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西野亮廣エンタメ研究所の過去記事を中心にアップしてます

2021年04月09日のエンタメ研究所の過去記事

4月9日(金) ※4月11日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
富士山になんて負けたくなくて、ジーパンとコンバースと革ジャン(コンビニに行く服装)で富士山を登りきったキングコング西野です。 
さて。
今日は『えんとつ町のプペルとは何か?』という超どストレートな内容をお届けしたいと思います。
VRとか、ミュージカルとか、カフェとかやってるけど、結局、何がしたいの?」という問いに対するアンサーです。
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▼ 山上に城を建てるな
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「お城」は時代によって〝建てられる場所〟が違ってきます。
「攻められにくくて守りやすい場所に建てる」が築城のセオリーで、もともとは傾斜が急な山の上に建てられていました(※山登りで足がヘロヘロになった状態で城を攻めるのってイヤだよね)。
しかし、弓矢の倍以上の射程を持つ「鉄砲」という鬼兵器が登場すると、そうはいきません。
遠い場所からバコスコ撃ち込まれてしまうので、それを防ぐ為の「広い幅の堀」が必要になってきます。
ところが傾斜が急な山の上にはそんなスペースなどありません。
仕方がないので、「お城」を建てる場所は「広い幅の堀」が確保できる平野へと降りていくこととなりました。
鉄砲のおかげで、山上のお城は「お城」としての役割を失ってしまったわけですね。
このようなことは今でも普通にあります。
「いや、今となってはもう、それは『城』の役割を果たしてねーよ」という。
あまり議論されていませんが、YouTubeという鬼兵器の登場で、タレントの一つのゴールであった「テレビ番組のMC」という城が揺らいでいます。
テレビ番組のMCは、番組を運営していく上で、ゲストを立てる「死に役(フリ役)」を引き受けることが少なくありません。
一部例外はありますが、「ヤンチャ(点取り屋)」ポジションが許されるのは30代までで、年齢を重ねれば重ねるほど教養が求められ、安心感が求められ、2〜3歩下がることが求められます。
御意見になることが求められます。
こうなると、よっぽど上手くやらない限り「テレビには出ているけどファンがつかない」に向かってしまいます。
そんな中……
江頭2:50さんや、
カジサックや、
オリラジ中田君がYouTubeでファンを獲得し、
とんねるず石橋貴明さんが人気を博し、
胸を張って「私が面白いと思っているのはコレです!」をバコスコと撃ち込みます。
それを見た一部の「テレビ番組のMC」さんの中には、「このままファンを獲得しない活動(時間)を続けてもいいのだろうか?」という葛藤が芽生えはじめていて、「YouTubeに乗り移るか、それともテレビと心中していくか?」の選択に迫られています。
20〜30代のタレントは「そりゃ、YouTubeもやるでしょ」と迷わず舵を切れますし、
60代以上のタレントは「このままテレビと…」と舵を強く握れますが、
自分の余命よりもテレビの余命の方が短いような気がしてならない「間の世代」は判断が難しいところです。
いずれにしても、「テレビ番組のMC」という城が絶対的なものではなくなっているのは確かです。
「山上に城を建てちゃったけど、最近、『鉄砲』がアツイらしいよ。え、どうする?」です。
ひるがえって、これから城を建てに行く人間(サービス提供者)に求められるのは、「まもなく城の役割を失ってしまうような場所に築城しない」という判断だと僕は考えています。
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えんとつ町のプペルとは何か?
