西野亮廣のエンタメsalon

西野亮廣エンタメ研究所の過去記事を中心にアップしてます

2021年11月05日のエンタメ研究所の過去記事

おはようございます。
ホリエモンはパン屋さんを始めたし、鴨頭さんは焼肉屋さん(※マジで美味しかった!)を始めたし、幻冬舎の箕輪さんは「ラーメン屋さんをやる!」とか言い出してるし、「結局、『小学生の将来の夢』みたいな仕事が一番強いんだなぁ」と思っているキングコング西野です。
#そんな西野は不動産屋さんをやりたい

さて。
今日は『DXで獲得した優位性なんてハナクソみたいなもん』というテーマでお話ししたいと思います。

たぶん、全てのサービス提供者さんに関係のある話です。
 
 

道具だけで勝ち残れるわけねーだろ!
 
つくづく人間はダラシナイ生き物だなぁと思います。
ラクな方」に、いとも簡単に流れてしまう。

ラクな方」の中には「便利な方」も含まれているので、ラクな方に流れることは良い面もあると思うのですが、もちろん悪い面もあって…

まずは、皆が流れる方向に流れていまうと、「皆と同一化してしまって、ポジションをとれない」というデメリットがあります。

タピオカの利益率が高いからといって、皆がタピオカ屋さんを始めちゃったら、客を食い合い、タピオカが売れなくなり、「残ったのは初期費用の借金だけ」みたいなケースもあったりします。
#タレントYouTuberもこれに近い

あえて商売人的な表現をすると、皆が『認印』を押したサービスにあるのは「安心」であって、無いのは「商機」です。

「安心」と「商機」はトレードオフで、「商機」を狙うなら、「不安」や「いかがわしい」といったモノが必ず付いてきます。

ホリエモンや、鴨頭さんや、箕輪さんは、その圧倒的なビジネス戦闘力と発信力でもって、中央突破を狙っていて、きっと実現されると思うのですが、これは例外中の例外で、まだ何者でもない人が簡単に真似できる芸当ではありません。

「いかがわしいモノからしか文化は始まってないじゃん」と言う先輩から聞いた話ですが、先輩が1990年代後半に「インターネットの会社」を作ったところ、「あやしいヤツだ!」「反社に違いない!」と、オフィスビルを貸してもらえなかったそうです。

ちなみに、僕の体験談だと、(株)CHIMNEYTOWNの前身の『(株)NISHINO』を立ち上げた時(4~5年前?)には、とある大手銀行で法人口座を作ってもらえませんでした。

『事業内容』の欄に『オンラインサロン』『レターポット』と書いたからです。
担当者さんに、どれだけ説明しても、疑われるばかりで、1ミリも通じなかったのです。

《銀行の人》
「オンラインサロンって何ですか?」

《西野》
「希少価値の観点から見ると、完成品よりも、制作過程の方が高いでしょ? なので制作過程をサブスクで販売するんです」

《銀行の人》
「サブスク?」

《西野》
「月額制みたいなやつです」

《銀行の人》
「すみません。完成していないものを売るんですか? 完成していないものなのに、売れるんですか?」

《西野》
「はい」

《銀行の人》
「…はぁ。。すみません、『レターポット』って何ですか?」

《西野》
「『お金』のように『文字』を扱うサービスです。電報のオンライン版みたいなものだと思っていただけると、イメージしやすいかも」

《銀行の人》
「は?」

《西野》
「お金を取り扱っているお仕事だったら、『お金』と『文字』の機能が近いことぐらい分かるでしょ。なので、お金のように、文字を扱うんです!」

《銀行の人》
「それは、サービスなのですか?」

《西野》
「サービスというか、ギャグです」

…ここで試合終了です。

一説によると、「事業説明」の場で、「サービスというか、ギャクです」と答えてしまったことがトドメだったとも言われていますが、とにもかくにも、アマゾンの奥地に住む人以上に会話が通じませんでした。
#つらたにえん

商機は基本「いかがわしい」ので、こんな面倒もあったりします。
表で批判されているように、裏でもそこそこ痛い目に遭っているんです(笑)

ですが、僕のような弱小ベンチャーは、基本的には、そういった隙間からウネウネと登っていくしかなく、初期は「奇襲」と「秒速改善」の繰り返しです。

きっと、このサロンに入られている方も、当時の僕と同じような立場にある人が少なくないと思います。
「正攻法で行っても負けるし」的な。

なので、「新しい手法」には敏感に反応されていると思うのですが(正しいと思います!)、一方で気をつけなきゃいけないのは、「手法」はあくまで「手法」であって、「その手法自体が自分の身を守ってくれるものではない」ということと、「まだ何者でもない自分が選んだ打ち手は、誰にでも選べる」ということを忘れてはいけません。

「絵本の無料公開」を全員がすると、生き残るのは「クオリティーが高い絵本」で、
「プロセスの販売(プロセスエコノミー)」を全員がすると、生き残るのは強者です。

全員が銃を持った銃撃戦が始まると、兵隊の多い国が勝つのは火を見るより明らかで、クオリティーを後回しにして、「無料公開」や「プロセスの販売」を秘伝の必殺技のように捉える人は見事にくたばっていきます。

今日の話は、この延長です。

 

DXが目的になっている田舎企業
 
少ない戦力で戦うには、当然、できるだけ無駄を省くことが必要になります。

それもあってか、ここ数年は「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が叫ばれるようになりました。

「デジタル技術を取り入れて、自社サービスの運用方法を見直そうぜ」的な運動です。

余談ですが、「デジタル・トランスフォーメーション」なら、『DX』ではなくて、『DT』と略されそうなものですが……トランスフォーメーション(Transformation)の「トランス(Trans)」には「交差する」という意味があり、英語圏ではしばしば交差を1文字で表す「X」が用いられるところから、『DX』となっています。
#ネットで拾った情報を我が物顔で話すヤツ

今、猫も杓子もバカの一つ覚えのように「DX!」「DX!」と言っていますが、酒場の西野は、「“負けが確定している戦”を効率化しても仕方ねぇだろ」とよく言っています。

要するに、DXが正解なわけではなくて、「DXによって何を推し進めるか?」が重要だということです。

グローバルなIT企業の大逆転劇に、ついつい目を持っていかれますが、僕らが住む下界では、「DXに励んだベンチャー企業」と「動きがクソ重たいけど、認知も信用もある大企業」が衝突した場合、ほとんど後者が勝っています。

僕らの会社は、毎日のように、戦い方を探っては、秒速改善を繰り返していますが、それだけで勝ち抜けるほど甘い世界ではなくて、キチンとビジョンを持って改善していかないと世界では戦えません。

僕らは手を付けたDXは、他のチームにも手をつけることができるのです。

その時、『時間(歴史)』というのは本当に強くて、『えんとつ町のプペル』に費やした「8年」という【時間】…そしてそこに生まれた【コミュニティー】は、どんな大企業も真似はできなくて、そこではキチンと勝てています。

基本的には「他社がコピーできないもの」にDXの矢印を向けた方がいいと思います。

厳しいですが、「生き残りたいのなら、最適化するよりも、撤退した方がいいよ」という場面があるので、そこを見誤らないようにしたいですね。自戒を込めて。

そんなこんなで、今日もファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の稽古に行ってきます!

現場からは以上でーす。

 

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