西野亮廣のエンタメsalon

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2021年11月17日のエンタメ研究所の過去記事

おはようございます。
一人でブツブツ言いながら歩いていたところ(※無自覚!)、すれ違った子供から「大丈夫ですか?」と優しく声をかけられたキングコング西野です。
#人としては終わった
 
さて。
今日は「世界戦に出てみて、気づいたことの『まとめ』」というテーマでお話ししたいと思います。
 
 

世界戦のお作法
 
本題に入る前に、まずは御報告と御礼を。
 
11月7日~13日にカタール(ドーハ)で開催された『第9回アジャル映画祭(Azyal Film Festival)』にて、『映画 えんとつ町のプペル』が【最優秀長編映画賞】を受賞しました。

カタールの場所すら把握できていない西野が一人でこのような場所に辿り着けるハズもなく、月並みな挨拶ではございますが、この結果は全て、応援してくださった皆様のおかげです。
 
誰からも求められず、0.03ミリのボールペン一本で始めた物語が、笑われ、叩かれたりしながら、こういった一つの「通過点」を踏んだことが、今どこかで拳を握りしめている挑戦者の希望や支えになれば、これほど嬉しいことはありません。
 
世界戦は、今後もどんどん進めていて、とりあえずミュージカルが終われば、ソッコーでアメリカに飛びます。
ちなみに、『映画 えんとつ町のプペル』のアメリカの配給会社の代表にも、ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』を観に来てもらうように伝えました。
#それがどう繋がっていくのかは知りませんが
 
さて。
 
こうして実際に世界戦に参加してみて、参加する前と今とで考えが変わったところがいくつかあります。
 
まずは、最近よく言っている「『共感』と『創造』」について。
国内戦でポイントを稼ぐには『共感』に寄せた方が有利ですが、「共感は海を越えない」というリスクがあります。
 
共感の道に進んだ時点で、どれだけ勝ち抜こうが、その影響が及ぶ範囲は海岸線の内側で、上限があります。
 
他方、『創造』は上手くやれば海を越えるので、上限はありませんが、しかしながら、日本だと『創造』にはポイントが入りにくい。
 
木下優樹菜の再スタートの仕方」について、テレビで延々と議論するのが日本です。
良くも悪くもここはワイドショーの国なんです。
 
表現活動に生きるのならば、まずは、この「一歩目」を決めなきゃいけない。
結果的に両方を得ることはあっても、最初から両方を取りに行くとロクなことにならなさそうです。
 
次に、世界戦に出てみて感じたことは、「強いヤツは確かにいるけど、勝てない相手じゃない」ということでした。
ただ(※ここからが大事!)、「勝てない相手は別にいないけど、勝てないビジネスモデルだらけ」が実際のところで、試合が始まる前に勝負がついていることがほとんど
「創造」と「ビジネスモデル」を分けて考えてはダメで、基本的には、「どう転んでも自分達が勝つビジネスモデルを作った上で、そこに自分達の創造を乗せる」というのが正しい打ち手なのだと思います。
#ここはキチンと向きあえばイケると思います
 
あと、ケースバイケースなので、少しボンヤリとしてしまいますが「世界戦のNGワード」としては、『サプライズ』と『説明』があるかなぁと思っています。
 
『サプライズ』や『説明』は、基本的には一見さんのもので、「衝撃の展開っ!!」は、2回目の人には衝撃の展開でも何でもないので、リピーター前提でエンタメを設計するなら、邪魔者でしかありません。
 
ブロードウェイのショーを観た時に、「笑いのレベルは日本の方が上だな」という感想を持つ日本人がいますが、リピーターを作って、ビジネスをまわしていくことを考えると、アンジャッシュさんのコント的な笑いは、作品内に盛り込まない方がいいでしょう。
#アンジャッシュさんのコントが悪いと言っているわけではなくて
 
『説明』も同じです。
2回目以降のお客さんからすると『説明タイム』は退屈で仕方がないので、説明が必要なコンテンツはやっぱり厳しい。
 
シルク・ドゥ・ソレイユなんて、説明はパンフレットで済ませていて、舞台上では何の説明もないまま「なんか、すげー!」で最後まで駆け抜けます。
 
すべてをリセットする地震と台風(ときどき空襲)の国に生きる僕らは、DNAレベルで「ゼロ→1」が植え付けられていて(ゼロイチの美学が強すぎて)、「あるものを運用していく」という意識が低いのかもしれません。
 
ただ、世界のエンタメのシーンを落ち着いて見てみると、「顕在顧客の通り道(主に観光地)に、普遍的なコンテンツ(サプライズと説明をカットして、2回目以降も面白い作品)を置いて、新規客とリピーターの両方を取る」をやっていて、まぁ、このあたりに攻め込まないと、どうにもならないんだろうなぁと思っています。
 
「そっちに進んだ時点で、どれだけ努力をしても無駄」みたいなことは、きっと、皆さんの業界でもあると思うので、こうして時々整理しておくといいと思います。
 
現場からは以上でーす。
 
【追伸】
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