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2020年06月15日のエンタメ研究所の過去記事

6月15日(月) ※6月17日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
挑戦する人の背中を後押しすることを決めているものの『プリズンブレイク』のセカンドシーズンを観ようとする人のことを懸命に引き留めることで有名なキングコング西野です。
さて。
今日は『薄利多売からの脱出』というテーマでお話ししたいと思います。
経営者に限らず、クリエイターや表現者、とにかく全ての方に関係のある話です。
※今日は長いです。
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▼ 「お金のブロック」は外せたけど…
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よく「日本人はお金リテラシーが低い」というような話を聞きます。
たしかに、親も学校の先生も「お金」の話を教えてくれず、僕たち日本人はお金音痴のまま社会に放り出されます。
お金音痴と化した日本人は「お金は、働いたら貰えるもの」としか捉えていません。
それだけならまだしも、お金について学ぼうとする人を「銭ゲバ」として扱い、攻撃してしまいます。
「お金=汚い」「お金を扱う人=下品」というブロック(ブレーキ)がかかってしまっているわけですね。
かくいう僕も、(25歳頃まで)そのブロックがかかっていて、「自分で予算を作る」という発想がなく、当然、パフォーマンスの規模は「会社や社会が用意した予算内」に収まるものでした。
イベントはチケットの売り上げ内で作っていましたし、本は印税(生活費)内で作っていました。
これだと勝負になりませんし、スタッフを守っていくこともできません。
その頃から「お金」の問題と真面目に向き合い、「予算の作り方」「予算を最大化する為のお金の流れ」「その時々の、お金の価値」について考えるようになり、今に至ります。
クリエイティブに関しては、かなり大きな規模で進められるようになりました。
ウチの新入社員やインターン生にも「エンタメで世界相手に戦うのなら、お金と広告の勉強は徹底的にした方がいいよ」と何度も言っています。
このサロンにいらっしゃる方は「お金」の問題と向き合うことはとても大切な課題(=そこをクリアしないと守るものも守れない)ということは百も承知で、「お金のブロック」と呼ばれるものは外されていると思うのですが、実は、サービス業を営む上で、もう1つやっかいなブロックがあるなぁと思っています。
それは、「高価格」に対するブロックです。
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▼ 高い値段を付けられない病
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ときどき、サロンメンバーさんの会社のコンサルをやらせてもらっているのですが、「やるからにはトコトン向き合う」が信条で、打ち合わせ中は、おもくそ算盤をはじきます。
そこで、よく出くわすのが「サービスの価格設定が低すぎる」という問題です。
少し踏み込んだ話になりますが、そのサービスAが、(自分が手掛けている)別のサービスBのチラシ的な役割を果たしていて、「マネタイズは、サービスBでする」というのであれば、安くても問題ないと思います。
それこそ『えんとつ町のプペル』は無料公開しているので。
ただ、一つのサービスしか手掛けていない人が、そのサービスの価格を下げてしまうと、当然、待っているのは激務薄給で、身体を壊しやすくなりますし、身体を壊した時(収入がストップした時)の蓄えもありません。
くわえて、薄利多売(数をこなさなきゃ回らない仕事)は、コロナとの相性は最悪で、一発でクビが飛びます。
飲食店の場合だと「1カ月休業で5カ月分の利益が消える」と一般的には言われています。
そんなことは分かっているのに、僕たち日本人は「高品質&低価格」を、いつまでも追い求めてしまい、それこそがサービス提供者の美しい姿だとしてしまっています。
実際に、コンサルをさせてもらったサロンメンバーさんにも「このサービス、価格を上げた方がいいですよ」とアドバイスをさせてもらったのですが、返ってきたのは「お客さんから、それだけの金額を受け取っていいものか…」という言葉でした。
ここに「高価格」に対するブロックがあります。
ここで僕たちは学ばなければなりません。
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▼ 「高い」「安い」を金額で判断しちゃダメ
