃないといけないんです。
一方で、日本(島国)は日本人しか住んでいないので、前提知識が一つに共有されているわけですね。
つまり、「富士山が青い」ということは皆が知っている。
なので、「俺は青い富士山を、こういう風に描くぜ!」「俺は、富士山を、このように見ている!」という「俺なりの富士山合戦」が始まる。
「情報に画一性があったから、表現に多様性が生まれた」という話です。
この歴史は、日本発のエンターテイメントを仕掛ける上で、一つのヒントになりそうです。
ついでに言っちゃうと、ヨーロッパのアート(絵画)と日本のアート(浮世絵)に、あれほどの違いを生んだ理由は「ターゲットの違い」にあったりします。
絵画(油絵)は絵の具を上重ねしていきます。
よって、基本、同じ絵は二枚と存在しないんですね。
一方、浮世絵は木版画なので(印刷されることが前提なので)、基本、色を重ねることはありません。
そして、印刷なので、同じ絵が何枚も存在します。
一人の大金持ち(パトロン)からウン億円を回収するのが「絵画」で、たくさんの人から500円ずつ回収するのが「浮世絵」です。
技法の違いの前に、そもそも「お金持ち向けのエンタメ」と「民衆向けのエンタメ」という“ビジネスモデルの違い”があったわけですね。
今風に言い換えると、「広告費ビジネス」と「ダイレクト課金ビジネス」の違いです。
当時のヨーロッパの名だたる画家は、この「たくさんのお客さんから少しずつお金を回収することが前提で作られたエンターテイメント」に、ひっくり返ったわけですね。
浮世絵というのは、クラウドファンディング的で、オンラインサロン的で、僕らが今やっていることに近いです。
んでもって、これこそが島国の『ポジショニング』だと思っています。
隣の芝生は青く見えるので、ついつい一人の大金持ちに出資してもらえる環境を追いかけてしまいがちですが、それは日本人がやることじゃねぇなぁというのが今年の寝正月の結論です。
浮世絵が木版画(印刷)によって遂げた独自の進化を、現代で転用しようとしているのが僕らです。
引き続き頑張ります。
現場からは以上でーす。
 
 
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