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2021年07月28日のエンタメ研究所の過去記事

7月28日(水) ※7月30日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
「これ、スーパーに売ってへんエエやつやから!」(by 母親)という売り文句で実家から送られてきた【ヤクルト】が、近所のスーパーで売られていたキングコング西野です。
さて。
今日と明日の二日(前後編)に渡って、『アイデアとお金』というテーマでお話したいと思います。
わざわざ二回に分けている理由は「とってもとっても大切な内容」だからです。
【前編】の今日は『アイデアとお金』について僕が確信していることを。
明日の後編は『アイデアとお金』について、僕がまだ迷っていることを、それぞれ正直に綴りたいと思います。
繰り返しになりますが、どちらも、これからの時代を泳いでいく上で、とっても大切な内容です。
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▼ 貧困の連鎖は何故起きるのか?
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日本では今『相対的貧困』(Aさんに比べて私は貧乏=格差)が大きな問題となっていますが、世界には「そもそも食べるものがない」といった『絶対的貧困』に陥っている国や地域があります。
もちろん、ハローワークや、生活保護などもありません。
今はコロナ禍なので活動できていませんが、コロナが来る前までは、3ヶ月に一度ぐらいのペースで、そういった地域に訪れては、ささやかながら支援活動をさせてもらっていました。
ゴミの中でも暮らす子もいて、衛生もヘッタクレもありません。
親御さんや、コーディネーターさんに、貧困の連鎖が終わらない理由を訊ねると、必ず『教育』というワードが出てきます。
これは『相対的貧困』に陥っている日本も本質的には同じだと思うのですが、「食っていく知識(選択肢)のない大人が、子供を育ててしまうので、食っていけない大人に育つ」という残酷なループです。
大きな違いとしては、
「手を伸ばしても【食っていく知識】が手に入れられない絶対的貧困国」と、
「少し手を伸ばせば【食っていく知識】が手に入れられるのに、手を伸ばさないどころか、【食っていく知識】を非難してしまう日本」といったところでしょうか。
今(日本)だと、「eluの存在を知らずに、皿洗いのアルバイトでギリギリ生計を立てている(もしくは立てられずに引退してしまう)イラストレーターさん」がいるわけで…“情報感度の高い人をベンチマークしておくだけで”回避できる貧困があります。
貧困から抜け出す為に必要なのは「勇気」や「覚悟」などではなく、「知識(教育)」です。
絶対的貧困国のサポートは「教育の機会」の創と、あとは、「そこで学んだ子達が働く場所」の創出に尽きます。
僕らはラオスでそれを進めているのですが、国連の人間でもない「一個人」が、この問題に手をつけている理由に関しては、明日(後編で)、ご説明します。
そして、もう一点。
「貧困問題」を取り上げた本を何冊か読んでいると、よく『脳の容量』の話が出てきます。
目に見えないもの(数値化されないもの)なので、うっかり見落としてしまいますが、僕らの脳ミソは「一日に考えられる容量」が決まっています。
脳にも「体力」があるんですね。
容量がゼロになっちゃうと、何も考えられない(思いつかない)。
んでもって、僕らはココを(あらためて)強く認識しておいた方がいいと思うのですが……脳の容量をベラボーに消費しちゃうのって、「食っていかないといけない」という『不安』なんです。
つまり、メチャクチャ乱暴に整理すると、「貧しかったら思いつかない」んです。
「食っていけないかもしれない」という不安が脳の容量を消費しちゃっているので。
お金で追い込まれてしまった人が、いかがわしい高額のセミナーにハマったり、右も左も分からないFXにハマったりする原因がそれで、脳の容量が残っていないから、マズイ一手を打ってしまう。
思考が停止しちゃってるんです。
貧しいがゆえに、「素晴らしいアイデア」が思いつかない。
これが貧困の連鎖から抜け出せないもう一つの理由です。
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▼ 「素晴らしいアイデア」はどこから生まれるのか?
