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西野亮廣エンタメ研究所の過去記事を中心にアップしてます

2021年07月26日のエンタメ研究所の過去記事

7月26日(月) ※7月28日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
今週の『毎週キングコング』でYouTuberをやっている自分を見て、「なんか、ずっとモジモジしてるなぁ」と思ったキングコング西野です。
(※モジモジYouTubeはコチラ→https://youtu.be/cBNjudD3DOg
さて。
今日は『エンターテイメントと優しい差別』と言うテーマでお話ししたいと思います。
まだチョット分からないですが、なんとなく今日は、かなり踏み込んだ内容になりそうです。
僕はエンタメ屋なので、エンターテイメントの話を軸に話しますが、他のサービスにも置き換えられる話ですので、そこんとこ宜しく。
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▼ お客さんに優しくありたいのなら、もっともっと「お金」と向き合え!
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クリエイターの偏差値を割り出す時に、「予算」という項目は無視できません。
製作費には限りがあるわけですから、たとえば、「正しい値踏みができないクリエイター」には傑作は作れません。
東京オリンピックの開会式のドローンはIntel製で、あれはパッケージ売りされているものなので(誰でも買えるよ)、台数で割り出せば今回のドローンショーの予算が出ます。
1800台ほどだったので、ザッと1億2000〜3000万円といったところでしょう。
つまり、(クラファンで頑張れば)個人ができるレベルです。
オリジナルでマシーンを開発するとなると膨大な予算がかかりますが「有り物」を使うと予算がグッと下がります。
今回の五輪の開会式の費用は165億円と言われていますが(詳しくは知らない)、あの感じだと、実際に使われたのは10億円チョイだと思います。
あんまり言うと偉い人に怒られそうなので、あとは各々で調べていただくとして……要するに、「あのレベルのショーがいくらでできるか?」を見積もれないクリエイターに、規模の大きな作品なんて作れません。
ちなみに、「製作費165億円」というと、(おそらく)シルク・ド・ソレイユの「K A」ぐらいでしょうか。
見ていただいたら1秒で分かると思うのですが、165億円を“正しく”使ったら、とんでもないものができちゃいます。
このへんの“金銭感覚”がないクリエイターは無駄に製作費をかけてしまい、そのシワ寄せは最終的に「チケット代」などに反映されてしまいます。
結果、「お客さんに痛みを背負わせる」…という最悪の流れです。
つまり「何がいくらかかるか?」を知っておくこと(学んでおくこと)が、お客さんに対する『優しさ』です。
次に「回収」の話もしておきます。
このサロンには経営者さんもたくさんいらっしゃるので、釈迦に説法ではございますが、「安い」と「高い」を決めるのは、「回収結果」です。
つまり、
3000円を投じて1円も回収できないのであれば【激高】で、
100億円を投じて、105億円回収できるのであれば【激安】です。
五輪の話ばかりして申し訳ありませんが(例えとして便利!)、全国の小学生の投票によって決まった「あのクソ恥ずかしいマスコットキャラクター」を買う人なんて全国で4人ぐらいしかいないわけで、クリエイター(経営者)としては、「全国の小学生の投票で決めよう!」なんて絶対にやってはいけません。
「500万円を払って宮崎駿さんにデザインしてもらって、グッズの売り上げで20億円を作る」という判断をするのが正しいクリエイター(経営者)の姿です。
日本の最大の弱点は、「クリエイティブ」と「お金」を分けている点です。
これは、「エンジンとガゾリン」や「技術と健康」ぐらい切っては切れないものです。
ところが、日本のクリエイティブの現場では「お金」の問題と真正面から向き合う人間がマイノリティー(少数派)になってしまいます。
これはクリエイターだけの問題ではありません。
「お金の問題と真正面から向き合うクリエイターをマイノリティーにしてしまう日本国民全員の問題」です。
皆の意識が変わらない限り(せめて今よりも、もう少しだけでも変わらない限り)、日本のエンターテイメントが今より前に進むことはありません。
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▼ 優しい差別
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先日、「オリンピックの開会式の時に描いた絵に何故、あれだけの値段がついたのか?」という記事を投稿させていただきました。
