西野亮廣のエンタメsalon

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2022年02月26日のエンタメ研究所の過去記事

おはようございます。
今日は11時からフットサルが入っているので、サロン記事をとっとと片付けたいキングコング西野です。
#どんだけハマっとんねん。

さて。
今日は『地方創生は何故、上手く行かないのか?』というテーマでお話ししたいと思います。

散々、こすられ倒しているネタですが、これに関しては「外野の意見」ではなくて、実際に自分(ボク)が足を突っ込んで感じたアレやコレなので、それなり説得力はあると思います。

地方創生の話が軸にはなりますが、おそらくこれは「チーム作り」の話だと思います。

 

企画書の問題

地方創生の支援の一つに【地方創生推進交付金】というのがあります。
南無阿弥陀仏ぐらい漢字が並びすぎていて嫌ですが、要するに、行政が「地元を盛り上げる為に必要なお金」をくれるんですね。
これには返済義務がありません。

「地元を盛り上げよう!おー!」となった時に、多くの人が、この支援に頼るのですが(それ自体は悪いことじゃない)、ここにはシステムエラーがあって…もちろん何でもかんでもお金を出してくれるわけではなく、「地域再生計画」なるもの(企画書)を申請して、認定されたものに「交付金」が降ります。

つまり、ハンコ(認印)を貰わないといけないわけですが…ポイントは「ハンコを押す人も地元を盛り上げた経験などない」ということです。

秋元康さんや小山薫堂さんや森岡毅さんや小橋賢児さんのような「集客」や「文化づくり」のプロが判断しているわけではなく、(名刺には立派な肩書きこそついているものの)「集客」や「文化づくり」の素人が、判断しているんですね。

素人は経験が無いので、「他の町の成功例」を判断基準にするしか無いわけですが、これは地方創生に限らず、「世の中のほとんどの成功例」には再現性がありません。

再現性が高いのは、むしろ「失敗例」です。

本来、作成しなきゃいけないのは、「あれをやったら爆死するよね」という爆死リストなのですが、「素人に提出しなきゃいけない企画書」というのは厄介で、「Aの町で上手くいったこれを、我が町でもやりましょう」といった感じで、成功例を持ち出して、“素人でも完成形が想像できる形”で提案しないと、通らないんです。
#これ本当に厄介

「絵本『えんとつ町のプペル』を分業制で作る」と発表した時に、アンチはおろか、ファンの皆様からも反対されたのですが、当時のファンの方に悪気なんて1ミリもなくて、今から10年前の日本人の素人には「クラウドファンディングで予算を集めて、クラウドソーシングでスタッフを集めて作られる絵本の完成図」なんて想像できないんですね。

だって、誰もやったことがないんだもの。

だから、ほとんどの人は、どこかで見たことがある「成功に近いもの」しか応援できない。

僕の場合は、アンチは勿論のこと、ファンの方のご意見もガン無視(#さすが西野)で『えんとつ町のプペル』の制作を進めましたが…
地方創生となると、ここでいう「ファン」の方(素人)のハンコを押してもらわないことにはプロジェクトを進めることができないんですね。

なので、『くまモン』に憧れて、金食い虫たる「ゆるキャラ」を量産してしまう。
当時、提出された企画書に『くまモンの経済効果』みたいな文字が踊っていたことは容易に想像できます。

「行政のお金は返済義務もないから(身銭を切っているわけでもないから)、命懸けでそのプロジェクトに臨まない」という側面もあるとは思いますが、それより何より、「企画書を受理する側が圧倒的素人である」ということの方が問題です。

日本全国いろんな地域を見てまわりましたが、上手くいっている地域の共通点は、「他の町の成功例のコピー」ではなく、「よく分からないので、任せます」という姿勢でした。

そして、その姿勢でもって、「正しい人」を選ぶ。
うんたらコンサルタントとか、うんたらシンクタンクとかじゃなくて、「直近で実績を出している人」に丸投げ。

これは僕自身も「チーム」を作る時に心がけていることで、まずは「しかるべきプロ」を選び、「思い」や「方向性」や「好み」をたくさんたくさん話し合って、あとは、丸投げ。
大切なのは「人選」と「丸投げ力」と「コミュニケーション」です。

 

「住む町」を作るのか、「行く町」を作るのか、ハッキリしろ

ここは大きな問題だなぁと思います。

「地元を盛り上げる」と言って、イベントを仕掛ける地域があったりしますが、僕らは「フジロックフェスティバル」に参加することはあっても、それが理由で新潟見湯沢町には住みつくことはありません。

イベントの成功が町の再生に直結しているかというと、「そういうこともあれば、そうでないことの方がほとんど」というのが正しい見立てでしょう。

住民票を置いてくださっている地元住民の方への「特典」としてのイベントの開催は大いに結構ですが、「イベントをカンフル剤として、移住者を増やす」みたいなケースが散見されます。が、これはやっぱり上手くいかない。

「住む町」なのか「行く町」なのかを明確にした方がいいと思います。

そして「ウチは住む町!」と決めきった時の問題としてあるのが、「自前(地元の人間)で全部やっちゃう」ということです。

基本的には、才能は中央(ニューヨークや東京みたいなトコ)に集まっています。
ちゃんと才能にコンタクトをとった方がいい。

しかしながら、そこの才能に声をかけたところで、声をかけられた人にとっては、最後の最後で「自分が住む町じゃない」があるので、遠隔仕事になってしまいます。
「こうやればいいと思いますよ」といった。

恥ずかしながら、僕も最初はそのスタンスだったのですが、結論、「行く町」を作るのならそれでもいいのですが、「住む町」を作るのなら、それじゃいけない。

遠隔仕事だと、「隣の家の松の木についている毛虫がウチのベランダに入ってきて困ってます!」という住民の悲鳴を聞き取ることができないんですね。

長々と話してきましたが、今日の解決策は一つで、『「集客」や「文化づくり」の実績とノウハウがある奴が、実際にその町に住んで、【自腹】で町を作っていく』だと思います。

そんなこんなで、今、作っている町の中に、自分の家を建てています。
 
そして、向かいの家に住んでいるお婆ちゃんの「毛虫トラブル」の対応も、何故か、僕がやっています(笑)
「僕の方から家主さんに言っておきますね」とか言ってる(笑)

さて。
この本腰を入れまくった町づくりは、一体どうなるのでしょうか?
乞うご期待でございます。

自宅工事の様子を添付しておきますね。

現場からは以上です。

 

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