西野亮廣のエンタメsalon

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2021年10月11日のエンタメ研究所の過去記事

おはようございます。
 
誰もいなかったので、『木綿のハンカチーフ』を歌いながら自転車を漕いでいたら、角から人が飛び出してきて【独唱】を聴かれたので、咄嗟に耳に手をあてて(イヤホンを付けている感じを出して)「…という部分の歌詞があるじゃない?」という言葉を続け、「電話をしているヤツ」を演じてみせたキングコング西野です。
#うまく誤魔化せたのか
 
さて。
今日は「ここらで『プロセスを販売する』を、あらためて整理しよう!」というテーマでお話ししたいと思います。
 
考えていることを正直に書くので、「ちょっと耳が痛い…」という方もいらっしゃるかもしれませんが、ここを受け止めずにウヤムヤにしちゃって互いの時間を浪費するのは嫌なので、正直に書きます。
頑張って受け止めてください。
 
 

プロセスエコノミーやってみたけど、上手くいかない…
 

「なんか、今は【プロセス】を売るのが流行っているみたいだから、やってみたんだけど、全然売れなかったっす!」という人って、結構、多いと思うんです。
 
内容を聞けば、「そりゃそうだろ(売れるわけねーだろ)」というモノがほとんどなので、ちょっと、ここを(あらためて)整理したいと思います。
 
まず、「プロセスの販売」の大前提として、「アウトプットで差が生まれにくくなっている」が絶対に(絶対に!)あります。
 
インターネットによって、情報や技術がカジュアルに共有されて、自社サービスは勿論のこと、競合のサービスの品質が上がって、「上の方でドングリの背比べ」をしているから、他(品質以外で)で差別化を図るしかないよね? …という。
 
そこで、「プロセス」や「ストーリー」や、あるいは「コミュニティー」といったものに白羽の矢が立つわけですが、もう一度言いますが、これは「上の方でドングリの背比べをしている人達(高いレベルで品質勝負している人達)」の言い分であって、粗悪品を提供している人の言い分ではありません。
 
昨日は、藤原和博先生のオンライン勉強会で、「つめこみ型(丸暗記型)の『情報処理力』よりも、正解が無い現代は『情報編集力』が求められています。ただし、そりゃ(そこに参戦するには)ある程度、『情報処理力』は必要だよ」とお話しされていたのが印象的でした。
 
「『正解の無い世界を生きていく』とは言え、1+1ができなかったら、話にならねーよ」という話です。
 
「プロセス販売」もまったく同じで、『完成品のクオリティーに価値がない』ということは、『完成品のクオリティーなんて、どうでもいい』ということではなくて、当たり前ですけど、「不味いラーメン」は誰も買いませんし、「不味いラーメン」のプロセスも誰も買いません。
 
この時、反論のネタとしてあげられるのは「(ASAYAN時代の)モーニング娘。」や「AKB」で、「彼女達は、プロの歌手や、プロのダンサーに比べて、まだまだ足りない部分もあるのに、それでもプロセスが販売できているじゃないか?」という反論があったりするのですが、ナメんでください。
 
モーニング娘。」も「AKB」も、国内最高峰のクリエイターが彼女達の土台を作っています。
つんくサンの楽曲は最高だし、ASAYAN(テレビ東)の編集はメチャクチャ上手かったし、そもそも時代の寵児が大集合している座組だったし、AKBの『根も葉もRumar』の歌もダンスも最高です。
 
「超一流が脇を固めて、その一部を『まだ何者でもない少女』が担当しているクリエイティブ」と、「オール素人で作るクリエイティブ」を並べて議論するなんて極めてナンセンスです。
 
整理すると、「よく知らねぇ素人のオッサンが作る粗悪品の制作過程を誰が買うんだよ」という話です。
 
『プロセスエコノミー』というのは、基本的には「戦い方が変わってきたよね」というだけの話で、「品質向上を後回しに考える“クリエイターもどき”でも生きていける世界」の到来ではありません。
 
メチャクチャ厳しい言い方をすると、「一流ヅラして悩むな」というところになるのですが、一流クリエイターが「完成品は売れないよね」というのと、三流クリエイターが「完成品は売れないよね」と言っているのは、ワケがちがって、一流クリエイターの完成品が売れにくくなっているのはクオリティーコモディティー化(高い品質の作品が増えた)からで、三流クリエイターの完成品が売れない理由は、シンプルに、完成品の完成度がクソだからに他なりません。
 
ここをゴッチャにしちゃダメだよ。
 
 

『プロセス』は“何を”売っているのか?を整理しよう!
 

