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2021年03月28日のエンタメ研究所の過去記事

3月28日(日) ※3月30日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
今日の仕事が「兵庫県川西市で物件の下見→山口県でクルーズ船の下見→岡山県で物件の下見」のキングコング西野です。
さて。
今日は『あの人はイイ人なのか、それとも計算高い人なのか?』という話をしたいと思います。
日曜日なので、ゆったりとした話です。
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▼ ワイン問題
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先日、経営者の友人から、こんな話を聞きました。
「コロナで困っている飲食店の友人から、『店に食べに来て』と頼まれたけど、なかなか時間が作れなかったので、会社の皆で出前をとったところ……頼んでもいない高級ワインを付けられてビックリした!」
高級ワインはサービスではなく、料金を請求されたそうです。
そして、友人はこう言葉を続けます。
「こんなことをする店、大切な友人に紹介できないじゃん」
…そりゃそうですよね。
大切な友達を、自分と同じ目に遭わすわけにはいきません。
さて。
この『ワイン問題』をどう切り取るか?
「性格の悪い店主だ!」と結論してしまうのは少し勿体無いと思うんですね。
そんなことよりも、もっと「損得勘定」ベースで考えた方が良くて……
この店主は「ドサクサに紛れてワインが売れた。ラッキー」と思っているかもしれませんが、それによって、「お客さんが友人(新規顧客)を呼べない環境」を作ってしまったので、トータルで見た時に店の売り上げは大幅に落ちている。
この店主は「性格が悪い」のではなくて、シンプルに「算数が苦手」というところだと思います。
友人はその店の常連客で、頼んでもいないメニューを勝手に出されて、料金を請求されたのは今回が初めてだそう。
よっぽどお店の経営に行き詰まっていたのだと思います。
とにかくお金を生まなきゃいけなかった。
目的が「お金を作ること」なら尚更、算盤は正しくはじいた方が良さそうです。
これは去年もお話ししましたが、「飲食店のサービス」の価値は、世界中の人が「コロナ=飲食店は困窮している」と認識している今が最も高くなっています。
正しく算盤をはじくなら(店の売り上げのことを考えるのなら)、「コロナが明けたから、またお店に来てください」と言って、今こそ常連客に『高級ワイン』を無料で提供して、返報性の原理を働かせるべきだと思います。
(※返報制の原理=人から何かしらの施しを受けたとき、「お返しをしなくては申し訳ない」というような気持ちになるという心理作用のこと)
要するに「張り時」なんです。
この時、頭をよぎるのは「そんな、したたかなヤツ、気持ち悪くない? そういうことを天然でやれる人がイイ」だと思うのですが、まさに、そこが今日の本題です。
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あの人はイイ人なのか、それとも計算高い人なのか?
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これまで、コロナ禍で頑張る経営者さんをたくさん見てきました。
その中でも、美容室『NORA』代表の広江さんや、ドイツで飲食店を経営されている大矢さんといった方々は、とにかく施しまくっていたんです(笑)。
街から人が消えて、実店舗は瀕死状態。
表参道の美容室も、ドイツの飲食店もご多分に漏れず。
「いやいや、あなたが今、一番ツライ時でしょ。なんでサービスしちゃってんのよ(笑)」と何度も思いましたし、サービスしてもらった側としては数倍にして返そうと思いました。
思いますよね。
自分よりも明らかに、お腹ペコペコの人が「おむすび」を恵んでくれるんだもの。
じゃあ、広江さんや大矢さんに「ここでサービスしたら、あとあと大きくなって返ってくるから、シメシメ…」という下心があったか?……というと、たぶん、『天然』だと思います(笑)
「お店は皆さんがあってのものだから」という『イイ人』を天然で炸裂させている。今は!
たぶん、広江さんも、大矢さんも、最初は違ったと思うんです。
店や従業員を守る為に、全身の算盤をはじきまくった。
その結果、「お客さんを勝たせた方が得をする」となった。
そうなんです。
サービスを何年も、何十年も回し続けようと思ったら、お客さんから搾取しちゃダメで、お客さんを勝たし続けなきゃいけないんです。
ということは、『イイ人』をやり続けることになる。
『イイ人』をやった方が利益が出るので。
そして、お店や従業員の為に『イイ人』という役割を演じているうちに、『イイ人』が板についてしまって、どこかに算盤を置き忘れて、「皆が困ってるんだから、助け合おうよ」というイイ人になってしまう。
木村拓哉木村拓哉を演じているうちに木村拓哉になっちゃうような感じです。
優秀な経営者は総じて人格者ですが、「もともと人格者だった」というよりも、「算盤をはじきまくった結果、人格者になった」というケースの方が多いと思います。
年齢を重ねた優秀な経営者は「困った人がいたら助けなさい」という解像度ゼロ点の仏みたいな台詞を吐くようになりますが、損得勘定の積み重ねがそうさせたのだと思います。
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はねるのトびらで学んだこと
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「搾取しちゃダメ」で思い出すのは、僕が二十歳の頃です。
はねるのトびら』のスタートと同時に上京して(大阪にも家はありましたが)、とにもかくにも血気盛んなキングコング西野は「誰よりも笑いをとってやる!」と全ての収録を鼻息荒く臨み、他の芸人やタレントが笑いを取ったら、全てかぶせて、「俺の方がウケた!」を狙いまくっていました。
ですが、『はねるのトびら』は、それを許しません。
西野と絡んで、西野が点をとってしまうと、「西野がいる番組には出たくない」と考えるタレントが生まれるからです。
大御所であれば「ゲストよりも笑いをとる」に納得感がありますが、一年目の芸人がゲストの笑いを奪ってしまうような、そんな番組に、誰が出たいと思うでしょうか?
はねるのトびら』は最初(東京ローカルの深夜番組時代)から全国ネットのゴールデンタイムの20時の枠を狙っていて、そこで総合演出から強く言われたのが「そこに行きたければ、20点以上を取るな」でした。
つまり、「ゲストを勝たせろ」ですね。
若手の頃のダウンタウンの浜田さんと、今のダウンタウン浜田さんとの違いが分かりやすいのですが、誰よりも笑いを取りにいっていた若手の頃の浜田さんよりも、今の浜田さんの方が、ゲストの取り分が大きいんですね。
ただひたすら笑って、メチャクチャ最高のタイミングで「なんでやねん」と頭を叩いてくださる。
ワインの話を聞いた時に、「僕はメジャーになりたいから、強引にシュートを決めにいくのはやめよう」と決めた二十歳の頃を思い出しました。
優秀な経営者さんを見ていると、『イイ人』というのは『損得勘定』の対極にあるものではなくて、延長にあるものだなぁとつくづく思います。
逆に言うと『損得勘定』を無意識レベルでやれるようになっておかないと『悪い人』になっちゃう。
人に優しくなる為に、勉強というのは超大事だなぁと思いながら、これから「えんとつ町」の物件を見てきます。
素敵な休日をお過ごしください。
現場からは以上でーす。
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【お知らせ】
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まもなく『映画 えんとつ町のプペル』の上映も終わるので(ありがとう!本当に!)、「そろそろ見納めだなぁ」と思って、3月29日に渋谷HUMAXシネマ(14時55分)に観に行くことにしました。
写真を撮ったり、サインをしたり、握手をしたり、差し入れを受け取ったり、お喋りしたりすることはできませんが、全力で会釈させていただきます。
お時間あれば、是非!!
 
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