西野亮廣のエンタメsalon

西野亮廣エンタメ研究所の過去記事を中心にアップしてます

2021年10月19日のエンタメ研究所の過去記事

おはようございます。
鍋をつついている時に、厚手の手袋状の鍋掴みをパクパクさせながら「カバだよぉ~」と言ってくる田村Pを見て、親しき仲にも殺意はあるんだなぁと思ったキングコング西野です。

さて。

今日は『再現しきらない(しきれない)舞台の世界から考える、舞台版プペルのデザイン【後編】』をお届けしたいと思います。

【前編】をまだお読みになっていない方は、先に、昨日投稿した【前編】にサッと目を通してください。

今日は昨日の記事(問題)の「答え合わせ回」です。

 

歌舞伎に学ぶ「記号化」

昨日の記事のコメント欄には「身体の左半分をプペルにして、右半分をブルーノにする」「衣装をリバーシブルにする」「照明で何かイイ感じに違いをつける」…などなど素敵なアイデアがたくさんあって、とても面白かったです。


冒頭で「答え合わせ回」と案内させていただきましたが、あくまで今日は「“西野の答え”と照らし合わせる回」であって、100人いれば100通りの答えがあるのがクリエイティブの世界です。

なので、「へぇー、西野は、そうやって見せるんだぁ」という感じでお楽しみいただけると嬉しいです。何卒。

それでは本題です。

一人二役(早着替え)の見せ方としては、まずは『歌舞伎』が参考になるなぁと思いました。

写真で見たことがある人も多いと思いますが、歌舞伎には『隈取(くまどり)メイク』というものがあります。

歌舞伎役者さんが、指に「赤色」やら「青色」の絵の具めいたもの(ドーラン)を付けて、ピゃピャッと顔にラインが入れるアレです。

隈取は、「赤色」は正義、「青色」は敵のボス、「茶色」は鬼や妖怪(人間以外の者)…といった感じで、「役柄」によって使われる色が決まっています。

実際に妖怪の特殊メイクを施すのではなくて、顔に茶色のラインを入れることで、「この人は妖怪でーす!」とお客さんにアナウンスしているんですね。

妖怪を100%再現するわけではなくて、「妖怪=茶色の隈取」といった感じで「記号化(ルール決め)」をして、あとは“お客さんの想像力で補完してもらっている”んです。

ほら、小説とかで「少しツリ目だけど、笑うと可愛い女の子」という表現があった時に、自分(読み手)の中で、声やビジュアルを想像(補完)するじゃないですか?

あの感じです。

記号化の良い部分は「お客さんの頭の中にある“もっとも恐ろしい妖怪”」や「お客さんの頭の中にある“もっとも可愛い女の子”」を、そこに当て込んでもらえるので、実際に再現するよりもクオリティーが高い場合があること。

小説を実写化した時に、お客さんの方から「キャスティングミスだー!」という声が上がる理由はまさにこれで、想像(補完)した部分が、実際の再現に勝ってしまっているからです。

そんなこんなで、歌舞伎は隈取によって「キャラクター」を記号化し、お客さんに想像(補完)してもらうことによって、『早着替え』を可能にしています。

 

落語に学ぶ「半歩残し」

もう1つ、面白い話があります。

これは立川志の輔師匠に教えていただいたのですが、「落語」は一人で何人もの役を瞬時に(首の振りだけで)演じ分けるわけですが、その時に求められるのは「口調」や「所作」といった『記号化』の他に、「100%演じきらない」というのがあるのだそうです。

「オネエ役を100%演じきった次の瞬間に、少年の役を演じる」となると、オネエから少年までの差が大きくすぎて、首を振って演じ分ける瞬間(キャラクターが変わる)にガチャン!!となっちゃうそうです。
#急に説明が下手なやつ

「あ!今、役が変わった!」というのが悪目立ちしてしまうわけですね。

なので、落語の場合は、たとえば志の輔師匠なら、演じるキャラクターの中に50%ほど「立川志の輔」を残しておくそうです。

「オネエ50%+志の輔50%」→「志の輔50%+少年50%」として、間に「立川志の輔」を挟むことで、キャラクターチェンジのショックを和らげるのだとか。
#なるほどなー
#演じきっちゃダメなんだな

 

舞台版プペルのデザインはどうする?

歌舞伎に見られる「記号化」や、落語に見られる「半歩残し」あたりが、今回のファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の「プペル/ブルーノ」の一人二役のヒントになりそうです。

そう考えると、皆さんの方からも出てきた「身体の左半分をプペルにして、右半分をブルーノにする」「衣装をリバーシブルにする」「照明で何かイイ感じに違いをつける」あたりは、方向性としては合っていて、あとは、そこをもう少し丁寧に見せてあげる。

まず、思ったのは、「『プペルからブルーノに変わる時に、都度都度、舞台袖にハケて着替える』は無い」ということ。

落語のように、常に身体(キャラクター)を半分残して、お客さんの目の前で、演じ分けた方が面白そうです。

▼西野の演出プランは以下の通り↓
・衣装のベースは「ブルーノ」にしておく。
・「ブルーノ」の記号を「カンカン帽」と「ハッピ」にして、ブルーノを演じる時は、ベースの衣装の上に「カンカン帽」と「ハッピ」をまとう
・「プペル」の記号を「汚いターバン」と「ゴミのマント」にして、プペルを演じる時はベースの衣装に「汚いターバン」と「ゴミのマント」をまとう。
※「汚いターバン」は「配線の髪の毛」とセット

……とまぁ、こんな感じで「二つのアイテムで演じ分ける」ということにしようかと思ったのですが………さすがに、これだけだと芸がありません(笑)

そこで、吉原光夫さんの顔(身体)の左半分に、ゴッリゴリのゴミメイク(ときどき特殊メイク)を施そうと思います。

だけど、そんなことをしてしまうと、「ブルーノ」を演じる時に、左半分のゴミメイクが邪魔をしちゃうじゃないですか?

せっかく「カンカン帽」と「ハッピ」を着ているのに、身体の左半分にゴッリゴリのゴミが残っている。

…というわけで、

「『ブルーノ』を演じる時は、常に舞台下手(客席から舞台を見て左側)から照明を当てる」というルールを作ってみました😁

そうすると、ブルーノの身体の左半分(ゴミ部分)が黒い影になって見えないので、お客さんからは100%ブルーノです。

イメージしやすいように、スケッチを描いてみました。(※このあとガッツリと描き込んで、そのうちeluに出品します)

画像1


こんな感じで、ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』に出てくるプペルとブルーノは、「二つのアイテムで記号化する」&「身体の左半分をゴミにして、下手から照明を当てる」で演じ分けようと思います。

そのあたりの変身っぷりも、お楽しみください。
(※オンライン配信チケットはコチラ→https://meets.ltd/poupelle/ticket_1116/)


サロンメンバーさんに出題する演出クイズは「これぞ、エンタメ研究所!」といった感じで楽しかったので、またやりましょう😁

現場からは以上です。

 

 

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