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西野亮廣エンタメ研究所の過去記事を中心にアップしてます

2020年08月11日のエンタメ研究所の過去記事

 
8月11日(火) 8月13日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
『毎週キングコング』で梶原君と高確率でペアルックになってしまうキングコング西野です。
さて。
今日は、昨日の記事の続きです。
(※昨日の記事を読まれていない方は、先にそっちを読んでね)
昨日の記事をザックリとまとめると……
①すべてをコロナのせいにしちゃダメだよ。
②時代の変化に対応してなかったんじゃね?
③「セット売り」って、厳しいよね。
みたいな感じです。
このうち、③をもう少し掘り下げながら、「今、何が起きているのか?」「どうすればいいのか?」をお話ししていきたいと思います。
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▼ 「あやかる」をバカにしていたら死ぬよ
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結論から言っちゃうと、今、僕らが張らなきゃいけないのは、大きく二つ。
『あやかる(2次創作)』と『想い』です。
勘の良い方はお気づきかもしれませんが、これって…
日本人が好きな言い方でいうと「ブランド」、日本人が嫌いな言い方でいうと「宗教」を、それぞれ残していく為に必要な戦略です。
「クオリティー」がコモディティ化したら(消費者にとってはどこのメーカーの品を購入しても大差のない状態になったら)、行き着く先は必ずココになります。
まずは、このサロンでもチョコチョコ登場する『あやかる』について、今、エンタメの制作現場で起きていることをお話しします。
当時、「セット売り」は作り手にとってメチャクチャ都合が良かったんです。
理由は、「無名の新人を売り出すことができるから」です。
すでに人気を獲得しているプレイヤーに引っ張ってもらう形で新人を輩出・育成し、人気プレイヤーに成長してもらって、今度は無名の新人を引っ張ってもらう……エンタメ業界はこんな感じで健康的にグルグルと回っていたんです。
ところが!!
作り手側は「セット売り」を推し進めたいのですが、お客さんが「バラ売り」に慣れてしまった。
まず間違いなくスマホの影響だと思います。
皆が、自分の部屋(スマホ)に、どんな文化を入れて、誰を入れて、省くのか?…を自分で決め始めた。
こうなってくると、テレビや雑誌の「セット売り」の【押し付け感】が目立ってくるんですね。
「セット売りがダメになったら、無名の新人は、どうやって世に出ていけばいいんだよ?」という話になってくると思うのですが……すでに面白い動きが始まっています。
たとえば、集英社のアプリ『少年ジャンプ+』の中で、『ドラゴンボール外伝 ~転生したらヤムチャだった件~』という漫画が連載されていますが、この作者は「鳥山明さん」ではありません。
この作品は、「ドラゴン画廊・リーさん」による【公式の二次創作】です。
二次創作のクオリティーが半端ないので(※作品への愛も伝わる!)、「ドラゴン画廊・リーさん」は多くのファンから支持されているわけですが、彼がオリジナルでスタートしていたら、もしかしたら、あの才能が見つからずに終わっていたかもしれません。
ドラゴンボール』と「セット売り」するのではなくて、『ドラゴンボール』に「あやかる」形で出してもらえると、ドラゴンボールファンには【読む理由】があります。
今、漫画シーンでは「二次創作の傑作」がポコポコと出てきています。
音楽シーンでも同じようなことが起きています。
僕は今、映画『えんとつ町のプペル』を作っているのですが、挿入歌のアーティストさんを探す時に、今時、「デモテープ」なんて聴かないんです。
良いか悪いかを最終的に判断するのは「お客さん」なので、すでにYouTube上で支持を集めている(再生回数を稼いでいる)アーティストさんの中から、作品の世界観が合うアーティストさんを探すんです。
じゃあ、それらのアーティストさんがどうやって再生回数を稼いでいるかというと、もう皆さんお察しのとおり『人気ソングのカバー曲』なんです。
RADWIMPSさんのカバー曲を歌って再生回数を稼いでいるアーティストさんの中から、
米津玄師さんのカバー曲を歌って再生回数を稼いでいるアーティストさんの中から、
作品の世界観に合う人を探して、その方に、オリジナルソングを作って(※場合によっては本人に作ってもらって)歌ってもらう…というのが主流です。
「一か八かで、無名のアーティストのオリジナルソングに割く時間がない」という話です。
一般のお客さんも同じ状況でしょう。
音楽シーンでも「あやかる」が主流になっているわけですが、この期に及んで、「あやかるなんてセコい!自分の力のみで勝ち上がるべきだ!」と言っていたら、(…気持ちは分かりますが)誰にも見つけてもらえずに終わってしまうんですね。
次に、『想い』について、お話しします。
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▼ 「クオリティー」は技術だけを指した言葉じゃなくなってる件
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僕は絵を描くお仕事をしているのですが、今、一番簡単に描ける絵って、どんな絵か分かります?
