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2020年10月31日のエンタメ研究所の過去記事

10月31日(土) ※11月2日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
今朝7時に実花さんのMV(プペル)が公開されてからというもの、嬉しくて、すでに20回ぐらいは観ているのですが、よくよく考えてみたら、公開前に嬉しくて70回ぐらい観ていたキングコング西野です。
さて。
今日は『思いついて(想像して)もらうまでに費やすコスト』というテーマでお話ししたいと思います。
エンタメを軸に話しますが、これは全てのサービス業に共通するテーマなので、是非、全身全霊で熟読してください。
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▼ 思いついてもらわないと始まらない
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現在連載中の『ゴミ人間』(※https://thetv.jp/news/detail/246608/
 
)でも書きましたが、「お客さんに思いついてもらわないと見つからない」というのがサービスの理です。
いつかCDジャケットを手掛ける人になりたいと願っていたイラストレーターの中村佑介さんは、ひたすら正方形のイラストを描き続け、「このイラスト、CDジャケットに使えるんじゃない?」と音楽関係者に思いついてもらったことで、アジアン・カンフー・ジェネレーションのCDジャケットを手掛けるようになったそうです。
もし、世に出る前の中村さんが長方形のイラストを描いていたら、今の中村さんの活躍は無かったかもしれません。
ONE MEDIA代表の明石ガクトさんは、「仕事を取りたいのならば、#(ハッシュタグ)を取ることが何よりも大切」と言います。
これも、中村さんの戦略と同じ意味です。
『革命のファンファーレ』という書籍を出す時、僕らは明らかに「#革命」を取りにいきました。
革命のアイコンになるべく、表紙で着ているシャツは「赤色」、そして背景も「赤色」です。
『革命のファンファーレ』を出した直後から、講演会の依頼が殺到しました。
先方さんから提案された講演テーマは「美容革命」「不動産革命」「教育革命」……などなど。
その業界の古い“しきたり”に疑問を持った次世代が、こぞって、現代の革命家・キンコン西野をキャスティングしました。
これは、たまたま発生した流れではなく、「革命といえば……」で思いついてもらう為に、戦略的にコストを割いたから生まれた流れです。
SHOWROOMの前田さんでいうところの「#メモ」です。
彼は「#メモ」を取るために、テレビ出演する際にメモ帳を持参します。
とても正しい戦略だと思います。
これによって、「メモ」をテーマにした企画&キャスティング会議では、前田さんの名前が真っ先に挙がります。
「異端者」である幻冬舎の箕輪さんは、ハイボールを片手にステージに登壇しますが、楽屋でもハイボールを呑まれているので、戦略もヘッタクレもない、ただのアル中だと思います。
ポイントは、「たまたま思いついてもらったわけではなくて、思いついてもらう為のコストを割いている」という点です。
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▼ 想像してもらわないと予算は集まらない
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キンコン西野クラウドファンディングの支援総額は4億円を超えているそうです。
ここから察するに、どうやら僕はクラウドファンディングが上手いらしいのですが、どっこい、過去には思うように支援が集まらなかった企画があります。
最も苦戦した企画のは、(今では考えられませんが)絵本『えんとつ町のプペル』の制作費を募った回です。
このプロジェクトには、最終的には1000万円の支援が集まりましたが、支援というよりも(支援もありましたが)、その多くは「西野の給料」でした。
感覚でいうと、1500万円分ほど働きました。
えんとつ町のプペル』のことなんて誰も知らなかった当時、何をトチ狂ったか「今度は分業制で作ります」と言い出した西野には、さすがにファンの皆様も呆れ顔。
「分業制?」「いやいや、黒のボールペン1本で描く貴方の絵本が好きなんですけど」といった御意見をたくさん頂戴しました。
クラウドファンディングを立ち上げて、これから分業制で作る『えんとつ町のプペル』という絵本が、どれだけ凄い事件なのかを何度プレゼンしても、まったく刺さりません。
結局、僕のプレゼンは最後まで刺さらないまま、半ば強引に目標金額を達成させて、とりあえず、分業制で1ページ分を作ってみました。
その1ページを披露して、再度、『えんとつ町のプペル』のクラウドファンディングを実施したところ、今度は、とくにプレゼンもしていないのに、もの凄いスピードで支援が集まり、最終的には支援額は4600万円を超えました。
ここから読み取れる答えは「お客さん(支援者)は、完成が想像できないものには、お金を出さない」ということ。
僕の打ち手としては、いきなりクラウドファンディングを立ち上げるのではなく、自腹で(キチンとコストを割いて)分業制で絵を一枚だけでも用意して「お客さんが完成を想像できる状態で」クラウドファンディングを立ち上げるのが正解だったのでしょう。
たった、これだけのことで、集まる予算が多きく変わります。
ポイントは、「想像してくれることを期待するのではなくて、想像してもらう為のコストを割く」という点です。
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▼ 5分のMVに5000万円をかけた理由
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今朝、公開された蜷川実花監督のMVはご覧いただけましたでしょうか?
まだ観られていない方は、「ドラマバージョン」と「ダンスバージョン」があるので、是非、二本とも観てください。
本当に最高なんです。
【ダンスバージョン】
MVの中身について、実花さんの方から「『今度のMVは、蜷川実花が作ったミュージカル【えんとつ町のプペル】を観に行く』という設定にしようかと思うんだけど、どうかな?」という話をいただいた時に、「その設定だと、おもくそ予算をかけられる!」と黒西野が算盤をはじきました。
「『えんとつ町のプペル』のミュージカルを観に行く」という内容のMVを世に出した時点で、「これ、本当にミュージカル化した方がいいんじゃないの?」「ていうか、プペルは実写化した方がいいんじゃないの?」と“思いついてくれる人”が大量に生まれるからです。
そして、実花さんが作り上げた5分間の世界を観れば、90分(実写映画一本分)の完成形を想像してくれる人が生まれます。
事実、撮影現場に居合わせた「電通よりの偉い人」から、「これ、ハリウッドに持っていって実写化しましょうよ」という声をかけられました。
思いつかれたし、想像されたわけですね。
つまり、今度のMVに費やした予算を因数分解すると、そこには『映画えんとつ町のプペルの宣伝費』の他に、『ミュージカル&実写映画化を思いついてもらう(想像してもらう)代』があって、ハリウッドで実写映画となると制作費100億という規模になってくるので、それを掴む為の経費としては安すぎる。
気をつけなきゃいけないのは、「思いついてもらう」「想像してもらう」にはキチンと落とし穴があって、そこで予算をケチって、ショボいモノを見せてしまうと、「えんとつ町のプペルをミュージカルにしても、こんなもんだよね……」「えんとつ町のプペルを実写化しても、こんなもんだよね……」といった感じで、自らの息の根を止めてしまいかねないので、変な話ですが、思いつかれてしまう(想像されてしまう)時は、全力でコストをかけた方がいいと思います。
ひとつ確かなことは、今回のMVのあの圧倒的クオリティーが、現在進行中のブロードウェイミュージカルの追い風になった(予算が集まりやすくなったし、「生で観たい」という気分が高まった)ことは間違いないので、近々、ミュージカルチームは蜷川神社にお参りにいってください。
今日の話を一言でまとめると……「思いついてもらう為のコスト(時間、洋服、髪型、小道具、予算)は必要経費だからケチっちゃダメだよ」です。
あとは、「そもそも、『思いついてもらうコスト』のことを頭に入れておかなきゃダメだよ」です、
現場からは以上でーす。
【追伸】
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https://youtu.be/_Pn_gv_dOvs
 
 
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