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2021年08月14日のエンタメ研究所の過去記事

8月14日(土) ※8月16日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
東野さんにタコ殴りにされた話をVoicyで愚痴ったところ、一部のファンの方から「ひどい!」というコメントがあったので、「いやいや、本当は美味しいと思ってるんです」と一番言いたくない説明をしてしまったキングコング西野です。
さて。
今日は、本当は全ての舞台関係者に読んでいただきたい『持続可能なミュージカルの新ビジネスモデルの共有』というテーマで、現在、本腰を入れて“土台から”作り込んでいるファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』のビジネスモデルについてお話しします。
サロンメンバーの皆さんからすると“すでに知っている話”ではあるのですが、少しゴチャゴチャしているところもあったので、あらためて「整理」したいと思います。
今日は舞台の話ですが、現在、フロービジネスをされている方のヒント(後押し)になる部分も混じっていると思います。
どうぞ、お付き合いください。
(※「フロービジネス」=顧客との関係は1回の取引で終わり、その顧客からの利益を継続的に伸ばすことが担保されないビジネス形態のことを指す。 飲食業や小売業などがこれにあたる。byコトバンク)
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▼ オールドタイプの舞台
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作品の内容(面白いor面白くない)ではなく、舞台の「ビジネスモデル」を、『オールドタイプ(これまで)』と『ニュータイプ(これから)』に分け、まずは、オールドタイプのミュージカルのビジネスモデルから整理してみましょう。
ザッとこんな感じです↓
【オールドタイプの舞台の収入源】
・チケット
・グッズ
…以上です。
ものすごくシンプルです。
チケットの売り上げは、「チケット代×座席数」なので上限があります。
チケットを売らないことには、活動を続けられませんので、「チケットが売れる役者」がキャスティングされることが少なくありません。
舞台のメインキャストに「アイドル」や「イケメン俳優」がキャスティングされる理由がここにあります。
その中には、「実力が伴っているアイドル」もいますし、「実力だけで選考していたら選らばれなかったであろうアイドル」もいます。
つまり、
チケットを売るために、「作品のクオリティー」が下げられてしまうこともあります。
それは『作品のファン』を手放すアクションでもあります。
これが現実です。
二つ目の収入源として、『グッズ』があります。
グッズは、舞台(ライブ)を支える大切な収入源です。
様々なグッズが作られていますが、「アイドル」や「イケメン俳優」を目当てに来たお客さんには、「アイドル」や「イケメン俳優」の顔写真がプリントされたグッズがよく売れます。ので、よく作られます。
「売れるのならいいじゃん」と考えてしまいがちですが、「キャストのマンパワーに依存したグッズ」のリスクとして、「リバイバル公演でキャストが一新した時に、一個も売れない」があります。
当然ですが、「売れる商品」と「売れ続ける商品」を天秤にかけたら、売上が大きいのは「売れ続ける商品」です。
キャスト依存のグッズ開発は、「売れ続ける商品」を手放すアクションでもあります。
以上、オールドタイプのミュージカル(舞台・ライブ)の収入源をザックリとまとめると、「公演当日しか売上を作れない」です。
「チケットが売れるキャスト」がキャスティングできなければ売り上げは作れませんし、グッズも売れません。
そして、キャスト依存のグッズを開発する以上、常に、在庫リスクを抱えることになります。
ちなみに、コロナで公演中止になれば一発アウトです。
ビジネスモデルとしては非常に脆弱といえるでしょう。
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ニュータイプの舞台
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ニュータイプの舞台のビジネスモデルを整理・理解するには、まずは舞台を「フロントエンド(集客商品)」と「バックエンド(利益を生む商品)」に分ける必要があります。
ニュータイプの舞台の「フロントエンド(集客商品)」と「バックエンド(利益を生む商品)」は以下のとおり。
【フロントエンド】
・本番
【バックエンド】
・メイキングコンテンツ
・デジタルコンテンツ
以上です。
オールドタイプとの大きな違いは、「公演当日(チケット代など)で利益を作ることを諦める」という点です。
チケット代を安くして、子供から爺ちゃん婆ちゃんまで、たくさんの人に愛される(観ていただける)作品に育て上げ、『メイキングコンテンツ(作るまでの過程)』と『デジタルコンテンツ』で利益を作ります。
こうすることによって、公演日以外でも、ずーっと小さく売上を“作り続ける”ことができます。
最悪、コロナちゃんによって『無観客開催』になっても、売上がゼロになることはありません。
『メイキングコンテンツ』の販売に関しては、プロセスエコノミーでこすられ倒しているので、ここでは説明を割愛させていただくとして、ニュータイブの舞台の大きな収入源となるのは『デジタルコンテンツ』の販売です。
NFTやeluが旗を振る『デジタルコンテンツの販売』が、舞台(ミュージカル・ライブ)にもたらすメリットは計り知れません。
理由は、「舞台は“デジタルコンテンツ化できる素材”がメッチャあるから!」です。
昨日お伝えしたオリラジ藤森君のMV(不採用バージョン)もそうです。
断言しますが、上手に設計すれば、『デジタルコンテンツの売り上げ』は、『チケット売り上げ』をブッチギリで上回ります。
デジタルの場合だと、マーケットが「世界」になるので。
ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』のブロードウェイ公演のキャストさんのMV(英語版)の不採用バージョンとか、兵庫県川西市に住んでいても、ちょっと買いたいじゃないですか。
あるいは、『ニューヨークの劇場の外から、チケットカウンターを通って、客席内に入り、ステージセットに辿り着くまでの動画』なんかも買いたい(人もいる)。
この時、用意する『デジタルコンテンツ』は2つで、「数を限定してしまって高額で販売するデジタルコンテンツ」と「数は無制限にして、安く販売“し続ける”デジタルコンテンツ」です。
たとえ値段が200円であろうと、「世界」をマーケットに“販売し続ける”ことを考えると、チケット代の売り上げなど比になりません。
オールドタイプが打ち上げ花火的に売上を作るビジネスモデルならば、ニュータイプは「小さく長く売上を作り続ける」というビジネスモデルです。
当然、ニュータイプに舵を切るには(権利を持っている)『オリジナル作品』でないといけませんし、『芸能事務所の理解』がないといけません。
オールドタイプにあった「あのキャストはチケットが売れないから、キャスティングするのはやめておこう」のように、
ニュータイプには「あのキャストの事務所は、メイキングコンテンツとデジタルコンテンツの販売を禁止しているから、キャスティングするのはやめておこう」は実際に起きると思います。
こんな感じで、舞台のビジネスモデルを「オールドタイプ」と「ニュータイプ」で分けて考えると、また、違った見え方になってくると思います。
舞台セットをプロジェクションマッピングで済ませている舞台を見ると「あぁ、この舞台はオールドタイプなんだな」といった感じで。
ちなみにファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』は、一昨日、ブロードウェイの劇場の交渉に入りました。
ビジネスモデルから再構築し、丁寧に世界展開を進めていきたいと思います。
また、進展があれば、共有しますね。
現場からは以上でーす!
【追伸】
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