西野亮廣のエンタメsalon

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2020年02月21日のエンタメ研究所の過去記事

2月21日(木) ※2月23日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
「私のこと、覚えてますぅ~?」と訊いてくるヤツは、覚えてなかった場合に発生する地獄みてぇな空気の全責任をとる覚悟で訊いてこいよ、と思っているキングコング西野です。
さて。
今日は、ゴリゴリに『テレビのお仕事の話』なので、なんとなく御自身のお仕事や役割に置き換えながら聞いていただけると嬉しいです。
数年前。
音楽戦士 MUSIC FIGHTER』(日本テレビ)という音楽番組のMCをやっていました。
自己中の塊のような男ですが、人の話を聞いて、その人を際立てるMCの仕事は意外と得意でして、結構な人気番組でした。
今でも思い出すのは、中島美嘉さんがゲストの回。
その日のウケ方は神憑っていて、「こんなに面白い中島美嘉は見たことがない!」と皆が口にするほど、とにもかくにも数秒おきにドカンドカン!と笑いが起こりました。
そんな中島美嘉を引き出した自分に酔っていた部分も多少あったと思います。
事件が起きたのは収録後です。
スタッフさんから連絡があり、“その日の収録で笑いが起こった箇所を全カットすること”を知らされました。
訊けば、「笑いが起きた箇所の全カット」は中島美嘉さんの事務所からの要望とのこと。
「イメージが崩れる」といったようなことをおっしゃられていました。
「ふざけるな」と思いました。
「だったら、バラエティーに出るなよ!」とも。
その後、数年間は中島美嘉さんの事務所にネガティブな感情を持っていたと思います。
でも、今になると分かります。
あの日、間違っていたのは僕です。
20代前半の僕は、「中島美嘉さんと中島美嘉さんの事務所が丁寧に築きあげていたパブリックイメージを壊すことで発生する笑い」を取ることで、中島美嘉さんのCDの売り上げが落ちてしまうところまで想像できていませんでした。
「『中島美嘉、面白い』となった方が、新しい層にも中島美嘉さんが届いて、CDが売れるじゃん!」と、考えていました。
でも現実はそうじゃないんですね。
僕のその理屈でいけば、今頃、テレビに出ている芸人の単独ライブは連日満員で、DVDは飛ぶように売れているハズです。
でも、そうはなっていない。
ほとんどの芸人が単独ライブをしてもお客さんが集まらないので、単独ライブから離れ、作品制作から離れています。
番組スタッフがタレントの為を想って作ってくれた企画にタレントが全力で応えることは、テレビの世界で生きやすくはしてくれますが、一方で、「CDの売り上げ」や「ライブの集客」といった“ダイレクト課金”から遠退いてしまう場合があります。
「パブリックイメージを壊すことで起こる笑い」なんて、一番簡単な“笑い”で、あの日の僕は中島美嘉さんに、「中島美嘉さんらしくないこと」をやらせただけで、言ってしまえば中島美嘉さんのチームが何年もかけて作った壺を割っただけなんですよね。
綺麗な壺を求めている人がいるのに、です。
時計の針を「昨日」まで戻します。
昨日、こんなことがありました↓
サロンメンバーに隠し事をしたって仕方がないし、僕自身、本当に怒っているわけでも、恨んでいるわけでもないので、言いますが、この番組というのは『ミヤネ屋』さんです。
クラウドファンディングの支援総額が2億円を突破したことについて、取材させていただきたい」というオファーで、『ミヤネ屋』さんには本当にお世話になっているし、なにより、吉本興業が新しく立ち上げたクラウドファンディング『SILKHAT』の宣伝になると思って、お受けしました。
取材の現場に行ってみると、ガチガチな台本が用意されていて、『愛媛県知事宛に届いた1億円』のニュースと絡めて、「1億円あったら何します?」という質問がメインで、取材の構成が組まれていました。
クラウドファンディングの件にも触れていましたが、それはあくまで「ついで」といった感じで、台本は終始「1億円の使い道」について、でした。
これがメチャクチャ難しいところで、本音を言うと「えんとつ町のプペル美術館の建設費用に充てたい」ですが、その感じでカメラをまわされて、マイクを向けられると、「面白いこと」を言わなきゃいけないわけじゃないですか?
本音を語ってしまうと、スベる構成なので。
番組スタッフさん的には、「とはいえ、最後の最後は私利私欲に使う西野」であったり、「ナンダカンダ言ってお金に興味がある西野」を求めていらっしゃったのですが、僕、本当に(本当に!)貯金や贅沢に興味がないんです。
番組スタッフさんが求めている答えを言うと「笑い」が起こるのは分かる。
事前の打ち合わせで、「この質問は良い未来が待ってないと思いますよ」と言う僕に対して、「ここは乗っかっていれば『笑い』がとれんじゃん!」と思っておられたかもしれません。
ていうか、そんな顔をされていました。
でも、ダメなんですよね。
そこで「笑い」を取ることで、西野亮廣のルールを書き換えてしまうと、『ミヤネ屋』は盛り上がりますが、サロンメンバーとクラウドファンディングの支援者は減ってしまうので。
そこが減ってしまうと、僕は今日のように極端な活動ができなくなってしまい、極端な活動を支えてくれているスタッフさんが食いっぱぐれてしまいます。
僕はここを全力で守らなくちゃいけません。
結果、昨日のテープは「お蔵入り」にしてもらったのですが、おそらく先方のスタッフさんからすると、「なんで、こんなことがお蔵入りになるの?」と思っておられると思います。
当時、僕が中島美嘉さんの事務所に対して、思っていたように。
テレビのモデルは本当によくできていて、テレビマンは基本、番組が盛り上がって、視聴率をとっていれば後のことは考えなくていいようになっています。
出演者のダイレクト課金のことまで想像を働かせられる人など、ほとんどいません。
クラウドファンディングやオンラインサロンで、応援してくださる方が「何に対してお金を払っているか?」をミリ単位で説明できる人など、ほとんどおりません。
広告費で生きているからです。
「テレビがマウントをとれるタレント」と「テレビがマウントをとれないタレント」がいて、
今は後者が少しずつ増えてきているから、
これまでの調子で、「これぐらいやれよ」を続けてしまうと、「マウントをとれないタレント」(=支持者を抱えていて、エッジの効いた活動をしているタレント)がテレビから離れていってしまうので、より一層、番組ディレクターの想像力以下のメディアになってしまいます。
これは僕を含め、テレビマン全員が本当に気をつけなけらばならないことだと思います。
テレビだけじゃないですね。
芸能事務所も、出版社も、あれもこれも。
お客さんが表現者を直接支援できるようになった今、考え方をアップデートしない会社やメディアから死んでいくと思います。
会社やメディアが干される時代です。
そして、僕はやっぱり、吉本興業や出版社やテレビが好きで、友達もそこで働いているので、「そんなことしてちゃダメだよ。死んじゃうよ」と何千回も言い続けたいと思います。
現場からは以上でーす!
※『西野亮廣エンタメ研究所』の記事は、サロンに掲載してから1年が経てば、皆さんのブログなどに引用してもらっても構いませんが、今回は『中島美嘉』さんや『ミヤネ屋』さんのこともあるので、公開は控えていただけると嬉しいです。
 
 
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