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2021年08月23日のエンタメ研究所の過去記事

8月23日(月) ※8月25日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
今朝のキャスティング会議で梶原君の名前が出た時に、「相方の芝居の下手さを甘く見ないでくださいっ!」という謎の反論をしたキングコング西野です。
さて。
そんなこんなで、昨日からずっとお仕事が続いていて、バッキバキにスイッチが入りまくっている今日は、『なぜ、多くの企業はバーベキュー型(お客さんの共創型)プロジェクトを生み出すことができないのか?』というゴリゴリに踏み込んだ話をしたいと思います。
これからサービスを設計する上で、ものすごーく重要になってくる話です。
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▼ 報酬設計の話
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昨日、CHIMNEYTOWN代表のヤン君が、自身のFacebookグループ内で、『プロセスエコノミー』のヒットで完全にチョーシにのっている尾原和啓先生と対談していたのですが、それが、もうメチャクチャ面白かったんです。
話の中で、ヤン君が「報酬設計について悩んでいます」という相談を尾原さんに投げたんです。
「『楽しいからやる!』で集まってきた人に、報酬(給料)を用意してしまうと、それが『対価』として置き換えられてしまって、かえって満足度が下がるのでは?」というお悩みです。
喩えるなら、BBQで頑張って炭に火をつけてくれた友達に、御礼として【30円】を渡すようなものです。
火をつけた人は、【30円】さえ渡されなければ、感謝もされるし、ヒーローにもなれるし、それこそが「報酬」になるわけですが、【30円】を渡された瞬間に、「報酬=30円」に置き換えられてしまう。
ヤン君は「どういう時に、お給料を用意して、どういう時にお給料を用意しない方がいいのか?」と言います。
これって、国民全員が発信できるようになった時代(BBQ型プロジェクトが選択肢の一つとして求められている時代)に必ず向き合わなきゃいけない問題だと思っています。
たとえば、先日、僕は、コロナで瀕死の状態にある宮古島の小さな映画館を助ける為に、「eluで絵を出品して、その売り上げを全額、映画館に贈る」というのをやったんです。
結果、映画館には約50万円の支援をすることができたのですが(※映画館のお母さんからも御礼メールをいただきました)、この時、「謝礼」として【3000円】が僕の銀行口座に振り込まれたら、きっと僕の満足度はダダ下がりです。
「映画館を救うことができた」「映画館のお母さんから『ありがとう』という言葉をいただいた」という事実の方が、報酬としては大きくて、3000円を支払われたら、それで相殺された気になっちゃうんです。
「そんな安い仕事はしてねーぞ」という気になる。
とはいえ、「やる気がある人=無償でいい」は絶対に違うと思っていて、ヤン君もそのことを最近チョーシにのっている尾原さんに相談したところ、「一つの考え方として、『ハレ』の仕事は無償で良い(無償の方が良い)ケースがあるのかもしれません」と返ってきました。
なるほど。
「ハレとケ」は聞いたことがある人も多いかと思いますが(※このサロンでも以前話題にあがりました)、『ハレ』とは「非日常」であり、『ケ』とは「日常」です。
たしなに、祭り(ハレ)に参加する時に、ギャランティーなどいただいきません。
むしろ、払うことすらある。
阿波踊りに参加する為に、お金を払ってダンススタジオを借りて、お金を払って衣装を揃えたりします。
準備に費やしている時間も相当なものです。
たくさんたくさん練習して、迎えた当日、踊りで観衆を沸かした後に、ギャランティーで「200円」が支払われてしまうと、途端、スタジオ代や衣装代のことを考えてしまい、「これじゃ、マイナスじゃん」という結論になってしまう。
とはいえ、僕らは生きていかなきゃいけないので、やっぱり『ケ(日常)』の仕事では、キチンとギャランティーを受けとる必要があります。
「無償」と「有償」を、『ハレとケ』で分けて考えると、なるほどスッキリします。
さすが、最近チョーシにのってるだけあります。
さて。
となってくると、BBQ型のプロジェクトは『ハレ』の仕事にする必要があるわけですが、ここで僕たちは考えなきゃいけません。
「ハレの仕事の条件」について、です。
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▼ なぜ、多くの企業はバーベキュー型(お客さんの共創型)プロジェクトを生み出すことができないのか?
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お客さんが参加できるスペースさえ作れば、「ハレの仕事(ハレの舞台)」になるか? というと、まさかそんな甘い話はなく、「ハレの仕事」には「ハレの仕事たらしめる条件」があります。
それは、「少し頑張れば、何者かになれる」です。
阿波踊りにしてもそう、
炭の火付け役にしてもそう。
少し頑張ればヒーローになれる(=普段の自分では集めることができない注目や信用や感謝を集めることができる)仕掛けが出来上がっています。
「変身」こそが参加者の最大の取り分で、『変身ベルト』が用意されていないプロジェクトは、ハレの仕事にならないので、BBQ型として機能しないんです。
時々、役所仕事で、「みんなで盛り上げよう東京五輪2020」みたいなキャンペーンが打たれては、ゲロ滑りしているところを見かけると思うのですが、あれなんて分かりやすい失敗例で、「五輪のボランティアをすれば(五輪をシェアすれば)何者になれるのか?」という議論がスッポリと抜け落ちてしまっているので、まるで加速しない。
何者にもなれないプロジェクトは『ケ』の仕事なので、「いやいや、普通に給料を出せよ。なんで、ボランティアで乗りきろうとしてんだよ」となってしまう。
最近、『ボランティアできる権』みたいなものが販売されるようになりましたが、あれも、スッと入ってくるのと、「ん?」と引っ掛かるヤツの二パターンありません😁
あれも、変身ベルトの有無が原因です。
んでもって、ここが今日のポイントなのですが、「何者かになれる空間を作る」というのは、実は、起業家の仕事じゃなくて、演出家の仕事なんですね。
「この人にどんな服を着せて、後ろにどんな音楽を流して、どんな美術セットを用意すれば、この人が魅力的に映るのか?」は、サイエンスじゃなくて、アートの領域なので、仕掛人の中に、アーティストが入っていないと、いつまでたっても『ハレ』の仕事は作れないし、BBQ型のプロジェクトは上手く回らない。
だけど、現状、多くの企業は、「BBQ型プロジェクトの為にアーティストを雇う」ということをしない。
結果、サイエンティストが見よう見まねで、アート活動をやって、「同じようにやってるハズなのに、なんか上手くいかない」というところに陥ってしまう。
社内にいます?
「皆がお金を出してでも参加したくなるような空間を作れる人」
たぶん、ほとんどいないと思います。
だけど、BBQ型プロジェクトを推し進めるのであれば、絶対に必要な人材です。
このへんの話は、まだまだ詰めていった方が良さそうなので、また「こういうやり方があるよ!」というのがあれば、サロンで共有したいと思いまーす。
今日は、『なぜ、多くの企業はバーベキュー型(お客さんの共創型)プロジェクトを生み出すことができないのか?』というお話をさせていただきましたー。
現場からは以上でーす。
 
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