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「卵が先か? ニワトリが先か?」みたいな話になりますが、「素晴らしいアイデア」は貧困からは生まれない。
となると、「素晴らしいアイデア」を出すには、まずは「食っていけないかもしれない」という『不安』を消すのが先決です。
「それができりゃ苦労はないよ」というツッコミが飛んできそうなので、実際の例を挙げます。
僕は時々(本当に時々!)『ニシノコンサル』と称して、サロンメンバーさんの会社(ときどきクリエイターさん)の相談にのらせてもらっています。
先日は、熊本にある『高田酒造場』さんから、「あの…コロナで、ピンチなんすけど…」という御相談を受けました。
居酒屋や酒造が今、大変な苦労を強いられていることは、皆さんもニュース等で御存知でしょう。
聞けば『高田酒造場』さんは、国産クラフトジンの最高金賞を受賞されていて、サクッと日本一になられています。
その『高田酒造場』さんでも、今回のコロナのダメージは大きく、「たくさんお酒を作っちゃったんですけど、どうしたらいいですかね?」とお困りの様子。
「ちなみに、これまでに、どんな手を打たれましたか?」と質問してみたところ、ぶっちゃけ、あまり有効打はありませんでした(笑)
ここで考えなければならないのは、「イイ手が思いつかない」ではなくて、「何故、イイ手が思いつかないのか?」です。
そこで、「今、会社を守っていけるか、不安でしょ(笑)?」と訊くと、「メチャクチャ不安です」と高田酒造場さん。
原因はココにありそうです。
そこで、「作ったお酒を一本一本売るんじゃなくて(それもやりつつ)、最高金賞に輝いたお酒を100本買ってくれる人を探して(なんなら樽で買ってくれる人を探して)、最初の1ヶ月でお酒は完売させて、あとの11ヶ月は管理と配送に終始した方が良くないですか? 僕、起業家の友達、結構多いですけど、『自分のお酒』を記念品(お礼)で渡している人、少なくないですよ」とお伝えしました。
もちろん、そんな簡単にはいかないとは思いますが、要するに、「食っていけないかもしれない」という不安を早い段階で潰す方向に舵を切れ…という話です。
極論、「365日の生活費を365日で稼ぐのではなく、最初の1ヶ月で稼いでしまって、あとの11ヶ月は、次のアイデアに充てろ」です。
その方が「素晴らしいアイデア」が出てくる。
この時、スッゲー勿体ないのは、「食っていけないかもしれない」という負担を前半戦で潰しているのにも関わらず、後半戦も『稼ぎ』に時間と脳の容量を割いてしまうことです。
変化の時代の最大のリスクヘッジは「貯金」じゃなくて、「対応力」で、今、「100万円」の貯金がある人が頑張って頑張って、貯金を「200万円」にしようとも、不安は消えないと思います。
つまり、一生「素晴らしいアイデア」から距離を置くことになる。
それならば(たとえば)年単位で区切って、前半戦で不安を潰し、「今年はもう食いっぱぐれないから、あとはアイデアに充てる」とした方が、良い投資になりそうです。
昨日、ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』のスタッフにも同じことを言いました。
「面白いことをしたいのであれば、面白いアイデアを出したいのであれば、先にマネタイズを終わらせて、『赤字になるかもしれない』という不安がない時間をどれだけ長くとれるか?…だと思うよ」と。
ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』のチームは、すでにオンラインチケットなどの販売をスタートさせていて、“早い段階で”お金の不安を潰しにかかっています。
この姿勢(早期の安心獲得)こそが、面白いアイデアを生み出す際のドレスコードで、一度、チームの皆と話し合ってみてもいいかもしれません。
「ちなみに、うちのサービスの場合だと、前半戦で金銭的不安を消すためには何ができる?」
といった。
明日の記事では、このことを踏まえて、もう少し深い場所に潜りたいと思います。
僕自身、まだ明確な答えを見つけられていない状態ではありますが、とってもとっても重要な現代の問いです。
今日の記事とセットで読んでいただけると嬉しいです。
現場からは以上でーす。
 
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