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2021年02月17日のエンタメ研究所の過去記事

2月17日(水) ※2月19日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
昨日、ミュージカル『キャッツ』の話になり、「どんなストーリーなの?」と質問されたので、「2時間かけて『犬は猫ではない』と説明する物語だよ」と説明したキングコング西野です。
さて。
今日は『VR体験施設は何故潰れるのか?』という話をしたいと思います。
くれぐれも僕の主観です。
しかしながら、皆様の活動の何かのヒントになれば嬉しいです。
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▼ 『未知』から『既知』へ
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去年、VR体験施設が相次いで閉館しました。
もちろんコロナの影響もあったでしょうが、どっこい、コロナ前から集客に苦戦していた印象があります。
それに、“密を避けられるVR”の需要は、むしろコロナによって拡大しているハズで、「コロナのせいで閉館した」と結論するのは、いささか乱暴な気がします。
こういう時は、「需要が落ちた部分」と、「需要が上がった部分」を分けて考えた方がいいと思っています。
「需要が落ちた部分」でいうと、そっくりそのまま『VR体験施設』です。
「『VR』の需要が落ちたわけではなく、『VR体験施設』の需要が落ちた」という話です。
僕自身、これまで、いくつかVR施設を体験させていただいたのですが、とても楽しませてもらった一方で、体験後に思ったことが2つありました。
その2つが、こちら↓
①「また行こう」とはならなかった。
②「これだったら、○○の方が…」と思った。
①は「リピートするか否か?」という問題で、僕が体験したのは「サプライズ要素が盛り沢山の作品」が多く面白かったのですが、「サプライズ」を売りにしてしまっているので、2度目は、一度目の満足度を超えることがない……と判断してしまいました。
これは『VR』の問題ではなく、『作品』の問題で、もっと言うと「クリエイター」の問題ではなく、「プロデューサー」の問題です。
プロデューサーまでもが「面白いモノを作ろう!」に針を振りすぎていて、クリエイティブ段階でマネタイズの算盤がはじけていない。
このあたりは、VR開発&運営に限らず、あらゆるチームに求められるコンビプレイですね。
チームには、人の心と鉄の心を持ったプロデューサーが必要です。
VRに話を戻します。
いろんなVR体験施設を回りましたが、「サプライズがないと成立しないVR作品を大衆娯楽化するのは難しい」というのが僕の結論です。
「体験してもらえれば楽しさが分かる!」と何度も売り込まなきゃいけないVR作品は絶対にNGで、旅行と一緒で『未知』の観光地など存在できません。
大切なのは、「ここに行ってみたい」「もう一度行ってみたい」を掘り起こし、『未知』から『既知』へと移動させることで、基本的には、ネット上にVRの内容を全てアップしても何ら問題ないと思います。
厳密に言うと、『ネット上に内容を全てアップしても何ら問題のないVR』を作ることが大事です。
京都の清水寺って、ネット上にアップされている上に、サプライズもヘッタクレもないですが、行きたくなるじゃないですか?
あれっす。
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▼ 選ぶ時の基準は「クオリティー」ではなく、いつだって「比較」だ。
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二つ目に思ったのが、「この内容で、この値段を払うのであれば、映画を観に行った方がいいな」でした。
ここが結構、微妙なところなのですが、「VRのクオリティーに不満を持ったわけではない」という点です。
VR体験施設に足を運んで2000円を払って、数分間のVR体験をしたから疑問を持ったわけで、病院の待ち時間に300円で体験できていれば、感動でションベンをチビっていました。
要するに、クオリティーの問題ではなくて、ビジネスモデルの問題で、お客さんは作品(商品)の【クオリティー】で選んでいるわけではなくて、「同じ2000円を支払うなら、友達と『いきなりステーキ』に行くよね」という【比較】で選んでいるという至極当たり前の結論です。が、クリエイターは、ここがスッポリ抜け落ちてしまいます。
これもまた、プロデューサーの問題だと思います。
VR』の競合に『いきなりステーキ』があることをキチンと踏まえて、作り上げたVRを、「どこで出せば価値が生まれるのか?」「いくらで出せば……もっと言えば、○○円で提供する為には、どういうお金の流れを設計すればいいのか?」それを死ぬ気で考える(笑)
ちなみに、僕の友人は、寿司屋が無い国を検索して、寿司屋を出しています😊
昨日、『えんとつ町のプペルVR』の開発を担当している(株)CHIMNEY TOWNの学生インターンの「まーちゃん」から、開発中のVRを体験させてもらいました。
サプライズの問題もクリアしていて、とっても素晴らしい作品に仕上がっていました。
最終的には煙突に上れるのですが、ガチンコで足元がすくんで、超絶最高でした。
「また、あの煙突に上りたい」と思いました。
5~6分でサクッと体験できるVRです。
すっごくイイと思います。
VR体験後、「これ、いくらで提供するの?」と、まーちゃんに聞いたところ、「1500円です」と返ってきました。
ランニングコストを計算したら、それぐらいの値段が妥当なのだと。
ただ、同じぐらいの値段で『映画 えんとつ町のプペル』を提供している僕からすると、5~6分のVRに1500円は、なかなか払いづらいなぁと思いました。
このへんは、兵庫県川西市出身&サラリーマン家庭の4人兄弟の西野家の算盤が基準になっておりまして、西野家からすると、やっぱりチョット高い。
僕がテルオ(西野の父)なら、奮発して子供4人に6000円を払うのであれば、映画を選びます。
えんとつ町のプペルVR』は、ここの問題をクリアする必要があるんだろうなぁと思っています。
そして、抜け道はいくらでもあると思っています。
たとえば『意味変』。
5~6分のVRを体験するのに、1500円を支払うのは(僕は)高いなぁと思うのですが、
「5~6分のVR体験」を地元の子供達30人にプレゼントするのに4万5000円を支払うのは、(僕は)安いなぁと思っちゃいます。
VRを『ギフト商品』にした瞬間に、途端に安くなる。
あと、『ギフト商品』にした瞬間に、サービス提供者側からすると途端に集客がラクになる。
こんな感じの抜け道は、まだまだあると思います。
VR体験施設が軒並み閉館したからといって、VRの需要が落ちたわけではありません。
キチンと問題を分解し、整理し、 
キチンと打ち手を選べば、答えに辿り着けるでしょう。
これは全てのサービスに通じる話だと思います。
今回は『意味変』というカードを持っていたから、抜け道を探せる可能性が生まれたわけで、守るべきものを守るには、やっぱり勉強は大切ですね。
月並みな結論でゴメンなさい。
現場からは以上でーす。
 
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