西野亮廣のエンタメsalon

西野亮廣エンタメ研究所の過去記事を中心にアップしてます

2021年10月24日のエンタメ研究所の過去記事

おはようございます。

今日は日曜日なので、お仕事の話をお休みして……と言いたいところですが、『ブランディング』の話が絡んでくるので、たぶん、仕事の話になっちゃうと思います。

その話に重ねて、僕がとってもとっても大切にしている想いもお伝えします。

 

誠実たれ

今日の記事は今朝のVoicyの続きになりますので、まずは、今朝の放送をお聴きください。

※コチラ→『僕らは何故「ブランド」を作れないのか?』https://voicy.jp/channel/941/226231

…『ブランド』という「約束」と、『フリーライド』という「無自覚」についての話です。

Voicyでも、お話ししましたが、「チケットが売れる」というのは当たり前ではありません。
僕自身、過去にチケットが売れなくて惨めな思いをたくさんしてきましたし、そのことによって、たくさん迷惑をおかけしました。

そのトンネルからなかなか抜け出せず、途中、開き直って「広告」に依存した時代もありました。
『人気タレント』としてテレビにたくさん出る一方で、単独ライブのチケットはどんどん売れなくなり、「企画が通らないと(企画書にハンコを押してもらわないと)、企画を進められない」という身体になり、その結果、いろんなところにお伺いを立てて生きるようになりました。

それも一つの生き方で、決して否定されるものではないのですが、しかし、そこには表現者の矜持は無く、そんな人間が放つメッセージで誰の胸を貫くことができるのか?

さらには、そんな人間が、ファンや、自分を信じてついてきてくれたスタッフを本当に守れるか?

…といった疑問を抱き、25歳の頃にテレビの世界から軸足を抜くことに決めました。
こんな人間を、今でも呼んでくださる番組および番組スタッフさんには本当に感謝しています。
#東野幸治を除く

「企画書を通さないといけない」という環境は実に複雑です。
「企画書にハンコを押す」という作業が、すべて営利目的かというと、そんなことはなく、「クオリティーチェック」も兼ねているからです。

クソ作品(うんこサービス)をお客さんの前に一度でも出してしまうと、信用を失い、「客離れ」に繋がり、スタッフを守ることができません。

そうはさせない為の「企画書」だったりもするので、「企画書を通さなきゃいけないなんて、表現者としては終わりだろ!」とは思いません。

ただ一方で、「お客さんや、表現者を守る為のシステム」が、いつの間にか「お客さんや、表現者を苦しめるシステム」になることは往々にしてあって、その時、リーダーが老いていると(年齢ではなく!)、チームはシステムの改善に向かいません。

当時、僕が企画書を通さなきゃいけかった頃に、強く強く感じていた疑問は、「企画書にハンコを押す人間が、センスはおろか、僕よりも(現代の)知識や経験を持ち合わせていない」ということでした。

2000年~2015年にかけて、インターネットやSNSを中心におきた時代の変化というのは、物理の法則をガン無視したもので、こんなことは地球が始まってから初めてのことでした。

革命のファンファーレが鳴り、戦略や道徳観を一新しなければ生き残れない世界戦の一年生として生まれ直したのが僕らですが、当時、企画書にハンコを押す多くの人間の耳には、ファンファーレの音が聴こえていませんでした。

このままだと、お客さんやスタッフを守ることができないので、自分で予算を作れる身体になり、自分の企画に自分でハンコを押せる環境を作ることにしました。
今から15年ほど前の話です。

そこから、「お客さんを呼べるようにならなきゃダメだ」と初心に立ち返り、チケットを売り出すわけですが……これが、全然売れないんです。
#つらたにえん

原因は全て僕。
これまで、散々、約束を破り続けてきたことへの罰です。

「西野なら面白いものを見せてくれるハズ」と、僕にテレビのチャンネルを合わせてくれたり、僕のライブに足を運んでくれていたお客さんを、僕は裏切り続けていて、信用を失っていたんですね。

厄介なのは、当時の僕に「お客さんを裏切っている自覚が無かった」ということ。

ミクロ単位で見れば、テレビディレクターさんや、テレビプロデューサーさんや、スポンサーさんの期待には応えていて、責務を全うしていたのです。

御存知のとおり、西野亮廣は、かなりの頑張り屋さんなので、手抜き仕事は絶対にやらないんです。
それでも、身体を向けている方向が違ったが為に、結果的に、お客さんを裏切ってしまった。

視聴率を毎週20%とっているのに(毎週2000万人以上に届けているのに)、たった200席の単独ライブの客席が埋まらないんです。

「認知」と「人気」の違いを骨の髄まで味わいました。

嘆いたところで始まらないので、(当時はまだ)テレビスターをやりながら、まぁまぁ後ろ指を差されながら【チケットの手売り】を始め、お客さんを一人一人と向き合い、今度こそは裏切らないように、キチンとお客さんに身体を向けたクオリティーチェックを徹底しました。

今日も、皆さんの知らないところで(会議室や稽古場で)、安易に「玄人ウケ(身内ウケ)」に走るクリエイターをガン詰めしている西野がいます(笑)。

そうして、一つずつ一つずつ、丁寧に、そして誠実に、お客さんと向き合って今に至ります。

「学校イベントをやりまーす」で日本武道館の客席がサクッと埋まるのは、まさか出演者のマンパワー(集客力)だけではなく、これまで約束を守り続けてきた結果であり、「まぁ、西野が仕掛けるイベントなら面白いんじゃね?」で、お時間とお金を頂戴しています。