「プロセスを売る」と言っても、プロセスの「何(どの部分)」を売るか?は、よくよく理解しておいた方が良さそうです。
 
昨日は、ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の「本読み」の配信がありました。
 
(※詳しくは今朝のVoicyで)
https://voicy.jp/channel/941/220554
  
特にコロナ禍においては「公演チケット以外の収入源の確保」はハチャメチャに重要で、とても大きな大きな一歩だったと思います。
 
一方で、反省点もありました。
 
それは、「本読み開始と同時に配信を始めて、本読み終了と同時に配信を切る」という判断です。
 
「1時半になったら配信を開始して、まずはプロデューサーが視聴者さんに挨拶をして、そのあと、本読みスタートとなります」といったような。
 
これだと、「【オフ】の体裁(てい)をとった【オン】」て、『朗読劇』の配信と、さして変わりません。
 
「裏側を見たいお客さん」がお金を払ってまで見たいのは、そこ「スイッチを入れたプロのキャストの本読みのクオリティー」じゃなくて、「普段の稽古場の雰囲気ってどうなってるのかな?」です。
 
つまり、本読みが始まる前の雑談も見たいし、本読み終了後の「あそこは、もっとこうした方が良いよね~」という議論や、真面目な議論をしたあとのブレイク(軽いジョークで場を和ませる)も見たい。
 
ここで整理したいのは、「一番売れるプロセスは何か?」という部分です。
 
メイキングの特典目当てでDVDを買うメイキングオタクの僕から言わせると、「稽古場から凄いプロ」も見たいのですが、もっともっと見たいのは「プロがスイッチを切っている瞬間」です。
 
おそらく、今回の「稽古場の生配信チケット」を購入してくださった方の中にも、そういう人はいて、結局のところ、『距離』にお金を払っている。
 
自宅から有料配信するアイドルに求めるのは、自宅でもメイクと衣装をバッチリ決めたアイドルではなくて、部屋着姿のアイドルです。
 
クオリティーの高いプレイヤーであればあるほど、近づきにくい(遠い)存在になるわけで、ならば尚のこと『距離』に一番の値が付く。
 
「稽古場の生配信」で『距離』にお金を払った人からすると、「いきなり本読みが始まる」に対しては、「それじゃない感」があったかもしれません。
 
ごめんなさい。
シンプルに僕の配慮不足です。
事前にスタッフに伝えておくべきでした。
 
ただ、本読み終了後にカメラを止めようとしていたスタッフに、食い気味で「カメラを止めるな」と指示を出しました。
 
「メインディッシュはここからだ」です😁
 
スタートは失敗しましたが、終わり方は成功しています。
本読み終了後の生々しい感じ(※主演の吉原光夫さんのピリッと質問や、オリラジ藤森君イジリ)はバッチリとカメラにおさめております。
 
本読み終了後はキチンと『距離』を販売できておりますので、興味がある方はチェックしてみてください。
アーカイブは13日の23時59分まで残るそうです。
#最後にリンクを貼っときますね
 
「プロセスを販売する」と一言で言っても、プロセス販売の前提や、「プロセスの何を販売するのか?」という部分はキチンと整理しておいた方がいいと思います。
 
そして、今回、いろんな「気づき」をくれるキッカケを作ってくれたプロデューサー陣の挑戦(裏側の苦労)には最大の賛辞を贈りたいと思います。
 
とても意味のある、とても大きな一歩だったと思います。
お疲れ様でした。
 
引き続き宜しくお願いいたします。
 
現場からは以上でーす。

 

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