西野亮廣のエンタメsalon

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2020年08月14日のエンタメ研究所の過去記事

 
8月14日(金) ※8月16日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
映画公開前のシッチャカメッチャカの最中、コッソリと海外に会社を一個作ったキングコング西野です。
さて。
昨日、ウチのインターン生の「まーちゃん」が指揮をとっているVRイベントに参加させていただきました。
過去に開発した『えんとつ町のプペルVR』を体験した後に、これから開発する新作の方向性を参加者全員でウニャウニャと議論する会です。
そんなこんなで、昨日、個人的に感じたVRの課題と、その課題の突破方法についてのメモを皆様に共有したいと思います。
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VRが抱えている課題
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VRが抱えている課題について、『クリエイティブ』と『運用』の両面からお話します。
▼クリエイティブ面
VRの魅力は「その世界を見る」ではなくて、「その世界に入る」です。
えんとつ町のプペルVR』のゴーグルを付けた途端、「えんとつ町の住人」になれるわけですね。
エンタメは、『キャラクタービジネス(例:ミッキーマウスアンパンマン)』と『壁紙ビジネス』の二つに大きく分けられると思っていて……、それでいうと、VR(=その世界に入れる乗り物)は、僕らのような『壁紙ビジネス(例:えんとつ町、チックタックの森、天才万博、スナックCANDY…)』と、とても相性が良いと思います。
ただ、VR開発は「世界の全てを作ることができない」という問題を抱えています。
50メートル先にニョキっと立っている煙突の裏側まで作っていたら、工数(時間&スタッフの人数&予算)がかかりすぎてしまって、いつまでたってもVR空間内の「えんとつ町」は完成しないんですね。
なので、作るポイントを絞る為に、「プレイヤーが移動できる範囲を制限することで(=プレイヤーが見ることができる範囲を制限する)」という手が打たれるわけですが……
世界は360度広がっているのに、「ここから先は行かないでください」という指示を出されてしまうと、途端、僕らは不自由を覚え、夢が覚めてしまいます。
「ああ、やっぱり、これはVRなんだなぁ」となってしまう。
制作者の課題は、「世界の全てを作らない」、だけど「プレイヤーの移動の自由を奪わない」という大きな大きな矛盾を突破することにあります。
この突破策については、後半でお伝えしますね。
▼ 運用面
次に「運用面」の課題についてお話しします。
どれだけ素晴らしいVRを開発しようが、「お客さんが来ない」「ランニングコストが回収できない」という二つの問題をクリアしないことには、続けていくことは不可能です。
当たり前ですが、作ったところで、使えなかったら全てが無駄になるんですね。
世の中には素晴らしいVRがたくさんありますが、多くのVR施設は若干集客に苦戦しています。
この問題に関しては、劇場生まれ劇場育ちのキングコング西野はお手の物で、「『コンテンツの強さ』と『集客』は、そこまで比例関係にない」というのが僕の結論です。
コンテンツの強さが、そのまま集客に繋がるのであれば、テレビの人気者がズラリと並んでいる『ルミネtheよしもと』(※新宿にある吉本興業の劇場)は連日満員御礼のバズ。
ですが、実際は、そうはなっていません。
吉本が保有している連日満員御礼の劇場は、知らない芸人もたくさん出ている『なんばグランド花月』です。
なんばグランド花月』は、いつも団体客で溢れています。
大阪観光の一つになっているんですね。
そうなんです。
「集客」で大切なのは、実は「コンテンツ」ではなくて、「動線」なんです。
VRは集客動線を設計しないかぎり運用していくことは不可能なのですが、ここで、やっかいな問題があります。
それは、
「人の流れがある場所は、家賃が高い」
という問題です。
「その世界の中を歩き回れるVR」を作ったところで、それを運用していこうと思うと、それなりのスペースが必要になってきますが、たとえば、都内で、それだけのスペースを確保するとなると、家賃の問題が発生します。
とても、VRの売り上げで支払える額じゃないので、ランニングコストが回収できないんですね。
そして、もう一点。
これは全ての実店舗経営者に共通する問題ですが、「人が多いところに店を出したら、人が来る」なんてことはありません。
観光客で溢れている太宰府天満宮の目の前に「萌え系アニメのグッズショップ」を出したところで閑古鳥。
市場(属性)を細分化する必要があって、
今回の場合だと、「ただ、人が多いところに店を出す」ではなく、「えんとつ町のプペルVRを体験するお客さん(見込み客)の生息地域」を探りあて、そこに店を出す必要があります。
昨日のVR体験会で見つけた課題は大体このへんです。
そんなこんなで最後に、「こうすれば突破できるかもね」という突破策を提案してみます。
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えんとつ町のプペルVRが抱えている『クリエイティブ』と『運用』の問題をハンサムに突破する方法
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「不自由」を覚えた瞬間に、「やっぱ、VRじゃん」となって、夢が覚めるわけですが、そもそも僕たち人間は、どの条件が揃った時に不自由を覚えるのでしょうか?
僕らは今、コロナちゃんにメッタメタにやられて移動を制限され不自由を覚えていますが、
たとえば、【室町時代】を生きていた人達は「日本から出られない」ということに不自由を覚えていなかったと思います。
要するに、「進めるハズなのに進めない瞬間」に僕らは不自由を覚えて、「進めないと信じている瞬間」には不自由を覚えない。
えんとつ町の道が続いているのに、VRのシステム上「これ以上は進めない」とされるので、不自由を覚えるわけだから、「そもそも進めないと信じている場所」にプレイヤーを置けばいい。
というわけで、『煙突の上』や『小さな屋根の上』をワイヤーで繋いで、「手こぎのロープウェイ」で、『煙突の上』や『小さな屋根の上』やワイヤーで上を移動するようにすれば、足はほとんど動かさなくても、不自由を覚えることはありません。
そうすると、「見える範囲」は、『煙突の上からの景色』『小さな屋根の上からの景色』『手こぎのロープウェイからの景色』に絞られるので、世界の全てを作らなくても済みます。
プレイヤーが歩き回らないので、大きなスペースが必要ありません。
もしくは、多くのプレイヤーが一度にプレイできる。
これで「家賃問題」は解消できます😊
んでもって、このVR施設をスナックCANDYの近所に作れば、「スナックCANDYに行く前にVRに寄っていく」という流れが作れます。
つまり、スナックCANDYのお客さんを引っ張ってくることができるわけですね。
「どこか良い場所はないかなぁ?」と思っていたら、スナックCANDYから徒歩5分のところに「えんとつ町」の世界観を再現した『ZIP』というレンタル会議室があるじゃありませんか。
『ZIP』の窓には「えんとつ町」がプリントされているのですが、それを受けて、社長のヤン君が「VRゴーグルを付けても、このZIPの中の景色が拡がっていて、ZIPの窓から伸びたワイヤーをつたって『えんとつ町』に繰り出すVRにしたらいいんじゃない?」と天才みたいなことを言っていました。
たぶん、このへんを押さえておけば『クリエイティブ』と『運用』の問題は突破できると思います。
僕は中身には口を挟みたくないので、あとは、インターン生の「まーちゃん」の仕事です。
大切なのは『運用』までキチンと設計して、「届き続ける作品を作る」ということですね。
ここは、多くのクリエイターさんが見落としている部分なので、是非、参考にしてみてください。
現場からは以上でーす。
【追伸】
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