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2021年05月14日のエンタメ研究所の過去記事

5月14日(金) ※5月16日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
エアロバイク×YouTubeの生配信にハマってしまった結果、お尻が腫れ上がってしまったキングコング西野です。
さて。
今日はミュージカル『えんとつ町のプペル』のビジュアルデザインについてお話ししたいと思います。
皆さんの活動には直接は関係ないかもしれませんが、「考え方」だけでも参考にしていただけると嬉しいです。
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▼ 結果的に、もっとも宣伝されるモノ
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ある時、ミュージカル『えんとつ町のプペル』のホームページやポスターデザインを進めていたプロデューサー陣に「待った」をかけ、「ミュージカル用のキャラクターを一つ作った方がいいですよ」と伝えて、イラストレーターの「マツボックリンさん」を紹介しました。
「彼に“ミュージカル用の”のプペルとルビッチをデザインしてもらうといいかも」と。
ホームページやポスターといった「宣伝に使われるメインのビジュアル」(※『映画 えんとつ町のプペル』なら煙突の上に座っているプペルとルビッチ)のことを『キービジュアル』と呼びます。
今日は、このキービュアルについてのお話なのですが、これはミュージカルに限った話ではなくて、すべてのサービス提供者が忘れちゃいけないのは…
「最も宣伝に使用される『キービジュアル』が、最も宣伝される」
ということ。
さらに踏み込んだ言い方をすると…
「『キービジュアル』の認知に、最も宣伝費がかけられる」
ということ。
この話を深掘りする際、「宣伝されているモノ」と「宣伝をしてくれているモノ(人・キャラクター・デジザイン)」を区別して考えなければなりません。
具体例をあげると…
【宣伝されているモノ】=ハズキルーペ
【宣伝してくれているモノ】=渡辺謙さん、菊川怜さん
…みたいな感じです。
ハズキルーペを売る為に、渡辺謙さんや菊川怜さんに高額なギャランティーをお支払いして、お金をかけて、渡辺謙さんや菊川怜さんの映像を作り、
お金をかけて、渡辺謙さんや菊川怜さんのポスターやチラシなどを刷り、
それらを、
お金をかけて全国にバラ撒いています。
ハズキカンパニー(ハズキルーペを提供している会社)は、「渡辺謙さんや菊川怜さんの影響力をお借りして商品を売っている」とも言えますが、それが結果的に、「渡辺謙さんや菊川怜さんの認知度の獲得にお金を支払っている」ということにも繋がっています。
なんとなく分かりますよね?
この時の問題は、「ハズキルーペさんの予算で獲得した影響力(認知度)で獲得した渡辺謙さん&菊川怜さんの次の仕事」の権利は、渡辺謙さん&菊川怜さんの事務所が持っている………ということ。
ハズキルーペのC Mで菊川怜さんの活動を知った講演会の主催者が、菊川怜さんに講演のオファーを出す際は、ハズキカンパニー株式会社ではなくて、菊川怜さんの事務所に電話することになります。
当然、講演料は菊川怜さんの事務所に支払われます。
でも、その仕事って、元を辿れば、ハズキカンパニー株式会社がかけた予算によって生まれています。
渡辺謙さんや菊川怜さんがこれまでに築いてきた信用をお借りしているのだから、そりゃそうなんですが……なんか、ちょっと勿体無い気がしません?
だって、渡部謙さんや菊川怜さんの認知の獲得にお金を出したのはハズキカンパニー株式会社なんだもん。
ここで押さえておくポイントをおさらいすると、「最も宣伝に使用される『キービジュアル』に、最も宣伝費がかけられる」ということ。
ハズキルーペのC Mでいうとことのキービジュアルは、渡辺謙さんと菊川怜さんです。
この話を舞台に落とし込んで考えてみましょう。
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▼ キービジュアルにタレントを使う
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映画や舞台をする際にはポスター(フライヤー)を作りますが、ここには劇中の衣装を着たタレントの写真が使用されることが少なくありません。
当然、そのタレントの影響力をお借りして、集客に繋げるのが目的です。
舞台の制作サイドは、「タレントの写真が使用されたポスター」をたくさん刷って、一人でも多くの人に届ける為に、予算をかけます。
そうして、そのポスター(キービジュアル)は、まもなく皆さんの知るところとなるわけですが……どっこい、皆が知っているキービジュアルを2次展開(グッズ化)しようとした際に、ブレーキがかかってしまいます。
そこに、事務所所属のタレントの顔が入っているからです。
当然、事務所は「ウチのタレントの顔が入ったグッズを作るなら、別途で料金を支払っていただきます」となります。
仕方がないので、タレントの顔写真が入っていないキービジュアル以外のビジュアルを使用したグッズを作ることになるわけですが…………残念ながら「キービジュアル以外のビジュアル」の認知はそれほど高くないので、そいつを使用したグッズの売り上げは伸び悩みます。
エグい話になりますが、グッズの売り上げと作品のクオリティーは比例関係にあります。
グッズで5000万円売り上げれば、とんもない舞台セットが組めるので。
ミュージカル『えんとつ町のプペル』は世界を獲ることを前提にやっているわけだから、「クオリティー」を最優先するのは当然の話で、そこから逆算すると……
グッズが売れた方が良いわけで、
グッズに使用されるビジュアルの認知は高い方が良いわけで、
キービジュアルが使用できた方が良いわけだから………
「キービジュアルにタレントを使うのはやめましょう」
というのがミュージカル『えんとつ町のプペル』の結論です。
タレントを使わない分、チケット販売の難易度は上がりますが、そこはスパッと切り捨てる。
プロデューサー陣には、「ミュージカル『えんとつ町のプペル』版のプペルをルビッチを作って、それをキービジュアルに使って、キービジュアルをキチンと売って、キービュジュアルから派生したグッズを売りましょう」と伝えました。
ミュージカル『えんとつ町のプペル』は世界観最優先で「東京キネマ倶楽部」という、あまり大きくない劇場を使用します。
チケット代もなるべく下げる方向で話を進めていて、ザックリ算出したところ、チケットの総売り上げは「2700万円」だそうです。
もちろん2700万円内でやりくりするつもりなど毛頭なく、誰が何と言おうと「面白い」が最優先事項です。
そんなこんなで先日、プロデューサーが舞台の製作費を計算したところ、現時点(※ここから確実に増える)で、「1億2000万円」だそうです(笑)。
望むところです。
ミュージカル『えんとつ町のプペル』完成までの七転八倒劇を是非見届けてください。
5月17日には美術会議の生配信があります。
今回の舞台美術は『映画 えんとつ町のプペル』の美術設定を担当してくださった佐藤央一さん。
SEKAI NO OWARIのステージ美術なども作られている方です。
お時間あれば、是非。
今日は「キービジュアル」についての考えを共有させていただきました。
現場からは以上で〜す。
 
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