2022年04月09日のエンタメ研究所の過去記事
おはようございます。
その昔、イベントによく遊びに来てくれる子供に「レゴを開発した時の苦労(作り話)」を語ったことがあるのですが、その子が今でも西野がレゴを開発したと信じているもんだから、完全に追い込まれているキングコング西野です。
さて。
今日は、いつもと趣向を変えて『普段、プロは何をしているのか?』というテーマでお話ししたいと思います。
ちょっとだけ面白い話です。
仕事が雑すぎる
この話をしようと思ったキッカケは昨日の鴨頭善人さんのVoicyなんですけども、昨日の放送では「プロの女優が『自然な演技』をする背景には、どんな努力(意識)があるのか?」について語られていました。
一言でまとめると「プロの仕事は『センス』みたいな安いもんで片付けてねーぞ」といったところです。
※詳しくはコチラ→ https://voicy.jp/channel/1545/305178
仕事柄、国内外いろんな舞台やライブやイベントに足を運ぶようにしていて、少しでも気になれば、「行政からお金を引っ張ってきている地方イベント」にも行くようにしています。
感想としては(多くの)「行政からお金を引っ張ってきている地方イベント」に関しては、問答無用で「お金(予算)の無駄遣いが半端ない」です。
見積もりを出す側の「予算のかけ方がヘタクソ」というのに加えて、「予算の相場観」を知らない人が仕切っていたりするので、金ドブ地獄コンボです。
「ダメな地方創生」の例として、よく「『イベントをやって終わり』の地方創生」が挙げられますが(そのとおりだと思います)、ただ、そもそも、「そこで、行われているイベントが地獄イベントすぎる」があったりします。「今どき、こんなの誰も興味ねーだろ」的な。
ところ変わって、「都会のイベント」はイケているのか?というと、これもピンキリです。
超絶イケている(ちゃんと盛り上がっている)イベントもあれば、実際のところは「う〜ん…」というイベントがほとんどです。
「あちゃ〜、雑だなぁ〜」という感想を持つことが少なくありません。
こんなことを言うと、「そんなことを言ってるオマエはどうなんだ?」という話になると思うので、今日は、僕らの仕事の一部を少しだけ共有します。
ミュージカル『えんとつ町のプペル』のオープニング
端末が2個あれば、できればこらからご紹介する動画を観ながら同時進行で記事を読んでいただきたいところですが、それも面倒だと思うので、まずは、こちらの動画をご覧ください。
ミュージカル『えんとつ町のプペル』↓
https://www.youtube.com/watch?v=D9EU5OtQM3o
「空がまだ黒かった頃…」というルビッチ君の語りから始まるミュージカル『えんとつ町のプペル』のオープニングシーンです。
舞台はここから始まるわけですが、この「始まり方」、ちょっと気持ちよくなかったですか?
プロはここから「何が、このオープニングを気持ち良くさせているのか?」を吸い取れないといけないのですが、実はコレ、曲の調子・変化に合わせて、見栄えするように、役者さんの台詞の「タイム」が秒単位で決まっているんです。
台本にある…
〓〓〓〓
「〜僕の父ちゃんは『えんとつ町』と読んだ。煙突がたくさん立っているからだ」
「えんとつ町は煙突だらけ〜〜輝く星を知りやしない」
「〜皆に聞かせた」
「酒場で出会ったお喋りモグラが〜」
「大人達は皆、呆れ顔〜ハロウィンの夜に心臓が降ってくることだって」
「あの頃、この町は〜 これは夜の町の最後の夜の物語」
〓〓〓〓
というセリフの下には…
〓〓〓〓
「〜僕の父ちゃんは『えんとつ町』と読んだ。煙突がたくさん立っているからだ」
【0:22~0:26】
「えんとつ町は煙突だらけ〜〜輝く星を知りやしない」
【0:28~0:40】
「〜皆に聞かせた」【0:48】「酒場で出会ったお喋りモグラが〜」
「大人達は皆、呆れ顔〜ハロウィンの夜に心臓が降ってくることだって」
【1:00~1:24】
「あの頃、この町は〜 これは夜の町の最後の夜の物語」
【1:28~1:50】
〓〓〓〓
…というタイムの指示が書かれていて、役者さんは1秒でも狂わせちゃダメなんです(笑)
【】の前後で曲の調子が変わるんです。
これをキチンを守れば、ルビッチ君の「〜最後の夜の物語」というセリフ終わりで、ドンピシャのタイミングで「ドンドン!」というドラムが入って、お客さんの背筋が「ゾクゾクッ」となります。
ちなみに、タイム指示はこの後も続いて、もちろん、このタイム指示は役者さんだけではなく、照明さんや音響さんや特効さん(スモークを出すスタッフさん)にも、それぞれあります。
舞台監督さんには、「(2:24)で、このあたりにスモークがたまるように、スモークの出量をコントロールしてください」とお願いしたりしています。
西野がM A Xでヒドイ時には「空調の指示」まであります。
寒いシーンで、「実際に劇場の冷房を強める」といった(笑)
リハーサルでは、「客席が冷えるまでに何秒かかりますか?」という会話が飛び交っています(※キネマ倶楽部では空調設備の関係でできませんでしたが)。
そして、プロはそれを本番(生)で確実に決めるんですね。
「いい感じのシーンで、いい感じの曲を流す」という雑な設計図じゃないんです。
プロの設計図は、メチャクチャ厚くて、もちろんプロにしか扱えません。
「この長台詞を『54秒ちょうど』で言ってください」と素人にお願いしても、再現できないんですね。50秒の時もあれば、1分の時もあるのが素人です。
僕がよく講演会を主催してくださる方に、「変な演出とか絶対にしない方がいいですよ」と言っているのは、まさにこれ。
「満足度」というのは相対的なものでありますから、普段、この調子で「ミリ単位で作り込まれた舞台」を観ているお客さんが、「そうではない舞台」を観た時のガッカリ感(「何してんの?」感)ときたら半端ないので、絶対に「同じ棚」に並ばない方がいい。
「同じ棚」に並ぶと比べられてしまって、プロには確実に勝ち目がないので、「今日は素人が仕切っている講演会なので『演出』とか無いっす!」と割り切るか、あるいは、キチンと結果を出せるプロを入れた方がいいと思います。
今日は、プロのお仕事を少しだけ紹介してみました。
たまには、こんな回があってもいいよね💌
現場からは以上です。
【※追記】
コメント欄にあった振り付けのSHOJIN先生のコメントを共有しておきます(さすが!)↓
振付を作る際、
秒単位の曲割を作り、
そこに振付や構成を当てはめていきます。
面白いもので音楽を解析するプロになれないと、プロの振付師にはなれません。
それも0.何秒の世界で。
ラストのサビの1番盛り上がるところまでどう踊りを展開させていったら良いのか、など、ただダンスだけを考えれば良いわけではなくて、そこにはプロのダンサーの域を超えたプロの振付師としてのスキルが必要になります。
乾さん(心臓)にゴミが巻きつくまで、
音楽の展開に合わせて、
最初はソロでこんな動きから始まって、
ゴミが出て来たらこんな感じで動いて、
風がビュービュー電気ビリビリなってるところはあえてラストダンスを盛り上げるためにスローにしよう、
などなど。
サロンの皆さんは、
今日の記事に併せてぜひ心臓登場からのダンス展開にも注目してみてください😊✨
SHOJIN
【追伸】
「https://salon.jp/nishino」を付けて今日の記事の感想を呟いていただけたら、西野がエゴサーチで見つけ出してニヤニヤします。
宜しくお願いいたします。