西野亮廣のエンタメsalon

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2022年01月17日のエンタメ研究所の過去記事

おはようございます。
キングコング西野こと、『絵本と映画とミュージカルと歌舞伎とバレエを作ってる人』です。
 
さて。
今日は「プペルバレエの現在地と、『基礎の見直し』の重要性」というテーマでお話ししたいと思います。
 
 

プペルバレエの現在地
 
昨日、「バレエをやることになりました」という御報告をさせていただきましたが、「どういった経緯でやることになって、そして今はどんな感じなのか?」をお話ししたいと思います。

プペルバレエの企画は、バレエを愛するサロンメンバーさんの中で前々から進んでいて、「映画やミュージカルや歌舞伎に続けー!」といった感じでした。
 
そして、「やるからにはキチンと子供達の方を向こう!」と。
とても素敵なチャレンジだと思います。
 
その企画に僕が参加するキッカケは先日の『ニシノコンサル』(※ときどきコンサルをやってます)。
クライアント(相談者)は、プペルバレエの運営チームでした。
 
熱量が高く、とても素敵なチームだと思った一方で、気になったのは『脚本』です。
映画であろうと、ミュージカルであろうと、歌舞伎であろうと、もっとも大切なのは『脚本』で、プロジェクトに関わる全ての才能は、『脚本』次第で、活かされたり、殺されたりします。
 
そんなこともあって、「脚本(バレエのストーリー)はどうなってるんですか?」と質問したところ、「プペルバレエは、西野さんの絵本によく登場する『マルタ・サンポーニャ』がストーリーを裏で引っ張る役割を担っていまして…」という言葉が返ってきて、いきなり黄信号。
 
「…すみません。そのキャラクターは、たしかにボクの他の絵本にも出てきますが、プペルバレエだけを見た子供達からすると、『(チョイ役ならまだしも)ステージ上にずっと出てきていたアイツは何だったの?』となると思うのですが……その子供達の疑問は、どこかで回収するのですか?」と質問したところ、急にモゴモゴしはじめる運営スタッフの皆様。
 
その場で、とって付けたような説明をいただきましたが、まさか西野亮廣の壁がとって付けた説明で突破できるハズもなく、「…それだと、ココが矛盾してないですか?」と、やり込められてしまいます。
 
※ちなみに僕の追及はものすごーく優しい方で、これが、海老蔵さんや、吉原光夫さんになってくると、マシンガンのように質問が飛んできて、その場にいる全員が石化します。
#泣きだすスタッフもいます
#そんな世界です
 
基本的には僕の脚本には穴が無くて(キッパリ!)、どこか一ヶ所を変えてしまうと必ず矛盾が発生してしまいます。
 
あまりに心配になったので、「すぐに脚本を送ってください」とお願いして、コンサル後に熟読。
 
煙突掃除屋の少年(ルビッチ)が、「父ちゃんから貰ったブレスレット」を町中で落とす…といった改変がありました。
オリジナルストーリーだと「煙突の上から落っことしてしまうブレスレット」なのですが、何故、「煙突の上から落っことす」にしたかというと、
「煙突の上に、父ちゃんから貰ったブレスレットを持っていく為」で、
何故、父ちゃんから貰ったブレスレットを煙突の上に持っていくのかというと、
「星から一番近い場所(煙突の上)で、父ちゃんと一緒に星を観る為」です。
 
つまり、「煙突の上から、父ちゃんの形見のブレスレットを落っことしてしまう」は、「少年は、父と一緒に星を観ようとしている」という“ルール説明”で、町中でブレスレットを落としてしまうと、ルールが変わっちゃうんです。
 
ここの「少年は、父と一緒に星を観ようとしている」というルールを変えてしまうと、「いまだに星を観ようとしている少年をバカにするガキ大将」の立ち位置も、その少年を庇おうとするゴミ人間の立ち位置もボヤけてきてしまって、物語が崩れてしまいます。
 
歌舞伎に続き、バレエでも脚本の魔改造がおこなわれていて(……なんで皆、改造したがるの? それならプペルじゃなくて、自分の作品を作ればよくない?)、その旨を主催者さんに正直にお伝えしたところ、「そこまで手を加えてしまっている自覚がありませんでした…」と。
 
結構、厳しい意見かもしれませんが(サロンなので言います)、僕は、こういった(自分で責任を取りきれない)仕事を『挑戦』とは呼んでいなくて、『フリーライド』と呼んでいます。
 
※フリーライド=他社が築き上げた信用と名声に便乗して利益を得ようとする行為。
 
フリーライドに対する指摘はドリームキラー(挑戦を妨害する人)ではなく、シンプルに「その仕事、優しくないですよ」です。
「盛り上がっているところ申し訳ないですが、このままだと涙を流す人がたくさん生まれますよ」です。
 
そのことをお伝えして、今は改善に向かっています。
結局、僕がゼロから脚本を書くことになりそうです。
 
さて。
今日の話はここからです。
 
 

基礎の見直し
 
ここまで少し手厳しい話をしましたが、どっこい、「まず自分達で脚本を書いてみないことには、ここまで辿り着かなかった」というのも事実で、個人的には、これまでのバレエチームのアクションに無駄なことは一つも無かったと思っています。
 
ただ、問題はここからで…というか「ここからがリーダーの腕の見せ所」です。
 
事業が大きくなる時には、必ず「成長痛」が起きます。
そこでよくあるのが、「事業が小さかった頃には上手く機能していた基礎(地盤)が悲鳴を起こす」です。
 
小さな土地(あるいは地盤がゆるい土地)に、建て増し建て増しを繰り返すと、どこかのタイミングで地盤が耐えられなくなるわけですね。
 
大切なのは、ここで勇気を持って、一旦、止まることだと思っています。
一旦止まって、事業の拡大に備えて、基礎を見直す。
 
それをするには、売り上げやら何やらを、一旦失ってしまうのですが、リーダーはそれをやらなくちゃいけない。
それをやらないと、必ず『みずほ銀行』モードに突入します。
 
チームメンバーが5人の時と、数十人、数百人の時は、ハンドリングが全然変わってきて、「あの人に任せれば大丈夫」でやってきたことができなくなったり、ワイワイと文化祭ノリでやれていたことが、ある時から突然、「クオリティーが低いから、一緒にできません」と断られる言葉が増えてくる。
 
クリエイティブの現場だと、「ちなみに、そのプロジェクトには誰が参加して、どんな仕事をしてるの? ポートフォリオを見せて」と言われることが多いので、リーダーは「売れない頃からずっと一緒に走ってくれたデザイナーの首を切らないと、チームが崩壊する」という決断に迫られることも日常茶飯事です。
 
「能力の無い人はサヨウナラ」で、千人に一人、一万人に一人しか生き残れない世界です。
 
「基礎の見直し」には、プログラム(システム改善)だけではなく、「人事」の仕事もゴッリゴリに入ってきて、リーダーはそこを背負わなくちゃいけない。
 
事業拡大の際の「基礎の見直し」から逃げてしまうと、その事業は少し先で必ず崩壊してしまうので、後回しにしない方がいい。
 
自分達のチームがどこを目指すのかを明確にして(※拡大が全てじゃない)、そのゴールに対して、現在の地盤は耐えうるのか?は常に考えておいた方がいいと思います。
 
これはリーダーの仕事です。
 
現場からは以上です。

 

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