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2021年05月23日のエンタメ研究所の過去記事

5月23日(日) ※5月25日以降に『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
今日は日曜日なので、お仕事の話をお休みして、ダラダラとした日記を書いてみます。
お時間がある時にでも読んでください。
そんな大切なことを書いていないので、読まなくても大丈夫です。
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▼ 友達と笑う
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ご報告に沸いた一週間でした。
『映画 えんとつ町のプペル』が「ロッテルダム国際映画祭」のクロージング作品に選ばれて、世界最大のアニメーション映画祭「アヌシー国際アニメーション映画祭」にノミネート。
15年ほど前。
日本中から嫌われた男が部屋で一人、わずか0.03ミリの黒のボールペン1本で描き始めた物語が、世界最高峰の舞台に飛び出していって、王手をかけている……ドラマにしちゃあ出来過ぎた展開で、とても臭くて見ていられませんが、現実です。
たくさんの方からお祝いの言葉をいただいて、その中には吉本興業の社員さんや、元マネージャーもいました。
僕は今年の2月に吉本興業を退所したわけだけれど、今回のように胸が踊るようなニュース(新しいお仕事)がある度に、「一緒に走ることができなかったのかなぁ」と思います。
思い出すのは高校時代。
12月に入ると毎日僕の家に友達が集まって、とある会議がおこなわれていました。
2月期の終業式が12月25日だったので、連中は「12月24日の夜中に学校に忍び込み、クリスマスツリーを立てよう」と良からぬことを企てます。
Aチームは学校の裏山の木を切って、運動場の真ん中までエッサホイサと運び、
Bチームはダンプカーのタイヤを積んで、その中に土を詰め込み、
Cチームは「見張り」と「逃走ルート」の確保。
「クリスマスツリーは運動場の真ん中に立てよう。そこが一番安全だよ。作業中に警察が来ても、死角がないから、警察が近づいてくるのが分かる。警察よりも、僕らの方が足が速いから逃げられるよ」
と、実に西野らしい計画です。
ツリーを立てた翌日(クリスマス当日)、全校生徒が運動場を見て、ザワザワと騒いでいます。
ツリーと並んで、記念写真を撮る生徒もいました。
終業式のステージ上では教頭先生が「昨日、学校に忍びこんで、ツリーを立てた者がいます。これは立派な犯罪です。本校の生徒でないことを願います」と言っていて、それを聞いて僕らはニヤニヤ。
ちなみに終業式終了後、体育館を出たところの廊下で、仲の良い先生に呼び止められて「西野。あのツリー、片付けとけよ」と言われました。
結局、僕の目的は子供の頃から何も変わらなくて……
友達と一緒に計画を立てて、
実行して、
皆が楽しそうにしているところを見て、
「俺たち、やったね」とニヤニヤしたいだけ。
「世界を獲る」と言って、ボールペン1本で始めた計画の「過程」と「興奮」と「結果」と「感動」のイチイチを共有できないのはやっぱり寂しくて………それだと何の為にやっているか分からない。
出世したくて頑張っているわけじゃないので。
これは退所後のワイドショーでも散々お話ししましたが………吉本興業は半年〜1年おきに担当マネージャーが変わります。
そのルールで回っている会社を選んでいるのは僕なのだから、言えることはひとつもないのですが、
やっぱりモノづくりをする中で、伴走者がコロコロと変わってしまうのは痛い。  
とくに、『映画 えんとつ町のプペル』の公開数ヶ月前にマネージャーが変わってしまったのは、精神的に大きなダメージをくらいました。
友達と集まって僕の家でツリーを立てる計画をして、だけど計画実行の当日には友達が現場にいなくて、かわりに業者の人が現場に現れて………みたいな感じです。
それで立派なツリーが立ったところで、僕は嬉しくとも何ともありません。
僕の目的は「ツリーを立てること」じゃなくて、
「ツリーを立てる」という口実で、友達との時間を過ごすことだからです。
映画公開前にマネージャーがかわった時に、「ああ、もうココにはいられないなぁ」と思い、退所を考えるようになりました。
吉本興業が嫌いになった」とかそういった話ではなく、「目的が違うんだろうなぁ」という判断です。
最後に就いたマネージャーには申し訳ないことをしました。
そして、可哀想な立場だったなぁと思います。
「8年間の集大成が今まさに世に出る」というタイミングで現場に放り込まれて、
スタッフが築きあげてきた歴史も、関係性も、スピード間も、映画のことも、アニメーションのことも、広告のことも何も分からない。
まだ1〜2年目の社員です。
手も足も出なくて当然で、西野は西野で「なんで、このタイミングで何も分からないスタッフをつける!?なんで、このタイミングで新人研修をしなきゃいけないんだ!本番は明日だぞ!」と、どこかで思っている。
この西野の苛立ちは実に理不尽です。
さっきも言ったように、吉本興業は最初から「こういうルールですよ」と明言しています。
テレビに憧れて、吉本興業に入っておきながら、途中で舵を切って、モノ作りの世界戦を始めたのは僕なんです。
Twitterを利用しておいて、ある日、突然「なんで140文字までしか書けないんだ!」と叫び出すようなもので、プラットフォーム側からすると「…いやいや、最初から、そういうルールだし、お前もそのルールを知った上で利用してたじゃん」です。
理屈はそうなのですが……でも、感情が追いつかない。
ツリーを立てる当日に友達を入れ替えられてしまうような…もう、そんなツラい思いはしたくなくて事務所を退所しました。
ここで、話は最初に戻ります。
退所して数ヶ月が経った今でも、「一緒に走ることはできなかったのかなぁ」と思います。
今回のような大きなニュースがあった時などは、特に。
「このニュースを一緒にわかち合うことができれば、どれだけ楽しかっただろう?」と。
自分から辞めておいて勝手な話ですが。。
今はまだ言えませんが、実は、映画祭よりも大きな大きなニュースが後に控えています。
発表できるのは来年になると思います。
目的が違えば勿論のこと、
大人になると「走るスピード」が違っても一緒にいられなくなります。
自分がスピードを上げれば上げるほど、お別れしたくないのにお別れしなきゃいけない人が生まれます。
お別れしておいて、面白い場所に辿りつけなかったら、
あの日お別れたことがやりきれないので、今僕がやることは一つです。
誰よりも速いスピードで駆け抜けて、ちゃんと辿り着く。
じゃなきゃ、やりきれない。
いつか、いろんなことが片付いて、お互いお爺ちゃんになった時に、「目的地」や「走るスピード」を全部忘れて、笑いながら、また一緒に呑めたら嬉しいです。
最後に宣伝みたいになっちゃうのですが……
もし良かったら、今月末に発売される『みにくいマルコ ~えんとつ町に咲いた花~』を読んでください。
ラブストーリーのような建て付けになっていますが、それは表向きの顔です。
本当は、僕の友達や一緒に走ってくれたスタッフに向けたメッセージです。
今日も頑張ります。
素敵な日曜日をお過ごしください。
 
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