答えは…「まるで写真のような絵」です。
「まるで写真のような絵」って、実際に写真を取り込んで、イラストに落とし込めばいいだけなので、めちゃくちゃインスタントに描き上がるんです。
なので、僕の現場では、「ここまで本物感を出してしまうと、写真みたいになっちゃうから、ちょっと落とそう」みたいな言葉が飛び交っています。
まるで写真のような絵は、誰でもコピーできちゃうので価値(稀少価値)が低いんです。
リアルなところでいうと、グッズ展開が難しい。
そもそも商品パッケージと「まるで写真のような絵」の相性の悪さもありますが、それより何より、「まるで写真のような絵」は(大元が写真の為に)差別化が図れないので、一度作品を離れてしまうと何の作品かが分からなくなる。
それ以外にも、基本的には「技術」は再現可能なので(みんな上手いので)、「上手い」だけでは価値を作りにくくなっているのが現状です。
僕が最近やたらと「メイキングだー!」「メイキングを売れー!!」と叫んでいるのは、そこです。
メイキングのメリットは二つあると思います。
一つ目は、「今しか見れないものが見れる」というメリット。
完成品は5年後も10年後も見れますが、現在進行形のメイキングは、今、同じ時代を共有している人しか見ることができない。
つまり、「メイキング」の方が「完成品」よりも稀少価値が高いんです。
当然、値段も高くなります。
二つ目は、「想いがのる」というメリット。
技術で差別化を図りにくくなった今、これがメチャクチャ大きな働きをします。
たとえば。
二日前に映画『えんとつ町のプペル』の予告編を流しましたが(※もう消したよ。今度は東宝さんの公式YouTubeチャンネルで13日に公開!)、おそらく、タイトルを見ただけで感極まった人がいると思います。
何故か?
ここまでの道のりを知っているからです。
それとか、主題歌のロザリーナの声を聴いた瞬間に感極まった人がいると思います。
何故か?
様々な葛藤の末、覚悟をもってロザリーナというアーティストを選んだ背景を知っているからです。
これらは『メイキング』を共有したことによって生まれた感動で、作品の技術点だけじゃないんですね。
エンターテイナーの目的はお客さんを感動させることてす。
技術点だけで感動させられるのであれば、そこを追及すべきですし、技術点の価値が下がってきているのであれば、その対応策を練らねばなりません。
未来の作品の一つの在り方として、「育児の過程を共有し、作品を『娘のピアノの発表会』のように仕立て上げる」があると思います。
娘がステージに登場しただけで泣いちゃうやつです(笑)
コロナによって苦しめられているオフブロードウェイミュージカル『Poupelle of Chimney Town』なんて、まさに。
丁寧に丁寧にメイキングを売れば、きっと、幕が上がった瞬間に涙するお客さんが出てくるでしょう。
それだって立派なエンターテイメントです。
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▼ 整理します
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エンタメ業界に限った話ではなくて、あらゆるサービスの業界で、時代はジワジワと次のように変化しています。
・セット売り→あやかる
・コンテンツ販売→メイキング販売
これまでの感覚で不用意にこの変化を否定してしまうと、時代から遅れをとることになると思うので、今はまだシックリこなかったとしても、
「あぁ、なんとなく、時代はそっちの方向に進んでいるんだなぁ」
ぐらいの感覚で捉えておいていただけると嬉しいです。
んでもって、余談ですが、サロンメンバーさんの店舗の「売り上げを伸ばせる確率が上げられる策」を思いつきました。
やらないより、やった方がいいやつです。
時期がきたら発表しますね。
サロンメンバー全員を勝たせます。
現場からは以上でーーす。
【追伸】
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