西野亮廣のエンタメsalon

西野亮廣エンタメ研究所の過去記事を中心にアップしてます

2021年10月18日のエンタメ研究所の過去記事

おはようございます。
『映画 えんとつ町のプペル』初回の舞台挨拶が平日の朝(22日の金曜日の11時30分@大阪)ということを受けて、お客さんから「へ、平日の朝に舞台挨拶をするんですかっ?」と驚かれたので、「人が来れないところに、人を呼ぶから『舞台挨拶』の意味があるんじゃん」と余裕の表情で答えたけど、本当は「平日」だということを確認し忘れていただけだというこは絶対に黙っておいて欲しいキングコング西野です。
#膝の震えがとまりません

※【大阪の舞台挨拶】TOHOシネマズ梅田(10月22日(金)11時30分~↓
https://hlo.tohotheater.jp/net/schedule/037/TNPI2000J01.do

さて。
 
今日は『再現しきらない(しきれない)舞台の世界から考える、舞台版プペルのデザイン 【前編】』というテーマでお話ししたいと思います。
 
映画の再上映と、ミュージカル制作と、歌舞伎制作が重なるという未曾有の事態に突入し、(もうお気づきかもしれませんが)西野亮廣はバッキバキのクリエイティブモードです。
 
日頃から「『届け方』に頼るな。大切なのは、一にも二にも『クオリティー』だ。世界戦となると、尚更。クオリティーしか勝たん」と念仏のように唱えている西野ですが……、今日はまさに「クリエイティブ」「クオリティー」の話です。
#最近多いよね
#つまりそういうスケジュールなんです
 
今日は【前編】で、最後は皆さんに問題を出して終わります。
答え合わせは、明日の【後編】で。
 
是非、「舞台づくり」を体験してみてください😁
 
 

表現しきっちゃうとチープになることがある
 
絵本や漫画やアニメーションといった『絵』の強みは、「その気になれば、どこまででも表現できる」というところです。
 
描き込み量を増やせば、その分、工数も増えて大変ですが……しかしながら、「半径数キロメートルに及ぶ『えんとつ町』」を描こうと思ったら、描くことができるんですね。
 
炎ゴウゴウの火力発電所の内部に、『煙突掃除屋の少年』と『ゴミ人間』を走らせることもできれば、ものすごーくハチャメチャなトロッコアクションも可能です。
 
実は、これこそが「世界戦攻略」の一つの鍵で、『絵』だと、才能と根性があれば創造できてしまうので、「ハリウッドやディズニーや韓国や中国に『予算マウント』がとられにくい」というのがあります。
 
勿論、『絵』の世界でもある程度「予算の力」は働きますが、しかしながら、「お金をかければかけるほど素敵な絵になる」というわけでもないんですね。
 
『絵』に軸足を置いた時に勝敗を分けるものは、「予算」ではなくて、「作者の想像力」で、このフィールドだと予算力の無い日本人にも勝ち目はあります。
 
一方で…
 
「実写」の世界は、「才能と根性」に加えて、「予算の力」が大きく作品に反映されます。
3000万円かけて作られた映画と、100億円かけて作られた映画とでは、ストーリーの面白さはさておき、ビジュアルに大きな違いが生まれます。
 
当然、「基本的には、予算をかけられる作品の方が有利」というゲームで、日本の映画監督は常にこの問題と向き合いながら、世界と戦っています。
#それは本当に凄いこと
 
ここで、話を『舞台(演劇・ミュージカル)』に絞りましょう。
 
舞台は、そこに人がいて、そこに美術セットがある「物理の世界」です。
 
予算をかければかけるほど、ものすごーい美術セットが組めるので、舞台を作るときは『予算の開発』が物凄く大切になってきます。
 
が、どれだけ予算をかけても、物理的に再現できない部分も出てきます。
 
「半径数キロメートルに及ぶ『えんとつ町』」は、実際には劇場の中に作ることはできません。
なので、舞台では「ここには『えんとつ町』があります」という“テイ”で物語が進められます。
 
そして、ここが舞台の面白いところでして……
 
ファンタジーの世界を舞台上に再現すればするほど、【再現できなかった部分(“テイ”で乗り切っている部分)】が「ああ、ここは再現できなかったんだぁ…」といった感じで悪目立ちしてしまいます。
 
なので、舞台というのは『予算の力』が大きく影響する世界線ではあるのですが、しかしながら、「どこまでを再現して、どこまでを再現しないのか?」の線引きをキチンとしておかないと、「お金をかけてもチープになる」ということが起こってしまいます。
 
さて。
このあたりから、皆様へ問題を出したいと思います。
「演出家の仕事」を体験してみてください。
 
 

舞台版のプペルのデザイン
 
実写版のキャラクターをデザインする時も同じです。
 
予算をかけてこだわれば、ある程度のところまでは(絵本や映画のキャラクター造形を)再現できるのですが、再現できない部分が残った時に、「あぁ、ここは再現できなかったんだぁ」と悪目立ちします。
 
ミュージカルとなると「歌とダンス」が入ってきますので、「踊れる衣装じゃないといけない」という制約が追加されて、絵本や映画のようなキャラクターのビジュアルをそのまま再現できないことが多々あります。
 
ついでに言っちゃうと、皆さんも過去にたくさん見てこられたと思うのですが、「漫画のキャラクターを髪型から何から、そのまま再現すると、コスプレ大会になってスベる」という事故もあったりします。
過去、実写版『DEATH NOTE』の女スパイが漫画と同じように全身黒のボディースーツで街を闊歩していて、「お前、さすがに女スパイだろ」というオーラを放っていました。
#漫画のビジュアルをそのまま持ち込んだらダメだよ
 
…話を戻します。
 
ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』では、主演の吉原光夫さんが「プペル(ゴミ人間)」と「ブルーノ(紙芝居屋)」の一人二役をされるのですが、そうなってくると『早着替え』の問題が、「物理的に再現できない問題」「ダンス(動き)的に再現できない問題」に追加で乗っかってきます。
 
「歌って踊れるビジュアル(衣装&メイク)」をなんとかデザインしたところで、「ブルーノとプペルの早着替え」ができなければ、今回の舞台が成立しないのです。
 
ちょっと整理すると…
 
・なるべく絵本や映画に出てきたプペルを再現したい。
・だけど、歌って踊れるようにしなきゃいけない。
・早着替えもできるようにしておかなきゃいけない。
・そうなると再現できない部分が出てくる。
・再現できない部分ができるとチープに見えちゃう。
・さて、どうする?
 
…といったところ。
 
「ブルーノ」を再現しすぎてしまうと、「プペル」の見た目からは離れ、
「プペル」を再現しすぎてしまうと「ブルーノ」の見た目から離れるので早着替えができなくなる……という問題が出てくるんてすね。
 
さて。
皆様なら、この問題をどう解きますか?
#皆様のアイデアはコメント欄まで
 
こんな判断を数百個しなきゃいけないのが演出家のお仕事です。
 
答え合わせは明日。
 
そんなこんなで、今日も稽古に行ってきまーす。
現場からは以上です。

 

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