それに対して、「お金を持っている人しかエンタメを享受できない気がする。一般人は置いてけぼり…」というコメントがありました。
「大きな金額」が絡んだ時に、必ず、このような声が上がります。
「ハイハイ、…金持ちだけの道楽ですよね。私には関係ないわ」といった。
その結論の至ってしまう気持ちは分かるのですが、そこは大いなる誤解です。
たとえば、世界で最も安い「5つ星ホテル」はどこにあるかご存知ですか?
答えは、ラスベガスです。
なんか、ちょっとイメージと違いますよね?
「ラスベガスのホテル」って、メチャクチャ高そうじゃないですか?
それが全然違っていて、(超V I Pルームはさておき)ラスベガスの5つ星ホテルの超々広い部屋は、ビジネスホテルぐらいの値段で泊まれます。
僕は今回の旅で、ラスベガスに行く前に、サンタモニカに1週間ほど滞在していたのですが、
サンタモニカのホテルから、ラスベガスのホテルに移って、部屋の広さは3倍ぐらいになり、部屋の値段は3分の1ぐらいになりました。
ラスベガスのホテルって、メチャクチャ安いんです。
理由は、ホテルのカジノでメチャクチャお金を落としてくれる【超V I P】がいるからです。
下手すりゃ、一晩でウン千万円、ウン億円を落とす人がいます。
そういった【超V I P】がいなかったら、ラスベガスのホテルなんて僕らのような一般人は絶対に泊まれないんです。
つまり、“V I Pがいなかったら、一般人は置いてけぼりになっちゃう”んです。
ミュージカルがそうじゃないですか?
帝国劇場でやっているミュージカル『レ・ミゼラブル』のチケット代は、平気で1万円とかかかっちゃうんです。
1万5000円近い席もあります。
家族で観に行けます?
少なくとも、兵庫県川西市の「西野家」(サラリーマン家庭&4人兄弟)は、一生、観に行くことができません。
もし、『レ・ミゼラブル』に20万円の超V I P席があったら、1500円の席が用意できたかもしれません。
「優しさを履き違えちゃダメだよ」という話です。
全てのサービスにおいて、最も残酷なのは「一律料金」です。
一律料金によって置いてけぼりになっている一般人ってメチャクチャいるんです。
(※飲食店等は仕方がねーけども)
このサロンでも再三に渡って訴えていますが、僕らは今よりも、もっと「V I P」と向き合わなくちゃいけない。
じゃなきゃ、弱い人に優しくできないんです。
今回のラスベガスは、それを調べる旅でもありました。
同じサービスを「一般客」と「V I P客」の両方で利用してみたんです。
滞在期間中に、同じホテルの中で、部屋を移動したんです。
「何が、どう違うのか?」を知りたかったんです。
そこにあったのは、「ほんの僅かな差別と、大きな優越感」でした。
飛行機にしてもそう。
エコノミークラスとビジネスクラスで、値段は大きく違いますが、出される料理の食材費に、そこまでの違いはありません。
座席の広さの違いは、せいぜい、数十センチです。
ただ、(僅かではありますが)キチンと差別をしています。
ラスベガスのホテルではV I P用のエレベーターがありました。
「そんなに待たなくていい」程度のものです。
V I Pは「ラウンジ」を利用できるのですが、「ラウンジ内は食べ放題&飲み放題」と言われても、人間の胃袋には限界があります。
つまり、
あれは、
食べ物を売っているわけでもなく、
飲み物を売っているわけでもなく、
「ラウンジを利用できる」という優越感を売っている。
「原価にそこまでの違いはない」という話です。
ただ、配慮が徹底している。
キチンと優越感に浸れる設計になっている。
ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』は、“ファミリーミュージカル”であることに意味があると思っています。
家族で参加できる設計にしなくちゃいけない。
その為には、「V I P」は絶対に押さえておく必要があります。
V I P用にラウンジを用意しておく必要があるし、
V I P用にスタッフを一人付けておく必要があるし、
V I P客をチケットの開演前の受付の列に並ばせてはいけません。
そこを徹底することが、「誰も置いてけぼりにしないエンターテイメント」です。
日本人は、こういった差別に特にアレルギー反応を見せます。
が、弱い人に優しくある為にはどうすればいいのか?
サラリーマン家庭の4人兄弟であった僕には、観れなかったエンターテイメントがたくさんありました。
そういう子に届けたいです。
ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』で、そのあたりの交通整理を徹底するので、何かの参考にしてみてください。
現場からは以上で〜す。
 
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