西野亮廣のエンタメsalon

西野亮廣エンタメ研究所の過去記事を中心にアップしてます

2021年08月07日のエンタメ研究所の過去記事

8月7日(土) ※8月9日以降は『いいね』を押さないでください。
━━━━━━━━━━━━━━
おはようございます。
今日は梶原君の誕生日なのですが、「梶原も、41歳かぁ。大人になったなぁ。」と感慨に浸っていたら、同い年だったことに気がついたキングコング西野です。
さて。
今日は「『面白い商品(サービス)』には簡単には手を出すな」というテーマでお話ししたいと思います。
世間的には「いけいけー!」「やれやれー!」なイメージを持たれているキンコン西野ですが、どっこい慎重派でございます。
以後、お見知りおきを。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ 『役に立つ』『意味がある』を都合良く解釈してしまう人
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『役に立つ商品』と『意味がある商品』の価格(by 山口周さん)については、数日前の記事に書いたので、詳しくは、そちらで御確認ください。
ザックリ説明すると…
①日本車(役に立つ)
②ベンツ(役に立つし、意味がある)
カウンタック(役に立たなくて、意味がある)
…を値段の高い順に並べると③②①である…というアレです。
この話は、「役に立つモノがどんどん安くなっているから、『意味(ブランド)』に向かわなきゃいけないよね」と展開していくわけですが、これを、ものすごーく都合良く解釈してしまう人がいます。
「一番高い値段がつくものが『役に立たなくて、意味があるモノ』なのであれば、そこを目指そう」という人達です。
「役に立たなくていい(品質は必要ない)のだから、何の技術も持ち合わせていない今の自分に、『意味』だけを足せばいいだろう」と。
ナメんなよ。
…すみません。
熱くなってしまいました。
迷惑をかけているのであれば、ごめんなさい。#名古屋市長
なぜ、値段が高いのか?
答えはシンプルで、「再現するのが最も難しいから」です。
素人が、キャンバスにペンキをビッシャーとぶちまけて『衝動』というタイトルの芸術作品を売ったところで、1円にもなりません。
絵を描いて、お金をいただこうと思ったら、あたりまえですけど、まずは上手くないといけません。
(※役に立つ)
それ以上のお金をいただこうと思ったら、支持を得ているモチーフを描くか、限定数を設けるか、描き手本人の物語を、持ち合わせた技術の上にのせなければなりません。
(※役に立つし、意味がある)
……実はここまでは数学ですが(再現性があるのですが)、ここから先は、再現性がないんです。
分かっていることは2つで…
ピカソも、ダリも、岡本太郎も、「圧倒的な技術(論理と画力)を持ち合わせている」ということが一つ。
そしてもう一つは、ピカソや、ダリや、岡本太郎のようなことをしても、「ピカソや、ダリや、岡本太郎みたいだね」という評価がくだって、価値がつかない…ということ。
『意味しかない』という領域は一番奥にあるのですが、『意味しかない=技術が要らない』と解釈してしまう人は、『意味しかない』の領域を近場に捉えてしまっている。
「ワンチャン、あるんじゃねぇか?」ぐらいの勢いで。
断言します。1%の確率もありません。
「美味しくないけど、面白いご飯屋さん」なんかにゃ行きません。
僕らは、美味しいご飯屋さんを選びます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ まずは『役に立つ』を押さえろ!
━━━━━━━━━━━━━━━━━
すごくシビアな話ですか、③(意味しかない)は一旦諦めて、まずは②(役に立つし、意味がある)を目指すのがイイと思います。
そこは、メチャクチャ頑張れば辿り着ける領域なので。
その為には、とにもかくにも技術(機能)が必要です。
役に立つ車でなければなりませんし、
美味しいご飯屋さんでなければなりません。
『意味(面白い)』は、どうしたって魅力的に映りますが、そこに引っ張られすぎないことが、とってもとっても大切です。
先日、『ニシノコンサル』で、「イタリアンのラーメン(伊太そば)」を展開されているサロンメンバーさん(木村さん御夫婦)の相談を受けました。
もともとイタリアンのお店を出されていたのですが、一発逆転をかけたテレビ番組の企画(お店のビフォアアフター的な企画)で、「イタリアンの要素を入れたラーメン屋さん」に転身されたそうです。
番組で取り上げられて、転身後しばらくは、お客さんが押し寄せたそうなのですが、そのタイミングでコロナかやってきて、なかなかどうして、ご苦労されています。
コロナ禍は、どの飲食店も苦労されていますが……相談を受けて、少し気になったことがありました。
それは、「木村さん御夫婦の『伊太そば』が、コロナの影響で客足が遠退いたのか? それとも、『イタリアンラーメン』という変化球(面白い)をネタとして面白がるお客さんを刈り取ってしまったのか?」という点です。
実は後者の可能性は全然あると思っています。
たしかに、お客さんの反応を見ると木村さん御夫婦のイタリアンラーメンの評判はメチャクチャ良いのですが、「では、毎月食べるか?」と問われれば、なかなか難しいところ。
番組のネタ的にはメチャクチャいいんです。
「イタリア料理屋さんがラーメン屋さんに転身して、お店は満員!」の画を一枚撮れれば番組として成立するので。
なので、(番組としては)なるべく変化球(面白い)の方がイイ。
だけど、飲食店は10年、20年、30年戦争です。
ずっと続けていかなくちゃいけません。
コンスタントにお客さんに(ずーっと)来てもらわなくちゃいけないので、当たり前ですが、リピーターを獲得しなければなりません。
番組は飲食店に「面白い」を求めますが、
飲食店のリピーターは飲食店に「面白い」を求めていません。
ここも「面白い」の落とし穴だなぁと思います。
木村さん御夫婦には、
「今、出されている『イタリアンラーメン』はすごく評判が良いので、引き続き出されることをオススメしますが……しかし、それは複数回は通用しない変化球(面白い)で、『新規客寄せ商品』としておいた方がいいと思います。
来週も、再来週も食べたくなる『カルボナーラ』なのか、『豚骨ラーメン』なのか……とにかく変わり種じゃない定番メニューを用意して、そこでキチンとリピーターを作りませんか?」
と提案しました。
「『面白い』もいいけど、ホドホドにして…」という提案です。
味の評判がすごく良かったのと、木村さん御夫婦が本当に素敵なお人柄だったので、「面白い」に振りすぎない方がいいなぁと思いました。
※木村さん御夫婦の話をしちゃったお詫びに木村さん御夫婦のオンラインショップのリンクを最後に貼っておきます。
…そろそろ話をまとめますね。
『意味』が求められる時代に入ったことは間違いありません。
ですが、多くの人にとって、「意味しかない」は、まったく別世界のスタイルになります。
そこを目指すことを僕はオススメしませんし、「それでも目指す」というのであれば、圧倒的な裏付けを獲得してください。
まさか「飛び級」で行ける場所ではありません。
『意味(面白い)』に振り回されて、御自身の人生を乱暴に扱って欲しくないなぁと思って、ちょっと今日は面白くない話をさせていただきました。
とにかく『技術』が大前提なので、まずは死ぬほど努力して『技術』を獲得してください。
応援しています。
現場からは以上で~す。
 
▼オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』入会はこちら ↓↓↓