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2021年06月15日のエンタメ研究所の過去記事

6月15日(火) ※6月17日以降は『いいね』を押さないでください。
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おはようございます。
今度は北九州の方で「1メートルのトカゲ」が見つかったらしく、忙しくなってきたキングコング西野です。
さて。
今日は「優秀な人材が集まっているのに、結果が出ないチームの落とし穴」というテーマでお話しさせていただきます。
先日、幻冬舎の箕輪さんがYouTubeで「政治家って、一人一人会うと優秀なのに、メディアを通して伝わってくる仕事っぷりが地獄の沙汰なのは何故なんだろう? “しがらみ”もあったりするのかな?」というお話をされていました。
その疑問がとっても面白かったので(おそらく皆さんが感えるキッカケになると思ったので)、僕が今やっている「舞台演出」の立場から、「たぶん、このあたりが原因だと思います」というお話をさせていただきます。
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▼ 優秀な人材が集まっているのに、チームの力が大きくならない原因
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「政治家さんは一人一人は優秀である」という前提“でお話しさせていただきますが、それでも仕事は上手くいかない理由は、まぁ、おそらく多くの皆さんが想像されている「足の引っ張り合い」もあるかもしれません。
ただ、
「優秀な人材が集まっているのに、チームの力が大きくならない原因」は、そんなことよりも、「優秀な人材が集まって、皆が頑張ったから」というのが大きかったりします。
たとえばミュージカル制作。
ミュージカル『えんとつ町のプペル』は「キャスト」は勿論、「スタッフ」も各界のトップランナーがズラリと並んできています。
この問題を考える時にはまず、「彼らが何故、トップランナーなのか?」を明確に定義した方がいいと思っています。
結論を言っちゃうと、「トップランナーは、『なんとかする力』があるからトップランナーである」ということです。
彼らのところに回ってくるのは、一押しすれば成立するような仕事ばかりじゃありません。
時には「20点」ぐらいの素材を、才能と経験といった力技で「90点」ぐらいにまで押し上げなきゃいけないことがあります。
他のプレイヤーであれば、とうに悲鳴をあげていることでも、彼らはなんとかするんですね。なんとかしてきた過去があるんです。
だから、トッププレイヤーなんですね。
んでもって、具体例を交えてお話しすると…
たとえばミュージカル『えんとつ町のプペル』のオープニングの構成はこんな感じ。
① 赤い心臓がゴミ山に落ちてくる。
② ゴミ山のゴミが赤い心臓にくっ付いて、ゴミ人間「プペル」が誕生。
③ プペルが街に出ると、待はハロウィン祭りで大騒ぎ(オープニングナンバー)。
ちなみに、皆さんなら、このオープニングをどう演出しますか?
現時点で決まっている(※準備の都合で先に決めなくちゃいけなかった)のは③です。
オープニングナンバー(一曲目)となる③では、役者さんの歌と踊りに合わせて、【ドローンを仕込んだ提灯】が空中を飛び回ります。
ここでは「①【煙の中から降ってくる心臓】と②【降ってきた心臓に集まるゴミ】をどう表現するか?」が演出家の仕事になってくるわけですが……スタッフさんが優秀なので、どう発注しても、それなりに形にしてくれます。
特殊演出さんにお願いして、ドローンで心臓を飛ばすこともできますし、
美術&小道具さんにお願いして、「てぐす(透明の糸)」を駆使して、心臓がゴミを宙に浮かすこともできます。
さて、どうしましょう?
さっそく結論を言っちゃうと、この場合だと「基準」を最初に決めちゃいます。
僕は、準備の関係で先に決まっていた③(空飛ぶ提灯)を基準にしてみました。
曲に合わせて、提灯が空中で踊っているのは、なんだか不思議で面白そうです。
これ(テクノロジー)を際立たせる為には、その前段階にテクノロジーは挟まない方が良いでしょう。
甘いものが続くと、甘さに慣れてしまうからです。
というわけで、①と②はテクノロジーから最も離れた「肉体表現」で魅せることにしました。
「空から降ってきた心臓」というナレーションに合わせて、赤い光を放つ玉(心臓)を持った演者が、ステージの奥(煙の中)からアクロバティクな踊りで登場すれば、実際には“降ってきてはいない”ですが、お客さんが「降ってきたもの」と認識するでしょう。
②も同じように「肉体表現」で乗り切ります。
さて。
演出家はこの時、特殊演出さんの「ドローンで心臓を飛ばしましょう」という提案や、
美術&小道具さんの、「てぐす(透明の糸)で心臓を落としましょう」という提案を、
断らなくてはいけません。
ぶっちゃけ、力の無い人(結果が出せない人)の提案なら、簡単に断れます。
何故なら、その提案どおりに動いても良い結果が出ないからです。
しかし、相手は百戦錬磨のトップランナー
そのまま相手の言うことを聞いていれば、「ドローンで飛ぶ心臓」も「てぐすでフワフワと落ちてくる心臓」も、きっと納得のいく仕上がりにしてくれるでしょう。
ですが、
その後に控えている「空とぶ提灯」にサプライズ性を出す為には、その前段階で、自由に空中を動き回るモノはあってはいけません。
なので断らなくちゃいけないんです。
トップランナーの提案に対して、「それはやりたくありません」と言わなきゃいけないんです。
優秀な人材が集まると、結局、これが一番難しい。
優秀な人材が薄らと抱いている「お前に何が分かんねん」という気持ちに対して、「専門知識はありませんが、僕には全体が見えていますので、僕の言うことを聞いてください。ここの王は僕です」と言いきらなきゃいけない。
言うだけじゃなくて、納得してもらわなくちゃいけない。
専門的な能力はリーダーの方が劣っているわけですから、あとはもう「信頼関係」しかないんですね。
「あいつが言うんだから、仕方ないな」という。これが超大事!
優秀な人材が集まれば集まるほど、リーダーには「断る才能(ゆるされ力)」がメチャクチャ必要になってきます。
優秀な人材だけを集めて、信頼関係を築かないままチームを走らせてしまうと、優秀な人材がそれぞれ素晴らしい仕事をしてしまうので、歯車が噛み合わない箇所が出てきてしまう。
じゃあ、リーダーは、どこで「信頼」を築くのか?
僕は「呑みに行って仲良くなる」という手をすぐに使いますが(結構、有効です!)、それとは別に、はじめてお会いする際に(前日の夜でもイイから)、「相手が自分にぶつけてきそうな質問を事前に全てリストにしておいて、その質問に対する答えを全て用意しておく」というのがオススメです。
その「答え」は別に間違っていてもよくて(後で修正すればいい)、それより何より、
「ちゃんと考えている形跡」を相手にお見せすることの方が大事で、それが信用に繋がる。
これは部活の部長であろうが、
町内会の会長であろうが、
映画の製作総指揮であろうが、
ミュージカルの演出家であろうが、
政治のリーダーであろうが、
基本は同じなので、参考にしてみて下さい。
今日は「優秀な人材が集まっているのに、大きな結果が出ないチームの落とし穴」というテーマでお話しさせていただきました。
現場からは以上で〜す。
 
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