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僕は作品を発表して、その作品を2次展開、3次展開することで飯を食っている人間なのですが……たとえば、少年ジャンプが毎週600万部〜650万部を売り上げていた全盛期(1995年あたり)に連載していた
幽遊白書』や、
などを見てみると、それらの作品の2次展開、3次展開は、現状、あまり盛んにはおこなわれていません。
おそらく、当時は「関連グッズ」などが山ほど出でいたと思うのですが、今はあまり目にはしません。
作品は、サービス(2次展開、3次展開)に落としこむことで、その寿命を延ばすことができますが、落とし込んだ先のサービスが「とって代わられるもの」であれば、すなわち山上に城を建てるようなもので、まもなく終わりがきます。
幽遊白書エコバック』や『ろくでなしBLUESカレー』は、次の時代の人気作品のエコバックやカレーに押し出されてしまい、本当の意味での、作品の延命には繋がらないんですね。
作品の延命を狙うのであれば「とって代わられないサービス」に落としこむことが大切で、少し複雑な表現になりますが、『とって代わられないサービスに落とし込めない作品』は未来に残していくことが極めて難しいです。
作品がどれだけヒットしたところで、人が入れ替わったら(時代が変わったら)忘れられてしまうので。
さて。
キングコングがお仕事を始めてから、早20年。
これまで様々な城を攻めてきました。
デビュー間もなくの頃は、「賞レース」です。(※一年で関西の賞レースを総ナメしたよ)
その後はテレビ、
その次に絵本、
その次に広告、
その次にオンラインサロンで、
その次に映画………
当然、攻め落とせなかった城もありますが、比較的、戦績は良い方だと思います。
知っている人は知っていると思いますが、西野家や「戦オタク一家」で、僕自身、『スーパーマリオ』の次にやったファミコンソフトが『三国志』です。小学校2年の頃です。
家には、オセロや将棋や囲碁があって、「この城はどう攻めればいいのか?」を子供の頃から繰り返しやってきました。
ちなみに僕の名前の由来は『諸葛〝亮〟孔明』です。
子供の頃から城を落とすのが趣味で、そのまま今に至るわけですが、立派なオッサンになった今も、なかなか落とせない城があります。
それが、「条件の良い土地」です。
アトリエに籠って、どれだけ策を練ろうが、「条件の良い土地」だけは、一筋縄にはいきません。
そこには「運」や「人間の感情」が絡んでくるからです。
「コロナ禍で地方に人が流れる」なんてのは幻想で、人口減少によって土地が余る(空き家が増える)のは田舎の問題であり、条件の良い土地は一ミリも余っていません。
人口が減り続ける(仕事が少ない)地域に住むメリットなんて〝ほぼ〟無いので、人口の一極集中はコロナなんてお構いなしに加速するでしょう。
土地は、手放してもらえないと手に入れることはできませんが、人が集まる場所に土地を持っている人間がわざわざ土地を手放す理由なんて一つもないので、ここを攻め落とすのはどうにもこうにも難しい。
条件の良い土地は「山上の城」ではないのです。
しかし(僕がサロンでよく言っていることですが)、僕が「落としにくい」ということは、裏を返すと「落とされにくい」わけで、「そこさえ取ってしまえば、長く続くよね…」と黒西野は考えます。
そこで、簡単にはとって代わられない「土地」が絡むサービスに落とし込む作品としての『えんとつ町のプペル』です。
最近、「『えんとつ町のプペル』はいろんなサービスに展開していますが、一体、『えんとつ町のプペル』って何なんですか?」と訊かれたら、「不動産業です」と答えています。
もちろん、ドン引きされています。
「どの作品でも不動産業化ができるか?」というと、そんなことはありません。
たとえば『アンパンマンの世界観のアパート』や、『ドラゴンボールCAFE』は厳しいと思います。
作品の人気が「キャラクター」に紐づいているから、室内や店内に「キャラクター」を施さないといけないけれど、それをやってしまうと排除の力(ファン以外は入れない)が発生する。
建物の素材や色味といった「背景」にファンを付けていないと、「作品の不動産業化」は難しくて、『えんとつ町のプペル』は、そこに挑んでいます。
(※次回作の『みにくいマルコ ~えんとつ町に咲いた花~』も)
「不動産業です」と言うと、作品に対する愛が無いように見えるのか、ドン引きされてしまうのですが、そこに落としこまないと僕は30年後、50年後、100年後のCHIMNEY TOWNのスタッフや、そのご家族の生活を守れないので、胸を張って不動産業を進めます。
えんとつ町のプペル』の世界観のアパートを作って、その不動産収入が、僕が死んでいなくなった後のCHIMNEYTOWNの新作の制作費に回されると最高だなぁと思っています。
最後に…
昨日の記事で書かせてもらった「壁紙」のイラスト(ルビッチの鉛筆画)は、サロンメンバーの望月さんが描いてくださったものです。
CHIMNEYTOWNでキチンと壁紙データを販売して、売り上げを作って、また望月さんにお仕事として別パターンのイラストを依頼して……といった流れで、生活パターンの一つに『えんとつ町のプペル』を織り込んで、望月さんのような才能あるクリエイターの支援も続けていきたいです。
現場からは以上で〜す。
【追伸】
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