西野亮廣のエンタメsalon

西野亮廣エンタメ研究所の過去記事を中心にアップしてます

2021年06月26日のエンタメ研究所の過去記事

6月26日(土) ※6月28日以降は『いいね』を押さないでください。
━━━━━━━━━━━━━━━
おはようございます。
最近は「酔っ払っている状態で、いかにクオリティーを出すか?」を追求しているキングコング西野こと「Mr.人生詰んだ」です。
さて。
今日は「現代の映画とは何なのか?」というテーマで、お話ししたいと思います。
「映画の話は、僕には関係ない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、クリエイターさんや起業家さんと話をすると、いつも各業界で起きている問題は、時間差はあれど、ほぼ同じようなことが起きているので、今回の話も、何かしらの参考になるかもしれません。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ ここ最近の映画の動きから見えてくるもの
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
映画のお仕事に関わるようになってからというもの、デイリーの「観客動員」を毎日チェックしています。
普段、生活していると、あまりこういう数字は見ないですよね。
ただ、ず~っと見ていると、様々な課題が浮き彫りになってくるので、結構面白いです。
ちなみに昨日(6月25日)の「観客動員数」と「上映館数」も調べてみました。
⭐マーク」が付いているのは、映画公開日から2週間以内の新作です。
昨日の数字はこんな感じ↓↓
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】 19039人 302館 
⭐ザ・ファブル 殺さない殺し屋』
【2】 16199人 203館
【3】 14254人 306館 
るろうに剣心 The Beginning』
【4】 13347人 264館
⭐『キャラクター』
【5】 9171人 298館
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』
【6】 9101人 282館 
⭐夏への扉-キミのいる未来へ-』
【7】 7746人 294館
⭐ピーターラビット2 バーナバスの誘惑』
【8】 6030人 303館 
るろうに剣心 最終章 The Final』
【9】 5863人 289館
⭐クワイエット・プレイス 破られた沈黙』
【10】 5392人 99館 
⭐『BanG Dream! Episode of Roselia II:Song I am.』
【11】 4103人 288館  
名探偵コナン 緋色の弾丸』
【12】 4072人 291館
⭐『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』
【13】 3515人 267館 
⭐それいけ!アンパンマン ふわふわフワリーと雲の国』
【14】 3201人 172館  
⭐『Arc アーク』
【15】 2600人 296館
【16】 2103人 283館
⭐『いのちの停車場』
【17】 1970人 175館
『クルエラ (吹替版)』
【18】 1810人 145館
【19】 1614人 217館
⭐『漁港の肉子ちゃん』
【20】 1556人 58館  
※出典:興行収入を見守りたい(https://mimorin2014.blog.fc2.com/
)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
るろうに剣心』や『エヴァンゲリオン』や『名探偵コナン』は、公開から結構経っているのに、この位置。
やはりメジャータイトルは強いです。
この表の見方は色々ありますが、一つとして、「観客動員数を上映館数で割ると、なんとなく盛況ぶりが伺える」があると思います。
それでいうと、決して上映館数は多くありませんが、『BanG Dream! Episode of Roselia II:Song I am.』は、コアファンをキッチリと取りにいっている印象です。
一方、少し苦戦しているのが、前作で11.2億を記録している『ピーターラビット2』。
「ここからどう持ち直していくのか?」「広告の二の矢、三の矢を用意しているのか?」に注目しています。
さて。
先に総括すると、最近の(とくにコロナ禍における)映画の数字を見るかぎり、「ファンコミュニティーを熟成させていない作品は結構厳しい」というのが僕の結論です。
一体どうしてそんなことが起きているのでしょうか?
ちょっと考えてみましょう。
━━━━━━━━━━━━━━
▼ 現代映画とは「儀式」である。
━━━━━━━━━━━━━━
僕たちクリエイターは現実を受け止めなければいけません。
そのうちの一つに、「映像作品を観るだけなら、家で観れる」という現実があります。
ピーターラビット2』も、きっと1年後にはテレビかNetflixで観れちゃうんです。
となってくると、映画館に足を運んでもらうには、「映像作品が観れる」以外の価値と、「今、観なきゃいけはい」を提供しなければなりません。
ここで効いてくるのが「コミュニティー」です。
コミュニティーをキチンと熟成させておくと、『映画の感想』がそのコミュニティーの「コミュニケーションツール」になるので、要するに、作品が“生活必需品”にグッと近づきます。
作品の感想を持っていないと、コミュニケーション障害を起こしちゃうんですね。
そして、もう一つ。
日本には昔から「ハレ(非日常)」と「ケ(日常)」という世界観があります。
「ハレ」というのは【儀礼】や【祭】や【年中行事】を指します。
「ハレ」があるから、その日を楽しみに「ケ」を頑張れる。
「来週は、いよいよ『だんじり祭り』だから、それまでは仕事を頑張ろう!」といった感じで、僕らは昔から「ハレ」と「ケ」で肉体的にも精神的にもバランスをとっていました。
ここでのポイントは、「ハレ(儀礼や祭)」は共同作業なので、「コミュニティーが無いと、ハレたりえない」という点です。
「『ピーターラビット2』、いよいよ来週公開だねぇ~」という会話が起こらないかぎり、『ピーターラビット2』は、どこまでいっても「素晴らしい映像作品」どまり。
「ハレ」になりません。
「ハレ」というのは「ケ」が枯れてきた時(ケガレ)の回復薬のような役割を持っているので、すっごく難しいところでありますが、「来週『ピーターラビット2』が公開されるから、それまで仕事を頑張ろう」というところまで、ピーターラビットコミュニティーを熟成させないと、なかなか足を運んでもらえない。
人は「ハレ」の為に「ケ」を生きているので、「ケ」には足を運ばないんですね。
「ケ(日常)」になってしまった(家で観れるようになってしまった)映画を、再び「ハレ」にするには、オフサービス(お客さんがサービスを利用してない時間)のデザインが、メチャクチャ重要です。
今回の『エヴァンゲリオン』なんかは作品の素晴らしさもさることながら、「庵野秀明監督の一つの時代の弔い(とむらい)」的な意味合いが多分に含まれていた。
「観に行く」というよりも、「観とどけにいく」といった雰囲気がありました。
鬼滅の刃』もやたら燃えてる人の葬式だったし、『スターウォーズ』の新作も、毎回、「映画」というか「儀式」に近い。
「素晴らしい映像作品ができました」
「広告費をジャンジャンかけて宣伝しました」
は、もう厳しくなってきたのだと思います。
いかにハレ(儀式)化するか?
その為の、助走をいかに作るか?
きっとコレ(オフサービスのデザイン)は映画に限った話ではないハズです。
僕らは気を抜くとすぐに「クオリティーの追求」に溺れてしまうので、自戒をこめて、ここに記しておきます。
現場からは以上でーす。
 
▼オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』入会はこちら ↓↓↓