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2021年05月27日のエンタメ研究所の過去記事

5月27日(木)※5月29日以降は『いいね』を押さないでください。
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ソーシャルディスタンスが叫ばれている東京五輪の選手村にコンドームが15万個配布されるニュースを見て、おもわす吹き出してしまったキングコング西野です。
さて。
今日は『考えるな。自惚れるな。人類の答えを侮るな。検索しろ』というテーマでお話ししたいと思います。
なんとなく、昨日の話の続きだったりします。
※なので昨日の記事を読まれていない方は、先にそちらを
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▼ 「集客」について考える
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昨日、公開したドライブ・イン・シアターのM Vはご覧になられましたでしょうか?
※動画はコチラ→https://youtu.be/nXDlt1GDqkk
「『ドライブ・イン・シアター』という言葉は聞いたことはあるけど、わざわざ足を運ぶほどではない」という考えが一般的だと思うのですが、あの映像を観た後は、「近所にドライブ・イン・シアターが来たら、ちょっと行ってみようかな…」となりません?
実際、動画の概要欄に貼っていたドライブインシアターのチケットは、動画公開後に完売しました。
「終わってしまった文化」であろうと、「人を集めた過去を持っているコンテンツ」は、そもそも集客力が備わっています。
あとは時代との相談。
ここがベチャクチャ繊細なラインなのですが、「集客力がある/集客力がない」と、「集客できる/集客できない」は分けて考えた方がいいと思っています。
一見、矛盾しているようですが、たぶん矛盾していなくて……「季節」に置き換えてみるとイメージしやすいかもしれません。
たとえば「スキー場」というコンテンツは、夏には集客できませんが、「集客力」はあるわけじゃないですか?
「スキー場=集客力がない」という結論を出すタイミングって、“冬に集客できなくなった瞬間”ですよね。
あの感じで、時代も季節のように巡り巡っていて、「個人で楽しみたい時代」もあれば、個人で楽しめるコンテンツが溢れかえると(=コモディティー化すると)、今度は「皆で楽しみたい時代」が来ます。
逆もまた然り。
当然、中には「本当に終わってしまった」コンテンツもあるわけですが、「『ドライブ・イン・シアター』は終わってしまった」と結論してしまうのは時期尚早で、「時代に合わなかった時間帯があった」という可能性が残っています。
事実、新型コロナウイルスの影響で集客系のイベントが軒並み中止している中、非接触型エンタメの『ドライブ・イン・シアター』は、こうしてC Mを打てるほど「是非、来てくださ〜い」と大声で言えちゃうわけで……これは「時代の針がピタリと合った」という結果です。
ただ、
時代が非接触型エンタメを求めようが、『ドライブ・イン・シアター』に「集客力」が備わっていなければ、これまた上手くいかないわけで…コンテンツの「集客」というのは、
「集客力がある/そもそも集客力がない」
「今は集客できる/今は集客できない」
といった感じで、時代と照らし合わせながら、複合的に判断すべきだと思います。
そんなこんなで、ここからが本題です。
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▼ 人類の共創を侮るな
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歴史上、「祭り」というのは、「五穀豊穣」(食物が豊かに実ること)や「子孫繁栄」を願って立ち上がっていたりします。
現代だと「祭り」はイベントっぽいノリになっちゃってますが、その当時は村(コミュニティー)を存続させる為に、五穀豊穣や子孫繁栄が死活問題だったんですね。
祭りは、生きていく上で必要なものだったんです。
子孫繁栄というと、「子宝に恵まれるか否か?」のイメージがありますが、そもそも夫婦が誕生しないと子宝に恵まれません。
よって、
村を存続させる為には、男女が出会い、恋仲になる機会が絶対に絶対に絶対に必要で……当時の「祭り」というのは、今でいうところの「街コン」的な役割も果たしていたそうです。
「祭りのお面」も現代だと、「お面を付けたら楽しいからお面をつける!」といったコスプレのノリになっちゃっていますが、当時は、「立場(表向きの顔)を隠して祭りに参加できる」という匿名アカウント的な仕事をしてくれていて、それによって祭りに参加しやすくなったわけで……「祭りのお面」というのはキチンと“機能面で”役に立っていたんです。
提灯、お面、花火…といったアレやコレは、どこかの一人のアイデアマンやデザイナーの思いつきなどではなく、「これをやったら、人が集まるよね」「もっと、こうした方が人が集まるよね」「そこに、これを足したら、恋仲に落ちやすくなるよね」………といった感じで、“機能面でのアップデートを繰り返した賜物”なんです。
「着物」もそう。
「ズングリムックリ体型をカッコ良く(美しく)見せる為には…」と言う改善が何万回も繰り返されて、あの形に辿り着いています。
「タキシード」も同じく。
「楽器」もそう。
集客する為には、「音質」以外に、“演奏者(演奏している時のフォルム)がカッコ良く見える必要があって”…その為に楽器のデザインは何度も何度も改善されて、今の形に辿り着いています。
これらは人類の共創であり、叡知の結晶であって、繰り返し言っちゃいますが、一人の人間の仕事じゃないんです。
そういったコンテンツが世の中にはたくさんあります。
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▼ …ところがどうだ?
