西野亮廣のエンタメsalon

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2021年08月12日のエンタメ研究所の過去記事

8月12日(木) ※8月14日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
梶原君から「ブロックチェーンって何なの?」と訊かれたので、頑張って説明したのですが、脱線しまくって、最終的には「アニメキャラの必殺技の名前」ということで落ち着きかけたキングコング西野です。
さて。
今日は、『安いものをたくさん売るのって、そもそも難しいよね』というテーマでお話ししたいと思います。
昨日の僕がブチ当たった壁と、仮説(解決策)と検証結果の共有です。
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▼ 競合は「隣に並んでいる商品」だけじゃない
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CHIMNEY TOWNのグッズなどを担当してくださっているグラフィックデザイナーの「かんかん」サンが描く『プペル(アホみたい)』と『ルビッチ(なんか、ふてぶてしぃ)』が好きで、「プペルとルビッチの絵を描いて、elu(デジタルデータを販売できるサービス)で売ってくださいよ。僕、買いますんで!」とお願いしてみました。
スササササッと【スマホ待ち受け用のイラスト】を描いてくださった「かんかん」サンから「描きましたけど……これ、何個(限定)で、いくらで販売したらいいんですか?」という質問が飛んできて、ここでグッと考える西野氏。
ここが今日の主題です。
皆様なら、『プペルとルビッチの待ち受け画面用イラスト』を、いくらで販売しますか?
ちなみに、(現時点での)eluの設定可能金額は、500円~5万円。
設定可能の商品数(現定数)は、10個~100個。
かんかんサンの活動費や、『えんとつ町のプペル』のブランド代も考えなきゃいけません。
……そう言われちゃうと、ちょっと難しいですよね?
僕は、『5000円×20個』か、『500円×100個』で悩みました。
『5000円×20個』は、「待ち受け画面の画像」としては(もちろん、他の用途でも使えるけど)かなり強気の値段設定ですが、「世界に20個しかない」という希少価値を考えると、無い話でもなさそうです。
でも、とはいえ、やっぱり『待ち受け画像』なので、最も安い『500円』にして、たくさん販売するのが妥当な気もします。。
そんなこんなで、『5000円×20個』で10万円の売上を作るか、『500円×100個』で5万円を売上を作るか悩んだのですが、“ある視点”から切り取って考えてみると、「『500円×100個』で5万円を売上を作る(=安いものをたくさん売る)」はメチャクチャ難易度が高いことが見えてきました。
「どっちにした方がいいのかな?」と悩んでいた頃(3秒ぐらいね!)の僕には、『お客さんの懐事情』と『eluの商品棚に並んでいる他の作品』にしか目がいっていませんでしたが、普通に考えて、【スマホの待ち受け画面】を販売するということは、「お客さんが現在登録している超お気に入りの【スマホの待ち受け画面】」に立ち退いてもらわないといけないわけで……
「お客さんが現在登録している超お気に入りの【スマホの待ち受け画面】」なんて、eluの商品棚に並べられているどの作品よりも強いわけで、そんなモンスターを相手に100勝しなきゃいけないなんて、ムリゲーもいいところです。
作品の値段が100円であろうと、それは厳しい。
僕らは「競合」と聞くと、ついつい【同じ商品棚に並んでいる商品】に目をやってしまいますが、作品・商品・サービスにとってみれば、【すでに買われた作品・商品・サービス】が競合でもあるわけで、んでもって、後者の競合は強い。強すぎる。
西野家のトイレの壁に飾るようなイラストや写真を西野に販売しようと思ったら、すでに西野家に飾られている「西野が20~30万円ぐらいで買った蜷川実花さんの作品」に勝たなきゃいけないんです。
難しすぎません?
可処分所得は給料日にリセットされますし、
可処分時間は1日の終わりにリセットされますし、
可処分胃袋は朝昼晩にリセットされます。
しかしながら、『可処分家の壁』や、『可処分待ち受け画面』は時間が経過してもリセットされることはなく、お客さんの『可処分家の壁』や『可処分待ち受け画面』を奪おうと思ったら、すでにそこを押さえている商品・作品・サービスに立ち退いてもらわないといけない。
「待ち受け画面を100個売る」が、なんと難しいことか。
それならば、数は少なくなるかもしれませんが、『待ち受け画面にこだわりがない人(&限定数に魅力を感じてくれる人)』をピンポイントに狙った方がいい。
その場合の競合は「eluの商品棚(もしくは他の待ち受け画面販売サイトの商品棚)に並んでいる作品」となり、最強甚だしい「すでに買われている作品」と戦わなくて済みます。
「可処分○○」は、○○のジャンルによって、競合が変わっていることを、もっと強く意識しなきゃなぁ(=こんなのは二択問題じゃなくて、一択問題なので、迷わずに0.1秒で答えが出せるようにしなきゃなぁ)と思ったので、今回、共有させていただきました。
よくよく考えてみたら、僕らの身の回りはもう、自分が気に入ったもので埋めつくれていませんか?
自分が消費者だとして、「安いスニーカーが出たから」といって、先月(お金をためて)買った超お気に入りのスニーカーを買い換えます?
「お金をためて買った自分」を否定することになるんですよ。
その「買い換え」って、結果的に、メチャクチャ高い買い物になってませんか?
消費者目線で考えると、「安いからといって、買わねーよ」になるのですが、売り手目線になると、途端に、「待ち受け画面だし、500円ぐらいで…」という思考になる。
安いものを“たくさん売る”というのは、まったく安全策なんかじゃなくて、その分、勝たなきゃいけないハイレベルな試合が増えるわけだから、険しい道だと思います。
結果、かんかんサンの【スマホの待ち受け画面用イラスト】は『5000円×20個』で即完。
このあたりのバランス感覚(可処分○○によって競合が変わる)というのは、すべてのサービス提供者が持ち合わせておかなくちゃいけないのかもしれません。
今後もいろんな実験を繰り返しては、サロンで共有していきます。
現場からは以上でーす。
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