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西野亮廣エンタメ研究所の過去記事を中心にアップしてます

2021年06月04日のエンタメ研究所の過去記事

6月4日(金) ※6月6日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
現在、“次々々々作の絵本”を作っているキングコング西野こと「いいから、一旦、落ち着けよ!」です。
さて。
今日は『世界戦の作法』というテーマでお話ししたいと思います。
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▼ CHIMNEY TOWNは、どうして世界を狙うの?
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先日の取材で「西野さんは、どうして世界を相手にするのですか?」という質問がありました。
僕が世界を相手取る本当の理由は、「だって、ディズニーを超えないと、女の子を連れてディズニーランドに行った時に、ウォルト・ディズニーに嫉妬しちゃうじゃん」なのですが……まさか、そんな恥ずかしいことは言えません。
なので、他の(それっぽい)理由を探してみたのですが、「まぁ、世界を相手取らないと、そもそもエンタメを続けられないよなぁ」という結論に至りました。
べつだん、斬新な切り口でもありません。
たとえば日本のテレビは放送法(※総務省から地上波放送局の免許を取得しないとチャンネル数は増やせないよ。ここはゴリゴリの利権だから、免許なんて取得できないよ)によって守られています。
これは日本の作り手にとっては、とても都合がイイことでした。
ところが!!
少し前までの日本人にとっては「家にあるテレビ=日本のテレビ番組を観るもの」だったのですが……どっこい、今、テレビをつけると「ディズニープラス」「Amazonプライム」「Netflix」「youtube」「日本の地上波の番組」…といった感じで、カテゴリー分けされています。
総務省が「日本のチャンネル数は増やさない!」とどれだけ頑張ったところで、
結果的に、チャンネル数は増えちゃっています。
事実、『愛の不時着』や『梨泰院クラス』が観られている時間は、日本のT Vドラマは確実に観られていません。
作り手本人が国内にターゲットを絞ったところで、自分の作品(商品)は、世界戦の棚に並べられているのが現状です。
少し踏み込んだ話をすると、地上戦(※実店舗など)であれば、「コミュニティー」というガードで外資をブロックできるのですが、
空中戦(ネット系)になってくると、外資を競合から外すことは不可能です。
「どうして世界を相手にするんですか?」も何も、「『世界を相手にしない』という選択肢がない」といったところです。
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▼ 小さな劇場を選んだ理由
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今朝、ミュージカル『えんとつ町のプペル』の情報が解禁されました。
このプロジェクトは、(株)CHIMNEY TOWNのセトちゃんがプロデューサーを務めているのですが、たしか彼は入社1〜2年目。
キャスティングから、外堀の調整(ニュースリリースなど)までやって、なんともたくましい若手です。
公式ホームページが立ち上がったので、後で、詳しく見ていただきたいのですが……キャスト&スタッフは、業界人やミュージカルファンならば全員がひっくり返るが集まっています。
「よくもまぁ、参加してくださったなぁ…」という才能がズラリ。
【公式ホームページ】→https://poupelle-musical.com/
映画チームからは、僕と、美術の佐藤さんと、デザイナーのかんかんサン、そして……
「スコップ役」としてオリラジ藤森君が参加しています。
映画をご覧になられた方はステージ上のスコップを見て、「本物のスコップだぁ〜」という謎の感情を抱くことでしょう。
この作品は、もともとはオフオフ・ブロードウェイで初演を迎える予定だったのですが(劇場もおさえていた)、まさかまさかのコロナちゃんに襲われます。
ブロードウェイが街ごと閉じてしまったので、ブロードウェイ公演は延期。
クヨクヨしたって仕方がないので「先に、日本公演をやろう」と舵を切り、今に至るわけですが………ありがたいことに海外ではコロナが落ち着いてきているので、日本公演が終われば、海外に持っていきます。
つまり、まもなくミュージカル『えんとつ町のプペル』も世界戦の棚に並べられるわけで、そこで勝ち抜かねばなりません。
その際、無視できないのが「予算」の問題です。
現在、国内の多くの作品が「美術セット代が用意できないから、背景はプロジェクションマッピングで乗り切る」という打ち手を選んでいます。
しかし、毎年、ブロードウェイに通っている舞台オタクから言わせると、あの並び(名だたるブロードウェイ作品)の中に、「プロジェクションマッピングで背景の問題(美術セット)を片付けてしまっている作品」は、かなり分が悪い。
せっかくブロードウェイで舞台を観るのなら、「ツカミ」が欲しいんです。
会場に入った瞬間に目に飛び込んでくる美術セットにハートを鷲掴みにされたいんです。
「美術セットはプロジェクション・マッピングです」と言われると、かなりガッカリしちゃいます。
そんなことは舞台人なら全員分かっているんだけど、「国内のチケット代の売り上げだけで作品を作る」となると、第一希望である「豪華な美術セット」が叶わない。
なので、皆、苦肉の策としての「プロジェクション・マッピング」を選びます。
ただ、それでは世界とは戦えない。
結論、世界戦にうって出るには「世界戦で勝ち抜けるビジネスモデル」を構築するところから始めなければいけません。
隠したって仕方がないので、正直に白状すると「キャッシュポイント(お金を生む装置)の創造」です。
この問題と真正面から向き合うことこそが世界戦のドレスコードです。
そんなこんなで、プロデューサーから、「日本公演はスケジュール的に【大きな劇場】と【小さな劇場(東京キネマ倶楽部)】がとれそうですが……どっちでやりますか?」と訊かれた時に、迷わず「小さな劇場で」と答えました。
小さな劇場を選んだ時点で、誰がどう見ても、チケット代だけでは製作費が回収できないからです。
“キャッシュポイントを創造せざるをえないから―です。
大きな劇場だと(ちょっと頑張れば)チケットの売り上げで回収できちゃいます。
だけど、それでは世界は獲れない。
もっともっと根本の問題から問わないと、世界は獲れない。
ブロードウェイが逆立ちしても、シルクドゥ・ソレイユが逆立ちしても、再現することができない圧倒的な作品を生み出す基盤となるビジネスモデルを創造しない限り、面白い未来は待っていません。
そんな中、「制作過程を販売できる権利を持っている(オリジナル作品を持っている)」というのは圧倒的なアドバンテージです。
ここが、巨人の急所です。
ミュージカル『えんとつ町のプペル』は「台本」の他に、「ポスター(壁紙)データ」も販売するそうです。
こんなことができるのも、オリジナル作品ならでは。
ポスターデータの値段は「300円」ですが、データなので(※ほとんど原価がかからないので)侮れません。
ウン億円の製作費や、エンタメの勢力図を一変させるビジネスモデルは、こういった小さな革命の積み重ねにあります。
ミュージカル『えんとつ町のプペル』が産声をあげ、世界戦にうって出るこの時間は、もう二度とやってこないので、どうか見届けていただけると嬉しいです。
もし、近くにチビッ子がいれば、「キチンと勉強して、キチンと努力をすれば、こんなこともできるんだよ」と伝えてあげてください。
現場からは以上で〜す。
 
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