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西野亮廣エンタメ研究所の過去記事を中心にアップしてます

2021年06月07日のエンタメ研究所の過去記事

6月7日(月) ※6月9日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
自由を奪われた時の喩えとして「まるで鳥カゴに閉じ込められた鳥のよう」という表現がありますが、
YouTubeで「鳥カゴの扉を自分で開けて外に出て、用事が済んだら、また鳥カゴに戻ってくる鳥の動画」をたくさん見ているので、「鳥カゴに閉じ込められて身動きがとれない……」と嘆いている鳥は、シンプルに頭が悪いのだと思い始めているキングコング西野です。
さて。
今日は「『食えるプラットフォーム』が増えてきたので、ここには気をつけておいた方がいいかも」というテーマでお話ししたいと思います。
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Netflixとディズニープラス
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少し余談から始めたいと思います。
自分自身、お客さんとして「どのエンタメに時間を使っているかなぁ?」と考えた時、パッと出てくるのは「Netflix」と「ディズニープラス」です。
落語や演劇やミュージカルやシルク・ドゥ・ソレイユを観に行くのも、
映画館に行くのも大大大好きなのですが、
投下している時間の長さでいうと、「Netflix」と「ディズニープラス」の2強です。
調べてみると、「Netflix」の会員数は現在2億760万人。
一方で、「ディズニープラス」の会員数が現在1億人チョイ。
会員数で見るとダブルスコアです。
ところがどっこい、「Netflix」の会員数が1億人を突破したのはサービス開始から10年が経った頃。
一方、「ディズニープラス」はサービス開始から1年半で1億人を突破。
ただ今、ディズニー先生が、もの凄い追い上げを見せています。
「米Digital TV Research」(=たぶん、いろいろ調べるのが得意な人達)の最新の予測によると、「2026年の『Netflix』の会員数は2億8,600万人で、『ディズニープラス』の会員数は2億9400万人になるよ」と出ています。
なんと、5年後に会員数が逆転するそうです。
※ちなみに2026年の「Amazon Prime Video」の会員数は1億8,400万人だそうです。
ここから5年で「ディズニープラス」は急成長するらしいのですが、その理由は、21世紀フォックスが持っていた「ホットスター」というインドの配信会社をディズニーが買収したから…と言われています。
(※ディズニーが「21世紀フォックス」を買収したから、「ホットスター」もディズニーのものになったよ)
日本ではあまり知られていませんが、ディズニーが買収した「ホットスター」の会員はサラッと1億人チョイ。ほぼ日本の人口です。
日本のエンタメ業界では「『Netflix対ディズニープラス』は外国の一軍の人達の試合で、自分達には関係ありませんから」みたいな顔が散見されますが………会員数が増えれば、その分、コンテンツにかけられる予算が増えるます。
当然、「広告費内で作っている日本のドラマ」とのクオリィーの差はひらきます。
そして、そういった作品が「家のテレビ」という同じ商品棚に並べられるわけで、まったくもって他人事なんかじゃありません。
こういった《天井知らずの月額エンタメ世界戦》に、製作費に上限がある日本ドラマが「画面の強さ」で対抗しようと思ったら、あとは俳優のギャラを削るしかありません。
そうなると、俳優はドラマに出ても稼げないから、「ドラマで顔を売って、C Mで稼ぐ」という打ち手しかなくなり、「不祥事を起こして一発アウト」のリスクが高まります。
時々、ニュースで流れてくる「賠償金ウン億円」というアレです。
これは、地雷を抱えながら走っているようなもので、あまり健康的ではありません。
僕は日本のドラマ畑の人間ではないので詳しい内情は知りませんが、こんな無理が続くとは思えず、「日本のテレビ=通販番組orワイドショー」に流れていきそうな匂いがしています。
ここからが本題です。
Netflix』vs『ディズニープラス』の会員数の話になると、「売り上げはどうなんだ?」という話が必ずついてきます。
実は、2026年に「ディズニープラス」が会員数で逆転しても、月額料金が違うので、売り上げに関しては「Netflix」の軍配が上がります。
ただ、
Netflix」と「ディズニープラス」と「Amazon Prime Video」を同じ棚に並べてしまうのはナンセンスです。
Netflix」と違って、「ディズニープラス」と「Amazon Prime Video」は莫大な収益を生んでいるとはいえ『フロントエンド商品(集客をする為の商品)』であって、「ディズニープラス」や「Amazon Prime Video」には「ディズニーランド」や「Amazon」といった『バックエンド商品(売り上げを作る商品)』が後ろに控えています。
「ここを見極める目を持っておくことが大事だよね」というのが今日のテーマです。
ディズニーが、コロナ禍で世界中の映画館から反発を喰らいながらも新作映画の出しどころを「配信」に切り替えたのは、「ウチの映画はフロントエンド商品だ」という覚悟だったように思います。
気づいてました?
いくつかの映画館で上映していたディズニー最新作『ラーヤと龍の王国』は、家(ディズニープラス)で観れたんですよ?
コロナが世界を襲ったあの日、ディズニーは「映画館に応援されなくなるかもしれない」と、「それでも、たくさんの人に観られた方がいい」を天秤にかけた。
個人的には、その覚悟に震えました。
話が散らかっているので、そろそろまとめます。
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▼ 見極めよう
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今回のディズニーの話を聞いて、「へぇ〜」となっている場合じゃなくて、各プレイヤーの「フロントエンド商品」と「バックエンド商品」を見極める目をキチンと養っておくこと(見極める癖をつけこと)が、これから非常に重要になってくると思います。
今、様々なプラットフォームが「収益化」に向けて動いています。
Twitterもそう。Voicyもそうですね。
これらは、もともとプレイヤーの「フロントエンド商品」を置く場所でした。
ですが、「収益化できるようにしてよ!」という世の中の要望を汲んで、収益化できる場所になりつつあります。
世の中が「収益化できないプラットフォーム」を許さなくなってきたわけです。
それはそれで結構ですが、「収益化できるようになった」とはいえ、そこは元々、「フロントエンド商品の置き場」です。
つまり、同じ商品棚に、「ここでの売り上げは要らねぇです。知ってもらえればそれでO K」というディズニーやAmazonみたいな人がシレッと並んでいる。
前までなら、「このプラットフォームでは食えないから、ここでは集客して、キチンとバックエンド商品を用意しないといけない」と全員が(特に意識を持っていなくても)割り切れていたのですが、全てのプラットフォームが「食えるプラットフォーム」になると、なまじっか食えるモンだから、「フロントエンド・バックエンド」という意識が薄れ、「どれぐらい食えるのか?」を考えなくなり、バックエンド商品の開発がおざなりになってしまう。
その時、バックエンド商品を持っているプレイヤーが本腰を入れて攻め込んできた時に一気にまくられてしまいます。
食えるようになってきたプラットフォームに過度の期待を抱いてはダメで、「自分のフロントエンド商品は何で、バックエンド商品は何か?」という意識をキチンと持った上で、「食えるようになってきたプラットフォーム」に参戦するのがいいと思いま〜す。
現場からは以上で〜す。
 
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