西野亮廣のエンタメsalon

西野亮廣エンタメ研究所の過去記事を中心にアップしてます

2021年02月26日のエンタメ研究所の過去記事

2月26日(金) ※2月28日以降は『いいね』を押さないでください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
おはようございます。
昨日、「コンビナート 値段」で検索をしたキングコング西野です。
さて。
今日は『地方創生ド根性物語 ~観光資源の創造とマイクロツーリズム~』というテーマでお話ししたいと思います。
「地元を盛り上げたい」と考えている人はココを押さえておいた方がいいよね、という話です。
※昨日の話の続きになるので、昨日の記事を読まれていない方は先にそちらをお読みください。 
━━━━━━━━━━━━━━━
▼ 「工場夜景」という観光資源
━━━━━━━━━━━━━━━
昨日、山口県周南市のコンビナートが『えんとつ町』のモデルになっていることを例に出して、「『えんとつ町のプペル×工場夜景クルーズ』を仕掛けませんか?」という記事を投稿ささていただきました。
すると、たまたまサロンメンバーさんの中に、周南市の議員さんがいて(いらっしゃって?)、現在、正式なルートで話を進めさせてもらっております。
持つべきものはオンラインサロンでございます。
工場夜景フェチとしては腕が鳴るプロジェクトで、一つ確かなモデルを作って、四日市や堺や室蘭や川崎……などなど全国に横展開していきたいなぁと思っています。
ところで。
「工場夜景を観光資源として地元を盛り上げていこう」という運動は以前から各地でおこなわれていました。
しかしながら、(僭越ながら)エンタメのものすごーくプロの視点から意見させていただくと、「もう少し上手くアプローチできるかなぁ」といったところ。
今日はそんな話をしたいと思います。
サロンメンバーさんからすると『いつもの西野の手口』かもしれませんが、まず大前提として、「工場夜景に興味がある人」と「工場夜景に興味がない人」でいうと、後者の方が圧倒的に多いわけで、そこを取り込まないと少し厳しいです。
その時、工場夜景に興味がない人に工場夜景の魅力をどれだけ語っても無駄で、「別の理由」で興味を持ってもらわなくてはなりません。
絵本『えんとつ町のプペル』を売る時に、絵本『えんとつ町のプペル』のマーケティング戦略を一冊にまとめた『革命のファンファーレ』というビジネス書を一緒に出して、絵本に興味がないビジネス層に興味を持ってもらった時のような。
そこで、「工場夜景に興味がある人」へのアプローチは引き続きやりつつ、「工場夜景には興味がないけど『えんとつ町の実写版』には興味がある人」を取り込もうと考え、『えんとつ町のプペル×工場夜景クルーズ』を提案してみました。
昨日、田村Pから「映画に出てきたあの船、作ります?」と質問されたのですが、まずは企画を走らせてみて、様子を見て、判断をすればいいと思いました。
もう少し踏み込んだ話をすると、「工場夜景クルーズ」が大きな一隻の船で行くよりも、5~6人乗りぐらいの小さなボートで行った方が楽しいのであれば、そこで使用する小さなボートを、『えんとつ町のプペル』の続編に入れたらいい。
ファンタジーを現実化するのではなくて、現実をファンタジーの中に織り込んで、再び現実に戻った時に「あ!映画に出てきた船だ!」となるように。
いずれにせよ、僕らが『えんとつ町のプペル』を頑張れば頑張るほど、「工場夜景クルーズ」のお客さんが増えて、地元にお金が落ちる流れを作れたらいいなぁと思っております。
いつも言っていることですが、コンテンツ単体で集客をしてはダメで、大切なのは、キチンと流れ(お次はアチラ)を作ること。
その点、「工場夜景クルーズ」は、僕らが仕掛けている絵本や映画やミュージカルやVRや個展やスナックや美術館や美容室やグッズ……などなどで集めたエネルギーを自然に流すことができそうです。
そして、地元の観光資源を利用して地元を盛り上げるには、もう一つ考えなければいけないことがあります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ 観光資源は地元の人間からすると、ただの背景
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