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ところが、自分でプロジェクトを立ち上げるとなると、自分一人でゼロから世界観を構築してしまう人が少なくありません。
ベチャクチャ汚い言葉をあえて使わせていただくと、「お前一人で導き出したモノが、人類の結論に勝てるわけねーだろ」です。
おそらく多くの人が「アイデア」や「世界観」を安く見積もっていて、「偶発的に出せるもの」だと勘違いしている。
それが、どれだけ間違った考えなのか?
ますは、そこを知るところから初めた方がいいと思っています。
たとえば…
“これまで運動などしたことなどない、毎日ビールを飲んでいるビール腹の親父”が、ある時突然、「明日、N B Aのトライアウト(入団テスト)を受けてみるわ」と言い出したら、どう思います? …100%落ちますよね。
そこにはテストに受かる確率など0.00001%もない。
“これまで運動などしたことなどない、毎日ビールを飲んでいるビール腹の親父”が「脱サラして、来週の東京国際マラソンに人生を賭けてみるわ」と言い出したら、全力で止めますよね?
「そこは『根性』で到達できるラインじゃない」ということは、さすがに皆、分かります。
「アイデア」や「世界観」もこれと全く同じで、訓練が必要で、知識が必要なんです。
仕上げきる筋肉が必要なんです。
「素敵な空間」なんて、「○色と○色を合わせたら、△△になる」「ここの素材を○○にして、天井の高さを○○㎝にすれば、□□になる」といった調子の【数百ページにおよぶ計算式】なのだから、知識も経験もないズブ素人が「思いつく」ものじゃないんです。
だから、「デザイナー」という仕事があるんです。
ここでようやく話が(冒頭と)繋がるのですが……そういった答えは、すでに先人(人類)が出してくれているんです。
たとえば『えんとつ町』は西野亮廣が一人で作った世界ではありません。
あれは、「スチームパンク」と「工場萌え」と「提灯萌え」の合わせ技です。
すでに集客力を持っているコンテンツを、イイ塩梅で混ぜ合わせたんです。
僕個人の想像力なんてたかが知れているので、“人類が「エモい」という結論を出したコンテンツ”にあやかったわけですね。
ディズニーにしてもそうです。
たとえば『塔の上のラプンツェル』では、タイのコムローイ祭り(ランタンを大量に飛ばす祭り)にあやかって、感動を作ったわけじゃないですか?
ディズニーの主な仕事は、“人類が「エモい」という結論を出したコンテンツ”のキュレーション(選ぶ仕事)であって、「ゼロ→1」のクリエイティブなんて一つもやっていません。
シンデレラ城は「ノイシュヴァンシュタイン城」だし、
ディズニー・シーは「フィレンツェ」や「ベネチア」や「ポルトフィーノ」です。
彼らは「世界には、こんなに素晴らしいものがあるよ」という紹介人であり、その根底にあるのは人類讃歌です。
僕は、週に2度ほど、企業さんの相談にのっているのですが(※ニシノコンサル)、ここのところ2件続けて、「集客する空間づくり」についての相談がありました。
自分の中から湧き出てきた世界観を再現しようとしていた彼らに言ったのは、次のとおり。
「考える前に、検索してください。世界にはまだ“人類が『エモい』という結論を出したコンテンツ(集客できるコンテンツ)”が残っています。それらは個人では到底辿り着けない答えです。そこに、あやかってください」
一人の方は、キャンプ場を運営しようとしていたので、ベトナムの「ホイアン」の提灯を、キャンプ場のアイコンにすることをオススメしました。
森の価値の一つに「夜の闇」があって、その闇を何で照らすか?という大喜利です。
「森×ガーランド(三角旗)×吊り電球」はすでに皆のものになっているので、「森×ホイアンの提灯」の©️をとればいい。
あれだけの集客力を誇る「ホイアンの提灯」を上手く転用できている場所は国内にはまだ無くて、ここは早い者勝ちの世界だと思います。
今日は、「そんなに集客したいのならば、自分の脳ミソから答えを出そうとするのではなく、世界を検索して、“人類が『エモい』という結論を出したコンテンツ”を引っ張ってきた方がいいよ」というお話しでございました。
お店や、イベントなど、これから空間を作る方の参考になると嬉しいです。
現場からは以上でーす。
 
 
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