西野亮廣のエンタメsalon

西野亮廣エンタメ研究所の過去記事を中心にアップしてます

2020年05月07日のエンタメ研究所の過去記事

5月7日(木) ※5月9日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
『オンラインサロンランキング(2020年上半期)』を作るために、早朝からせっせと孤独な集計作業を頑張ったのでメチャクチャ誉めてほしいキングコング西野です。
さて。
今日は『絵本を軸に挑むエンタメ世界戦略』について、ずいぶん込み入った話をしたいと思います。
クリエイターさんからすると、そこそこ耳の痛い話かもしれませんが、『作品のクオリティー』だけで行ける場所には限界があります。
まず受け止めなければいけないのは、「どれだけ速い車に乗っても、海は渡れないよね」という現実です。
作品のクオリティーを追求して「日本一」を獲るのは結構簡単で、血反吐を吐くほど努力すればいけます。
(※僕の肌感だと1日20時間ぐらいやれば余裕です)
クリエイターさんは口を開けば「クオリティー!」「クオリティー!」と言いますが、お客さんを感動させる仕事なんだからクオリティーが高いのなんて当たり前なんですね。
ドレスコードみたいなものです。
クオリティーなんて高くて当たり前で(議論するまでもなくて)、そこから世界を獲りにいくには、【戦略】が必要です。
これについて、ちょうど今日(午後の会議で)、僕の絵本の次々々回作の制作チームの皆様に、「方向性」の話をする予定でしたので、ついでに、コッチでもお話ししたいと思います。
「なるほど。西野はいつも、こんな感じで順序立てて、戦略を立てているんだなぁ」と思いながら読んでいただけると嬉しいです。
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▼ 日本から世界を狙うエンタメは、なぜ『絵本』でなければならないのか?
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簡単なところからお話しすると、まず「日本語に強く依存しているエンタメ」は、その時点で海を渡れません。
それこそ『速い車』に乗っているようなものです。
日本から世界を狙うエンタメのマナーとしては『非言語エンタメ』もしくは『翻訳のハードルが極めて低いエンタメ』に乗らなくてはなりません。
次に、【もう少し生々しい戦略】についてお話しします。
僕の名前の由来は『三国志』に出てくる軍師(戦略を立てる人)「諸葛“亮”孔明」で、父ちゃんが戦国オタクだったもんですから、兄ちゃんも戦国オタクとなり、幼少時より戦国シミュレーションゲーム&戦国系書籍で育ちました。
勝つ戦略にはキチンと「ひな型」があって、優先順位は以下のとおり。
①「戦わない」
②「さいあく戦わなきゃいけないんだったら、自分が100%勝つ土俵で戦う」
これのみです。
時代が変わろうが、どのジャンルだろうが、これが【戦略の基本】です。
んでもって、今回の「エンタメ世界戦」は②を掘り下げて考えてみたいと思います。
「自分が100%勝つ土俵」というのは言い換えると、「自分が力を出せて、相手が力を出せないシチュエーション」です。
このサロンにはクリエイターさんや経営者さんも少なくないと思うのですが、基本、「自分が力を出せて、相手が力を出せないシチュエーション」以外で戦ってはいけません。
キンコン西野は『さんま御殿』に出ちゃダメなんです。
さんまサンとやるのなら「西野が得意なジャンルでの一騎討ち」です。
(※『ダウンタウンなう』に出た時が、それ)
こんな話、興奮するでしょ(笑)?
絵本はページ数に制限のある「印刷物」なので、どう頑張っても、制作費に100億円かけることができないんですね。
ディズニーやNetflixが「絵本を作る!」といったところで、彼らの最大の才能(財力)が使えません。となると、シンプルに「感性」の勝負になってくる。
(※なので、実際にディズニー絵本には勝っています)
資源が乏しい日本人には『制限の中での戦い』『工夫勝負』はDNAレベルで肌に合っていて、「体重別のスポーツ&格闘技」や「料理」などは世界相手に善戦しています。
ヴィエラサイユ宮殿」を作りに行くのではなくて、「茶室」を作って、「ギラギラのシャンデリアよりも『わびさび』の方がカッコ良くね? ここで、やり合おうよ」という方向に持っていくわけですね。
「自分が力を出せて、相手が力を出せないシチュエーション」が、僕の場合は『絵本』なわけです。
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▼ では、どんな絵本を作ればいいのか?
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「絵本を作れば勝てる!」という、そんな簡単な話があるハズがなくて、作り始める前に「どんな絵本を作ればいいのか?」を考えなければなりません。
それを考える上で、まずは「『絵本』と、漫画や小説の違い」を明確にした方が良さそうです。
「違い」を挙げていけばキリが無いのですが、なかなかユニークな違いの一つに「絵本は何度も読まれる」があると思います。
パパママのところに毎晩同じ絵本を持ってきては「読み聞かせ」を懇願する鬼子供も少なくありません。(僕がそうでした)
絵本の他に「何度も楽しまれるエンタメ」は何があるでしょうか?
パッと思い付くかぎり、僕の場合だと『音楽』や『落語』が、それにあたります。
一方、『漫才』や『手品』のネタは、1回目が一番面白くて、見る回数を重ねる度に面白さが減っていくので、よっぽどのファンじゃない限り「何度も見よう」とはなりません。
このことから割り出せる答えは「『サプライズ要素』が強すぎると、何度も見てもらえない」です。
実は僕、この辺の「メディアごとの役割分担」を結構意識していて、『えんとつ町のプペル』でいうと、映画『えんとつ町のプペル』のストーリーはサプライズ要素が多めなのですが、絵本『えんとつ町のプペル』のストーリーは、極限までサプライズ要素を削っています。
「星を知らない町」の物語のラストは「星を見る」で良くて、絵本にはおいては、100人中100人がオチが読めていいんです。
「うわー!そうきたかー!やられたー!」という衝撃の展開は、何度も読んでもらうことを前提としている「絵本」では必要ありません。
ここのハンドリング(さじ加減)が超大切で、思いついたことを全部やってはダメで、メディアによってアイデアのツマミを調整しなくちゃいけません。
「絵本出版→映画化」という展開を考えるのであれば、『衝撃の展開(まさかのオチ)』は、絵本では出さず、映画まで残しといた方がいいでしょう。
「どんな絵本を作ればいいのか?」の答えは、「サプライズ性をグッと抑える」です。
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▼ 全部話すと1週間ぐらいかかるので…
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「これをやらなくてはいけない」
「これをやってはいけない」
「ここは60%ぐらいに抑えておかなくちゃいけない」
…といった、こういう『基礎工事(ルール)』が今日お話しした30倍ぐらいあって、そこを全て押さえた上で、ようやく作品制作を開始します。
いきあたりバッタリで作業をスタートさせて、増築を繰り返すと、必ずどこかで「限界」がくるので、エンタメの世界戦にうって出るには、エンタメの世界戦で勝つ為の基礎工事が必要になってきます。
クリエイター皆様へ。
夢中で「ただ面白いモノ」を追求していたでしょ😃
「それじゃ話にならねーよ」という話です。
ここは修羅の国です。
情報を共有し、励まし合い、共に頑張りましょう。
現場からは以上でーす。
【追伸】
サロン記事の感想を呟かれる際は、文章の最後に『salon.jp/nishino』を付けていただけると、西野がネコのようになつく場合があります。

 

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