僕の地元は兵庫県川西市という田舎町です。
山と川に挟まれた自然まみれの町なのですが、なんと大阪の中心から30分弱で行けます。
新大阪駅から30分、大阪国際空港から20分…という高立地です。
仕事柄、いろんな町や国に行かせてもらいますが、ここまで「都会から近い自然」は滅多にありません。
ところが!
地元の人間からすると、生まれた頃からある当たり前の景色なので、それが自分達の資産であるという意識はあまり持てません。
結果、東京のコピペのコピペのコピペのような開発が進み、どこにでもある町を作り、「行く理由(お金が落ちる理由)」を自ら削ってしまいます。
程度の違いはあれど、同じようなことは、おそらく皆様の地元でも起きていると思います。
「都市化で街を盛り上げる」というのは人口が増えている時代の打ち手ですし、田舎と都市が「都市化対決」をしたら都市が勝つに決まっています。
クリアしなきゃいけない問題はいくつかあると思うのですが、まずは「地元の人間は地元の価値に気づきにくい」という問題と向き合った方が良さそうです。
「工場夜景」は、たまに観る人からするとファンタジーですが、工場夜景の前に住んでいる人からすると日常の風景で、ただの背景です。
その人達に「工場夜景クルーズ」を提案しても、「なんで、普段、家の窓から見ているものを、時間とお金を払って見に行かなアカンの?」となるのが関の山。
地元の人を「お客さん」にできないから、県外にアプローチせざるをえなくなっているのが「観光」の実態です。
が、……そりゃ、できるなら県外の人は勿論、県内の人も取り込めた方がいいですよね?
コロナで移動が制限された時に星野リゾートさんが仕掛けたのはまさにこれで、「どうすれば近所の人に来てもらえるか?」です。
代表の星野さんは「マイクロツーリズム(短距離観光)」という言葉を使っていました。
「工場夜景」を地元の人達の観光地にする為には、船上限定のレクリエーションの開発もさることながら、「『子供』をキチンと掴んでおく」というのが、とっても大事だなぁと思います。
僕が子供の頃、家の近所を走る「能勢電車(のせでんしゃ)」をいつも観に行っていたんです。
「電車を観に行こう」と母ちゃんを誘って、来る日も来る日も、線路沿いのフェンスにしがみついていました。
能勢電車は10分おきに走ってくるので、「あと、もう一回、観よう!」と言って、また10分待ったもんです。
そこには「電車なんていつも見てるじゃないか」という理屈は存在しなくて、「好きなものを、ただ近くで観たい」という右脳の奴隷と化した小さな生き物しかいません。
そしてその生き物が、理屈で動く大人の手を引いていました。
「工場夜景」を地元の人間の観光地にするには、地元の大人を狙っても仕方がなくて、理屈を飛び越えてくる“子供”に「工場夜景」を好きになってもらう努力が必要で、地元の子供達に絵本か映画を提案して、その彼らに、お父さんお母さんの手を引っ張ってもらった方がいいだろうなぁと思いました。
これは僕の地元に作る美術館でも同じことを考えていて、「地元の人をキチンとお客さんにする」を戦略の基本に置いています。
『観光』というと、どうしても外に目がいってしまいますが、地元の人が外に落としているお金を地元に落としてくれたら、地元の人が助かるわけですから、
「別府に住んでいる人が、どうすれば別府温泉に行くか?」
といった角度の問いが「工場夜景」をはじめ、各地域で求められているのだと思います。
この問題は、まだまだ掘り甲斐がありそうなので、グイグイ突っ込んでいって、「こんな方法がありましたよ」と皆さんに共有していきたいと思います。
━━━━━━
▼ さいごに
━━━━━━
日本製鉄呉地区の製鉄所が2年半後に全面閉鎖されるそうです。
取り壊しに莫大な費用がかかるだろうから、取り壊す前に3ヶ月ぐらい貸してくれねーかなぁと思っています。
製鉄所をライトアップして『光るえんとつ町展』をしたら、観光スポットとして、ちょっとは日本製鉄さんと地元に貢献できそうです。
そんなこんなで、工場の観光資源化に強い興味を抱いている西野でした。
もて余している工場があれば取り壊す前に教えてください。
現場からは以上でーす。
 
▼オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』入会はこちら ↓↓↓