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2021年10月03日のエンタメ研究所の過去記事

10月3日(日) ※10月5日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
日曜日の今日は、「売り方」や「届け方」といった“具体的な仕事の話”ではなくて、今、僕がボンヤリと思っていることを、ツラツラと書きたいと思います。
…とはいっても、365日仕事しかしていないので、仕事に関わる話です。
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▼ 『えんとつ町のプペル』という呪い
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ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の稽古が始まっています。
「稽古」には2種類あって、
一つは「反復練習することで技を身につけていくもの」、
そしてもう一つは「内容を固めていくもの」。
ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』は、今回が“初演”ということもあって、まだまだ決まっていないことだらけです。
なので、稽古場では、反復練習は勿論のこと、シーンごとに「ここは、こうしない?」といった感じで“皆で”アイデアを出し合っています。
「アイデアを出しやすい空気」を作るのも、チームの皆の仕事で、他の人が出したアイデアを、まずは肯定する(リアクション大きめ&基本明るい)キャスト&スタッフの皆様に、頼もしさを感じる毎日です。
10月10日は全員が集まる「本読み稽古」配信がありますので(その時だけは少し緊張感があるかも!)、是非、ご参加ください。
※本読み稽古のチケットはコチラ→https://meets.ltd/poupelle/ticket_1010/
稽古を進めていく中で、あらためて「良かったなぁ」と思うことがあります。
それは「いつもは使えるハズの舞台装置が使えない」ということです。
演劇小屋ではない『東京キネマ倶楽部』(今回の会場)は、舞台袖は狭けりゃ、美術セットを吊るすバトンもありませんし、「せり(地下から上がってくる床)」や「まわり舞台(回転する床)」なんかもありません。
ついでに言えば、このご時世ですから、客席に紙吹雪を降らすこともできません。
ここだけの話ですが、当初の西野の計画は、大型の送風機を“客席に向けて”用意して、ゴミ人間誕生のシーンで、お客さんの顔面に紙吹雪を大量に叩きつける予定でした(笑)
♯そんなことすな
言ってしまえば「できないことだらけ」の環境なのですが、その足枷がとっても良くて、そのおかげで、「曲はあまり良くないけど、舞台装置の派手さで誤魔化す」ということができないんですね。
シンプルに、曲が良くないと間が持たないし、
ダンスが良くないと間が持たないし、
芝居が良くないと間が持たないので、
「素材を強化しよう(強化するしかない)」という方向で、チームの意思決定がなされます。
忘れちゃいけないのは、今回の公演が、このカンパニーのゴールでは無いということ。
このあと、ブロードウェイに持ってって、果ては、ミュージカルなんて見たことも聞いたこともない地域にも持っていこうとしています。
その時、「舞台装置ありきの演出」だと、舞台装置が整っていない場所での開催は難しくなります。
なので、「舞台装置に頼らない」をベースに作っておくのがイイ。
その上で、先々、「『せり』や『まわり舞台』がある会場で公演できる!」となったら、その時は、ヨダレを垂らして、そういった舞台装置を存分に使えばいいと思います。
僕は時々「化け力」という言葉を使います。
「化け力」というのは、素材そのものが持っている「転換できるポテンシャル」のことです。
2次利用しにくい素材を「化け力が低い」と呼び、
2次利用しやすい素材を「化け力が高い」と呼びます。
くれぐれも、作品の良し悪しの基準ではありません。
「どれだけ、別のものに転換できるか?」の値です。
それでいうと、先々、いろんな場所で公演することを見越したファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』は「化け力」を高めに設定しておく必要があります。
その上で、『東京キネマ倶楽部』という非演劇小屋が、それを後押ししてくれているわけですね。
考えてみりゃ、そもそも『絵本』の化け力が高すぎる。
「個展」もできて、「グッズ」にもなり、「映画」にもなり、「ミュージカル」にもなり、ついには、「歌舞伎」にもなります。
想像&創造する余白が多分にある『絵本』だから、これだけの展開が生めたわけで、
スタート(第一歩目)が「映画」であれば、こうはなってなかったでしょう。
おかげで『えんとつ町のプペル』漬けの日々です。
恐ろしいのが、すでにある素材(アリネタ)を擦っているわけではなく、今日も『えんとつ町のプペル』をテーマに新ネタを作っているのです。
僕が初めて『えんとつ町のプペル』という作品を世に発表したのは、絵本が出版されるよりも、もっともっと前で、NONSTYLE石田君とサンリオピューロランドでおこなったのが最初です。
調べてみると、「2012年10月」とありました。
気がつきゃ、9年間も、この作品と付き合い続けています。
9年間と言えば、小学1年〜高校入学までの時間です。
表現者として、ちょうど脂がのっている大切な大切な、もう取り返すことのできない時間を、一つの作品に注いでしまいました。
そして、この時間は、もうしばらく続きそう。
歌舞伎の脚本をまだ書き上げていませんし、映画の続編も、まだ。
この作品を背負うには、多くの覚悟や苦労が必要になっていきます。
楽しい思い出もたくさん作ってくれますが、楽しいだけではありません。
苦労だけでなく、怖くてたまらない時間もあります。
だけど、だけどそれは望んだ人全てが手に入れられるものではなく、たまたまいろんなタイミングが重なって、たまたま僕に(僕らに)手渡されました。
この環境を望んでも手に入れられない人がいる以上、勤め上げないとバチが当たるというもの。
5年後の僕が何を言っているかは分かりませんが、少なくとも今の僕は、「もうちょっとだけ『えんとつ町のプペル』と付き合おう」と思っています。
えんとつ町のプペル』には、まだ描ききれていない物語があります。
それを描くまでは、まだ、終われません。
「ミュージカル版」に関しては、今回の公演でベースを作りあげたら、後輩にくれてやろうと思っています。
手放すことを決めている作品(お別れすることを決めた作品)と本気で向き合うのは、残された時間の1秒1秒が大切で、新鮮で楽しいです。
オンライン配信のチケットが出ているので、全員、見届けてください。
今日も稽古に行ってきます。
それでは、素敵な日曜日をお過ごしください。
 
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