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シルク・ドゥ・ソレイユのA席のチケットは6500円です。
一方、そこまで友達でもない舞台役者(無名の新人)から押し売りされるチケットは4500円。
後者の舞台は、脚本・演出は雑だし、そもそも役者の声が小さい。
間もヘッタクレもないツッコミで全てのボケを殺し、笑っているのは最前列を陣取っている地下アイドルのオジサンファンだけ……
「どちらのチケット代の方が高いか?」と訊かれれば、全員が4500円のチケットを選ぶでしょう。
要するに、お客さんが価格を判断する時は、金額オンリーではなく、「満足度に見合った金額か否か?」という一点です。
この時、サービス提供者は「値段を下げて満足度を上げる」という道を選びがちですが、人口が減り続け、ウイルスのリスクもある時代のサービス提供者が目を向けなけらばならないのは、そっちの道ではなく、「値段を上げて、その値段に見合う満足度を生む」という道です。
要するに『薄利多売』は親切でも何でもなくて、「付加価値を創造することからの逃げ」です。
安くしとけば考えなくていいので。
ただ、「それで逃げきれる時代じゃないよね」というのが今、直面している問題です。
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▼ プロダクトは売り物にならない
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「今の時代はサービスの単価を上げなくちゃいけない」というところまでは辿り着いたとしても、ここで大きな矛盾が僕らを襲います。
それは、「あらゆるテクノロジーによって、生産性があがって、生産コストが下がっているのだから、プロダクト(生産物)そのものには、どうやったって高い値段は付かない」という問題です。
ここなんです。
プロダクトそのものに生産コストがかかっていないことをお客さんは知っています。
プロダクトの値段を上げようと思ったら、お客さんが納得のいく原価がないといけないので、原価も上がってしまいます。
以前、『一万円カレー』というのが少し話題になりましたが、伊勢海老やらアワビやらが入っていて、結果、そこまでの利益が発生していない。これだと『薄利多売』の枠から出ていないんですね。
一昨日、ホリエモンと飲んでいて、彼が『一万円ラーメン』の店を出したというので、「堀江さんが一万円カレーを作るなら、どうします?」と訊いたところ、
「伊勢海老やアワビといった派手な具材を見せつけて、見映えするカレーにせずに、とにかく見た目は普通のカレーにする。その方が会話のネタになるじゃん」
と返ってきました。
人間の言葉に翻訳すると、「『食』に高い値段は付けられないから、『コミュニケーション』を販売するよ」です。
(※ラーメンはよく「情報を食っている」と言われます)
伊勢海老やアワビがお皿にのっていると、「そりゃ1万円するよね」となり、そこからコミュニケーションが生まれることはありませんが、見た目そのものが何のヘンテツないカレーだと、「何で、このカレーが1万円するの?」という疑問が生まれ、コミュニケーションが始まります。
カレーの意味を変更したわけですね。
キングコング西野はよく「意味変だ!意味変だ」と騒いでいますが、『薄利多売』からの脱出する際にも意味変能力は必要になってきて、いっそのこと「プロダクトは売り物にならない」と決めちゃった方がいいんじゃねぇかなぁ?と思っております。
ちなみに(少し変則的ですが)、僕の絵本は絵本の売り上げで収益化をしておらず、絵本を作るまでの物語を販売しております。
2000円の絵本(作家印税10%)が1万冊売れたら、作家の手元に200万円が入ります。
6万5000人のサロンメンバーに絵本製作の紆余曲折を綴った記事(1日分)の売り上げは、約216万円。
印刷にこだわればこだわるほど原価も上がるので、絵本一冊あたりの利益を上げることは不可能です。(限界がある)。
そんな中、絵本を1万冊売るより、製作過程の物語を1回売った方が収益が出ています。
サービス提供者は、このあたりの問題(どのように意味変をして、プロダクト以外のものを売っていくか?)と向き合っていかなくてはいけません。
現場からは以上でーす。
(※長くなってごめんね)
【追伸①】
サロン記事の感想を呟かれる際は、文章の最後に『salon.jp/nishino
 
』を付けて《本垢》で呟いていただけると、西野がネコのようになつく場合があります。
【追伸②】
いつも、編曲をお願いしているヤナエルさんに『夢幻鉄道』の編曲をお願いしました。
こちらはファーストデモです。
ヤナエルさん、歌うますぎ。
 
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