西野亮廣のエンタメsalon

西野亮廣エンタメ研究所の過去記事を中心にアップしてます

2020年09月01日のエンタメ研究所の過去記事

9月1日(火) 9月3日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
ゾンビ映画を観るたびに、「なんで自動でゾンビを倒してくれる装置を作らずに、一体一体手作業でやるんだよ。職人魂かよ」とヤキモキしちゃうキングコング西野です。
さて。
今日は『次代のエンターテイメント』というテーマでお話ししたいと思います。
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▼ 『野球中継』という最高傑作
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エンタメの世界に20年もいると、エンタメの最高峰が「コミュニケーション」だということを知ります。
新ネタや新曲が生産され、届けられるまでには“まとまった時間”が必要ですが、コミュニケーションは「話す相手」や「シチュエーション」が都度都度変わるので、新しいコンテンツが生まれ続けます。
「野球×テレビ中継」の組み合わせが見事なのは、野球の「一球一球、一回一回仕切り直される」という要素と、テレビの「皆で観る」という要素が絶妙に混ざり合っている点です。
そのおかげで、茶の間のお父さん(野球素人)がコメントを挟む余白が生まれ、「あぅ!なんで、今の球に手を出すねん!」とか言い出します。
店内で野球中継を流している地方の酒場でも、親父さん達が「今の球は振らなアカンやろ!」「ホンマやで!」と、監督さながら試合に参加されています。
ゲーム展開が速い(途中で仕切り直しが入らない)スポーツだとコメントを挟む隙がありませんし、中継を観ている時に隣に人がいないと、自分の考えを聞かせる相手もいませんので(独り言になってしまうので)、コメントを挟む回数が極端に減ります。
因数分解すると、つまるところ『野球中継』が販売しているのは「野球」と「コミュニケーション」だということが分かります。
こうなってくると、部屋で一人で観る「スマホ」と、「野球中継」の相性がすこぶる悪いことが見えてきます。
その組み合わせだと、視聴者は「野球を観る」だけになってしまうので、「コミュニケーション」を売ることができないからです。
「コミュニケーション」というエンタメを省いた『野球中継』は弱いです。
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▼ 「ZOOM呑み」の難しさ
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コロナがオラオラ言い始めた時に、御多分に漏れず僕も何度か「ZOOM呑み」にチャレンジしてみました。
ところが影響力に格差がある「ZOOM呑み」は、少しでも気を抜くと「一番影響力が大きい人の話を、他の皆が聞く(見る)」という状態になってしまい、結果的に、YouTubeのLIVE配信に近くなってしまいます。
プレイヤーとオーディエンスに分かれてしまうその形は「コミュニケーション」というよりも「SHOW」に近いです。
「ZOOM呑み」の参加券を売る芸人(@スナック吉本)は、そもそも「SHOW」をする覚悟で臨まないと、「コミュニケーションをしたいんだから、皆、もっと積極的に喋ってよ!」というストレスが生まれることでしょう。
「どうすればZOOM呑みが西野のSHOWではなくなるかなぁ?」と考えた挙げ句、「西野が画面に写っていることが問題だ(=西野が画面に写っている以上、皆、西野を観てしまう)」と結論し、参加者全員の部屋の電気を消してもらい、皆で『焚き火』の動画を共有してみました。
すると面白いことに、さっきまで「西野が話し出すのを待っていた人達」が自主的に話し始め、会話が盛り上がります。
ありがたいことに、「皆で焚き火を見る」ということになっているので、会話が途切れても、気まずさが生まれません。
炎の揺らぎと、焚き火のパチパチという音が、間を埋めてくれるのです。
この時、「SHOW」と「コミュニケーション」の最大の違いは「視点」であることを知りました。
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▼ 「次は副音声っすね」by けんすう
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先日、漫画サービス『アル』(https://salon.jp/alu
 
)が開発している新サービスを一足先に体験させてもらったのですが、その中身は「オンラインで繋がった皆でワイワイ言いながら一緒に漫画を観る」というもので、これが『野球中継(@テレビ)』や『焚き火(=焚き火ZOOM呑み会)』のようで、すこぶるイケいました。
漫画を待ち合わせ場所にして、副音声的に入ってくるコミュニケーションを販売している感じです。
今、新入社員のセトちゃんが手掛けているオフブロードウェイミュージカル『Poupelle of Chimney Town』のクラウドファンディングで、「オンライン公演のパブリックビューイングをスナック『CANDY』でおこなう」という企画をやっているのですが、あれは最高にイケていると思います。
ミュージカルを販売しつつ、副音声的な役割を果たしているコミュニケーションを販売していて、これが「映画館」でのパブリックビューイング」だと、そうはならない(コミュニケーションが売れない)。
これが主流になってくると、『野球』の「仕切り直し」のように、「待ち合わせ場所となるメインコンテンツの中に、いかにコミュニケーションを挟める隙をデザインするか?」という話になってくるだろうから、メインコンテンツそのものの形も変わってくると思います。
オンラインゲームなんかはこのあたりを押さえていますが、「お笑い」や「音楽」や「ミュージカル」や「絵本」や「漫画」などで、副音声コミュニケーションと相性の良いコンテンツを作ったプレイヤーが次の時代の覇者だろうなぁというのが僕の見立てです。
現在開発中の『えんとつ町のプペルVR』は、プレイヤーの近くに(画面の中に)トランシーバー的なものを置いておくと、同じ空間でプレイしている人達とのコミュニケーションが副音声的に効いてくるからイイと思います。
ま、いずれにせよ、コミュニケーションを絡めないサービスはジリ貧になってくるから、「どうすれば自分のサービスの中に、お客さんが負担が少ないコミュニケーションを絡められるか?」というテーマは持っておいた方がいいと思います。
現場からは以上でーす。
【追伸①】
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