Voicyでもお話ししましたが、ファミリーミュージカルもそうで、たくさんのクリエイターの時間と汗と執念がこもった『えんとつ町のプペル』という“信用の塊”が、集客に繋がっています。

映画の公開に合わせて、『えんとつ町のプペル』のグッズの話は山ほど来たのですが、僕ら(CHIMNEYTOWN)が手掛けるグッズとしては、やっぱり半端なものは出せなくて、裏切りたくなくて、約束を破りたくなくて、信用を落としたくなくて、「あれもダメ」「これもダメ」で、突っぱねて、オフィシャルグッズとして出すものは、ゼロからデザインしてきました。
#かんかんサンが

今、「西野亮廣が手掛ける」や「CHIMNEYTOWN」が一つのブランドになっていることは間違いなくて、これを次の世代に繋いでいくことが、僕らには求められています。

だけど、これが、なかなか難しい。

昨日(一昨日?)、『BAR CHIMNEYTOWN』というのを見つけて、「これって、何なの?」とスタッフに訪ねると、「CHIMNEYTOWNがやる期間限定のバーです」と。

完全に怪しい匂いがして、(西野がキレる前に)田村Pがカットインをかまして、「CHIMNEYTOWNが『CHIMNEYTOWN』という名前(信用)を使って集客しようとしているけど、ちなみに、このBARは、どういう建て付けになってる?」と質問したところ、「昼間は観光案内所になっているところなのですが、夜が空くので、そこでCHIMNEYTOWNのスタッフが働いてBARをします」と。

『スナックCANDY』や『天才万博』や『サーカス!』や、東京タワーやエッフェル塔満願寺の個展や、CHIMNEYTOWN印で作ったMVを観てきたお客さんからすると、「どんな世界のBARが展開されるんだろう?」という期待を持ってやって来るのは当然で、そのお客さんに対して、「昼間、観光案内所だった場所で、知らないスタッフが働いているBAR」を提供しようとしていたのがウチのスタッフ。

お客さんの期待や、協力してくださる企業さんの信用や、CHIMNEYTOWNの信用や、なにより、スタッフの信用を壊すわけにはいかないので、もちろん秒速で今回の企画は中止にするように伝えたのですが、問題は、そのスタッフ本人には、お客さんを裏切ってしまっている自覚も、『西野亮廣』『CHIMNEYTOWN(えんとつ町)』にフリーライドしている自覚が無いということ。

決してサボったわけではなく、目の前の仕事と真面目に向き合った結果、それがミクロ単位の視点だったので、お客さんを裏切ってしまった。
#しまってない
#未然に防いだ

これは「ブランド」を守っていく上では非常に難しい問題で、『フリーライド』する人間には、3種類いて、

①悪意のある人
②悪意がない人
③悪意がない身内

です。

①と②は「契約」やら何やらで、どうにかこうにかすることができますが、③の対応はなかなか難しい。

昔、セトちゃん(※ミュージカルのプロデューサー)が、普通に、この『西野亮廣エンタメ研究所』のTLに記事を投稿していて、そのことを注意した時に(※「べつに瀬戸口の記事を読みたくてサロンに入っているわけじゃない」という人が退会するよ……と伝えた時に)、「注意されるまで、本当に何が悪いのか分かってなかったです」と返ってきました。

つまらない嘘をつくようなヤツじゃないので、それは間違いなくて本当で、悪気がないどころか、「ちゃんと仕事をしている」と思っていたのでしょう。

「ブランド」のバトンを次の世代に渡していく時の最大の障壁はココで、「そのブランドがブランドになるまでに流れた汗や、交わされた約束」を想像するしかない(体験できなかった)から、想像が及ばず、フリーライドに走ってしまうことがある。

そして、そこに悪意が無いから(サボっているわけでもないから)、フリーライドしている自分に、なかなか気づけない。

立ち上がったブランドが一代で消えていく背景には、この問題もあるんだろうなぁと思う今日この頃です。

只石さんや、カンカンさんや、小谷や、Studio4℃さんや、他にも何百人というクリエイターさん達が、何百回も何千回も何万回もやり直して、時に西野亮廣にブチギレられて、『えんとつ町のプペル』や『CHIMNEYTOWN』というブランドがあって、お客さんはそこに費やされた時間や汗を信じてやってきます。

彼らが守り続けてきた約束は決して破っちゃダメで、「次の世代」は、そこに費やされた時間や汗を想像で補うしかない不利を知り、無自覚を知り、一ミリでも気を抜くとフリーライドに走ってしまう自分を知らねばなりません。

田村P的に言うと「ナメとんのか。ブチ殺すぞ」なのですが、僕はそこまで怖くはないので、「僕ら(CHIMNEYTOWN)は、とことん、お客さんに対して誠実であろう」と言います。

眠る1秒前まで、お客さんのことを考えている人が作るエンターテイメント(サービス)には、そこの覚悟や優しさが透けて見えていて、お客さんはそのことを敏感に察知している……ということを、この20年で知りました。

エンタメに生きて、その勢いのまま死んでやろうと思います。
今日は今からハリウッドで舞台挨拶。
頑張りまーす!

それでは、素敵な日曜日を。

 

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