西野亮廣のエンタメsalon

西野亮廣エンタメ研究所の過去記事を中心にアップしてます

2021年12月18日のエンタメ研究所の過去記事

こんばんは。
ウォシュレットが恋しくなっているキングコング西野こと「トイレの神様」です。
#ついに自分でイジリ始めたぞ

毎度、更新が遅れてしまってごめんなさい。
今日も、アメリカからお届けしております。

『映画 えんとつ町のプペル』の業界関係者用の試写会(スクリーニング)を繰り返しているのですが、評判がすこぶる良いです。

個人的に楽しいのは「試写会後の交流」で、そこでは様々な角度からのご意見をいただきます。

今まで一度も行ったことがないアフリカとかの反応はよく知りませんが、僕が知る限り、アメリカやヨーロッパのお客さんは「感想の解像度」が高く、「本当に最高だった!」という全体の感想の後に、部分部分の感想や疑問を投げてくださいます。

そこで学んだことを、備忘録として書き留めておきたいと思います。
「日本と海外のギャップ」に関するメモです。

 

「挑戦者が叩かれる」は通用しない
 
アメリカの皆さんと議論を繰り返していると、日本の異常性と、それが当たり前になっている日本の危なっかしさを覚えます。

もっとも顕著なのが、「この物語は、どんな体験をもとに思いついたのですか?」という質問に対して、

「これまで様々な挑戦を繰り返してきたのですが、その都度、笑われ、叩かれ、ひきずり降ろされる…という目に遭ってきました。『えんとつ町』というのは、夢を持てば笑われて、行動すれば叩かれる現代社会の縮図です」

と答えたところで、共感されません。

「なぜ、挑戦する人を笑うことがあるの?」といった感じ。
このあたりのニュアンスが微妙なところなのですが、日本人の言う「なぜ、挑戦する人を笑うことがあるの?」は“正義”を多分に含んだ言葉になりますが、アメリカの方の言う「なぜ、挑戦する人を笑うことがあるの?」はシンプルに“疑問”です。

「おむすびを食べたら、殴られた」みたいな感じです。

「おむすびを食べたら殴られたので、その時の気持ちを物語にしました」と言ったところで、共感されないですよね(笑)? そんな感じです。
シンプルに「W H Y?」なんです。

なので、ストーリー制作の経緯をお伝えする時は、「日本は島国であり、村社会なので、皆さんが住んでいる国とは違って、挑戦者が笑われ、叩かれてしまいます…」を頭につけるようにしています。
これを挟むだけで、グッと伝わりやすくなる。

コレ(挑戦者は叩かれるor賞賛される)は、あくまで一例ですが、メッセージ(想い)を伝える時は、その国の方とたくさん話して、「コア」の部分は変える必要はありませんが、「国ごとに微妙にチューニング」しておくことが極めて重要だと感じました。

日本ナイズされたものをそのまま届けても届かない。
その為には、やはり「交流」が大切だと、あらためて思った次第です。

 

「メッセージ」の重要度が高い
 
実は、今回の旅で、もっとも痛感していることは「作品におけるメッセージの重要度が日本よりもずっとずっと高い」ということです。

日本はどちらかと言うと「面白い至上主義」で、「面白かったら、いいじゃん」という世界線です。

これがまた微妙なところで、「漫画」はそれでも世界で通用しているのですが、「映画」になってくると、取り扱われ方がかなり変わってきます。

これはエッフェル塔の個展の時に、現地スタッフと話していても感じたことなのですが、彼らは「アート」や「映画」をエンターテイメントとしながらも、一種の『教材』のようにも捉えていて、その中に「学び(メッセージ)」が無いと、「なんで、無いの?」となる。

事実、

各国の映画祭の決勝戦でやりあっている作品は(毎回、ほぼ同じメンツなのですが)、どれもコレもメッセージが強烈で、そこが高く評価されます。

アヌシー国際アニメーション映画祭で『えんとつ町のプペル』をタコ殴りにして、長編グランプリを獲得した映画『Flee』(※今年のアカデミー賞最有力候補)は、アフガニスタンからデンマークへ難民としてやってきた男性の実話をもとに作られた作品なのですが、「ストーリー」よりも「映像美」よりも、「メッセージ」が高い評価を受けています。

そのノリが過ぎてしまうと、作品が『時々ネタ』みたいになってしまうので、僕の作品に関しては、そちらに矢印を向けすぎないようにしたいですが(※僕は面白いのが好き!)、ただ、「メッセージ」の有無が、日本よりも遥かに大きな割合を占めているということは自覚しておかなくてはいけません。

「メッセージの重要度が日本と海外で違う」というのは、今後のモノづくりの根幹に関わってくる事柄なので、慎重に向き合いたいと思います。

ちなみに、『えんとつ町のプペル』の「上を見つづけろ」というメッセージは、今回の試写会ツアーではお客さん(関係者さん)に激刺さりしておりました。

インターネットによって、本人が望んでいなくても、あらゆるサービスにおいて「気がついたら世界線に巻き込まれていた」ということがある時代なので、こういった形で、「日本人の感覚と、海外の人達の感覚の違い」を今後も共有していきたいと思います。

更新が遅れてしまってすみません。
現場からは以上で〜す。

【追伸】
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