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2021年02月21日のエンタメ研究所の過去記事

2月21日(日) ※2月23日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
厚手のダウンを着こんだ日本人の後から、半袖短パンの外国人さんが歩いてきて「世界の壁は厚い」と判断したキングコング西野です。
さて。
今日は『制限があるところで戦う』というテーマで、「次は、こうこう、こういう理由で、ココを狙います」という話をさせていただこうと思います。
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▼ 生き残る道は2つ
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今朝のVoicyで話させてもらったことの延長になるのですが、「買う人」が少なくなると、売り上げが下がるわけですから、「制作費」が減るのは当たり前の話で、制作費が減るとクオリティーが落ちます。
「いやいや、技術も進んで、効率化も進んでいるのだから、制作費が落ちてもクオリティーは落ちないでしょ」
と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、「クオリティー」は絶対的なものではなくて、相対的なもの(競合との比較)だす。
自分のクオリティーが上がっても、競合が、それよりも上がっていれば、「クオリティーが落ちた」と判断されてしまいます。
「制作費」の中から買われるのは、目に見えるモノだけではなく、「スタッフの拘束時間」もあります。
制作費が削られてしまうと、スタッフの拘束時間も減り、「短い期間で完成させなければならない」という現実と向き合わなければなりません。
「買う人が少ない作品」は1週間で慌てて作らないといけないけど、「買う人が多い作品」は5年かけて丁寧に作ることができたりします。
人口が減り続けている国内マーケットに向けて作られる作品(商品)と、人口が増え続けている世界マーケットに向けて作られる作品(商品)では、クオリティーに差が出るのは当たり前で、
それらの作品(商品)がインターネットで同じ棚に並ぶのだから、「世界向けに作るか?」「超ローカルコミュニティー向けに作るか?」の二択しか残ってないっすか?というのが先日サロンに投稿した(猪子さんの記事を引用した)記事であり、今日のVoicyの話です。
そして、今日は世界戦の話をば。
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▼ 世界の崩しかた
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「世界に向けて作る」と言っても、そもそも第一歩目から「制作費」というマネーゲームが始まっているわけですから、僕のような小国の貧乏人が真っ向勝負をしてはいけません。
これは前々から話していることですが(※知らない人もいるので……)世界に向けて一歩目を踏み出す時の注意点は「お金持ちがお金の力を使えない競技を選ぶこと」で、その一つが『絵本』かなぁと思っています。
世界で一番売れた映画は『アベンジャーズ エンドゲーム』で(アバターを抜いただって!)、制作費は「3.56億ドル」だそう。
日本円にすると、370億円ぐらいでしょうか。違う?
ちなみに、世界で一番売れた絵本は『はらぺこあおむし』で、これもとんでもないモンスター絵本ではありますが、制作費は「作者のエリックカールさんの制作期間中の生活費+絵の具代」ぐらい。
ディズニーも絵本をたくさん出していますが、エリックカールさんに敵いません。
要するに、「いきなり合戦に臨むではなく、まずは一騎打ちに持ち込んで、勝って名前を上げて、ポジションを獲得して、少し力をつけてから合戦に臨んだ方が(まだ)勝率は上がるんじゃね?」という話です。
国内戦で西野がやったようなことです。
「いきなり『ポケモン』に挑んでも勝てないけど、一騎打ちたる『絵本』でポジションを獲得して、体力をつけてから挑んだら、やり方によってはワンチャンあるかも作戦」です。
「巨人が力を出せない『絵本』から崩していく」というやり方は、世界相手でも一つありそうです。
次に「ジャパニーズアニメーション」も可能性があるなぁと思っています。
CGアニメに見慣れた(溢れかえった)今、逆に「手描きタッチ」が恋しくなってきていて、同じ棚に並んでも「CGアニメの方がイイ!」とはなりにくい。
ちなみに、『トイ・ストーリー4』の制作費は「2億ドル」。
千と千尋の神隠し』の制作費が「19億円」なので、一桁以上の違いがありますが、作品の良し悪しは甲乙つけがたいです。
アニメーションの世界にも間違いなくお金(制作費)の力は存在するのですが、「お金の力で、そこまで大きな差を生めていない」という印象です。
ここは、制作費にウン百億円をブチ込むことができない僕らがつけ入る(数少ない)隙かもしれません。
そして……
近々、打ち合わせが入っているのですが、(その打ち合わせ次第では)もしかすると次に僕らは『ストップモーションアニメ』に着手するかもしれません。
ストップモーションアニメとは、「静止している物体を1コマ毎に少しずつ動かしカメラで撮影し、あたかもそれ自身が連続して動いているかのように見せる映画の撮影技術、技法@Wikipedia先生」のことてす。
最近、舞台(ミュージカル)を作っているので、スタッフとよくこんな話になります↓
「魔法(テクノロジー)を使いすぎると、魅力が落ちてしまうエンタメってあるよね」
たとえば『人形浄瑠璃』。
まるで人形が生きているように動きますが、因数分解すると「人が動かしている」というところに価値があります。
操作する人(人が動かしている)を消して、「まるで生きているように動く人形」を独立させてしまうと、『人形浄瑠璃』の面白さは消えてしまいます。
舞台(ミュージカル)もそう。
マッピング(映像表現)を使えば、どんな世界でも再現できてしまうのですが、「それならば映画でいい」となってしまいます。
僕はストップモーションアニメが大好きなのてすが、お金とテクノロジーをかけすぎて、人形の動きを滑らかにしすぎてしまうと、「それならばCGアニメーションでいい」となっちゃうんです。
ストップモーションアニメの魅力は「カクつき」(※若干ギクシャクとした動き)&背景セットのジオラマ感で、そこに職人さんの手作業が透けて見えて、グッときます。
絵本にしても、浄瑠璃にしても、舞台にしても、ストップモーションアニメにしても、「この制限の中でやりましょうね」というものがヤンワリあったりします。
もちろん、ストップモーションアニメを選んだ瞬間に予算は膨らむのですが(それは覚悟している)、作品の尺を短くして、予算を集中させれば、そこまで、世界との体力差(体格差)が如実に出るゲームにはならないので、まだ、やり合えそうです。
映画の国内戦もそうでしたが、こういった感じで、「巨人のアキレス腱を的確に狙って、切り崩していく」というのが、とってもとっても大事です。
これはエンタメに限った話ではなく、おそらく皆様のサービスにも通じる話だと思うので、「そもそも僕らの体力って、どれぐらいあるんだっけ?」「え? じゃあ、こんな感じで真っ向勝負してちゃダメじゃん」という話し合いをチームの皆でされることをオススメします。
「苦労して、満足のいくものを作った後に、巨人に2日でコピーされる」という悲惨な事故をよく見かけます。
「そこで戦うな」という話です。
最近、「彼ら(巨人)が力を出せないように戦わなきゃダメだよ」とよく言ってます。
現場からは以上でーす。
 
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